【R18】お前が好きだから、仕方なく付き合ってやる ～笑顔でお断りしましたが、何か？～

９．遂に神原と対決！（ハラハラドキドキ）

１

　翌週。いよいよサンプルの仕上がり日時となった。社を代表して、私と社長が高丸商店へ向かう。

　金型、ヒール底、ゴム、縫製、材料、全てが昨日揃った。夜遅くまでかかってサンプル仕上げに取り掛かってくれた高丸さんの、渾身の出来栄えやいかに？

「緊張しますね」

　何時もの靴とは違う、浅草の未来を背負った靴だから、出来上がりに心を躍らせる反面、不安も混じって色々な気持ちが重なり、ドキドキしてしまう。

「紗那でも緊張する事があるんだな」

「当たり前ですよ。私を何だと思っているのですか！」

「ん。俺の敏腕秘書。それよりさ、展示会上手く行ったらこのまま結婚しないか？　俺が一生、紗那の面倒見てやるから」

「はいぃ？」

　高丸商店の工場前で、好きな男にプロポーズされちゃったよ！
　しかも上から目線！
　でも嬉しいのは何でだ！

「展示会が上手く行ったら、婚姻届けは破棄する約束では？」

「そんな約束したかな？」

「訴えますよ」

「くうぅー。今日もキレいいっ」

　ブリザードの瞳がお気に入りの社長は、何やら噛み締めている。
　キモ。本当に、私は何でこんな意味不明な男が好きなのだろう。もっと他に良い男が世にいる筈なのに、何故だろう。謎でしかない。

「さ。緊張も解（ほぐ）れた所で行くか」

　ふわっと髪を撫でて貰った。あぁ････今のは社長のジョークだったのね。私の緊張を取る為の。


　でも････ジョークに聞こえないのは何故だろう。


　高丸商店の事務所の方へ回り、来客用のチャイムを押した。すると、すぐさま中から高丸さんが出て来てくれた。「やあ、よく来てくれました。入って下さい」

　高丸さんは少し目が赤くなっている。きっと徹夜でサンプルを仕上げてくれたのだろう。

「とりあえず、黒のサテン生地と、白のスムース（合成皮革）で作りました。他の色は今、制作中です。あと、これは提案なのですが、昨日のお礼に、浅岡専務からいい生地を頂く事になりました。今回のパンプスで、シャンパン色も作りませんか？　実は専務の特注分の生地を分けて貰えることになったのです。サンプルも作ってあります。シンデレラパンプスに相応しい色だと思いますよ」

　シャンパンかぁ。素敵な色。
　あ！　さっきのビジュークリップが早速合うかも！

　早速工場の中へ通してもらい、出来上がったばかりだというサンプルを見せてもらった。



「うわあ････素敵！」



　三つ作業台の上に並んだサンプルを見て、思わず感嘆が漏れた。
　先ず、美しいフォルムに目が奪われる。
　そして更に傾斜、ヒール高さ、手触り、色････。今回サンプルにして貰ったのは、サテン地の黒、白の合皮、シャンパンの三足。中でも、シャンパンの色は格段に綺麗だった。商品の色味的にはゴールドベージュみたいな色で、本当に綺麗。結婚式に映えそうだ。