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8.専務に呼び出され、社長と神戸に出張へ(緊張します)
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入り口の所で降ろしてもらい、階段を上がるとファストフード店のロッテリアがある。それを左手に見ながら進むと、角に行列が見えた。見ると、今流行りのパンケーキのお店だ。
平日で現在午後五時半。歩いている人は少なかったが、この店だけ集中して人が並んでいた。そんなに美味しいのだろうか。
「食べに行くか?」
「いいえ。パンケーキを食べてしまってはお腹が満たされてしまい、から揚げの美味しさが半減してしまいます。なので、結構です」
普通の女子は、きっとパンケーキを食べに行くのだろう。しかし女子力の低いおっさんの私は、パンケーキよりもから揚げの方が食べたい。
「よし。じゃあから揚げにするか。ちょっとブラっと買い物でもするか?」
「いいえ、結構です。後から店へ行くと、飛行機の時間の調整が出来なくなった時に困りますので、先に食事を」
「それもそうだな。流石、紗那だ」
じゃあ先を急ごう、と社長が歩き出した。背が高く、すらっと伸びた脚でシャキシャキ歩くと絵になる。これで変態じゃなかったら、もっとモテているのだろう。
連絡通路にオブジェを通り越し、スヌーピーやウルトラマン等のグッズが売っているショップも越え、すぐ近くのエスカレーターに乗った。降りてすぐ左に行けば、から揚げの美味しいお店だという。
看板には、ニューミュンヘンと書かれていた。中は広そうだ。美味しそうな匂いが店内に充満している。
「二名で予約した福士です」
一体いつの間に予約したのだろう。愛想のよい店員に案内されたのは、テラス席だ。予約席の札が立っていた。目の前にはオリエンタルホテル、その右側にはオレンジ色に染まったポートタワーが見える。もっと夜が更けるとさぞかし美しく映えるのだろう。お洒落な街、神戸ならではの夜景が拝めるはずだ。
「ビール飲むか?」社長が聞いてくれた。
「いえ。戻ったら空港から運転がありますので、止めておきます。社長はどうぞ、お飲みください」
「今日は俺が運転するから紗那はゆっくりしておけばいい。お前だけ飲めといっても多分飲まんだろうから、雰囲気だけでも味わおう」
社長はノンアルコールビールを注文してくれた。とりあえずから揚げは二人前オーダーして、適当にサラダやおつまみを頼んだ。
程なくしてビールとおつまみがやって来た。乾杯して少ししたら、専用のカゴに大きなから揚げが入ったものが到着した。
「わあ・・・・すごい!」
熱々のから揚げは、衣がサクサクで中はジューシーな雰囲気だ。見るからに美味しそう。
「初めて食べた時、凄い衝撃だった。こんな旨いから揚げ食ったのは初めてだったからな。豪快にかぶりつくのがいいんだってさ」
社長が長い手を伸ばし、大きなから揚げを自分の皿に取り、添え付けのからあげ専用塩を上から振りかけた。
容姿端麗なのにそんな事は気にもかけず、豪快にから揚げにかぶりついた。
「んー。うま」
本気で美味しそうに食べているので、私も社長に習って大きなから揚げにかじりついた。
「わっ。美味しいっ!」
カリカリの衣にしっかりと味がついていて、噛めばサクっ、どころかガリっとするほど固いのに、すごく美味しい。地鶏のから揚げだから、すごくジューシー。衣のカリカリも含めて、クセになる味だ。
からあげが名物と謳うレベルに納得だ。関西で何店舗も展開しているらしい。ああ、関東にもあればいいのに。
今日は、この美味しいから揚げに合うビールが飲めないのが残念!
ここはビアホールになっているから、地ビールも楽しめるみたい。
「美味そうに食べるんだな」
「いけませんか?」
「いいや。いい。何時ものクールな紗那も結構だけど、可愛いお前の顔を見ていると嬉しくなる」
社長が優しく微笑んでくれた。
ドキン――こんな時に、止めてよ。心をかき乱さないで。
私はフクシを去るって決めたの。だからお願い、社長。
これ以上、私の心に入って来ないで――
平日で現在午後五時半。歩いている人は少なかったが、この店だけ集中して人が並んでいた。そんなに美味しいのだろうか。
「食べに行くか?」
「いいえ。パンケーキを食べてしまってはお腹が満たされてしまい、から揚げの美味しさが半減してしまいます。なので、結構です」
普通の女子は、きっとパンケーキを食べに行くのだろう。しかし女子力の低いおっさんの私は、パンケーキよりもから揚げの方が食べたい。
「よし。じゃあから揚げにするか。ちょっとブラっと買い物でもするか?」
「いいえ、結構です。後から店へ行くと、飛行機の時間の調整が出来なくなった時に困りますので、先に食事を」
「それもそうだな。流石、紗那だ」
じゃあ先を急ごう、と社長が歩き出した。背が高く、すらっと伸びた脚でシャキシャキ歩くと絵になる。これで変態じゃなかったら、もっとモテているのだろう。
連絡通路にオブジェを通り越し、スヌーピーやウルトラマン等のグッズが売っているショップも越え、すぐ近くのエスカレーターに乗った。降りてすぐ左に行けば、から揚げの美味しいお店だという。
看板には、ニューミュンヘンと書かれていた。中は広そうだ。美味しそうな匂いが店内に充満している。
「二名で予約した福士です」
一体いつの間に予約したのだろう。愛想のよい店員に案内されたのは、テラス席だ。予約席の札が立っていた。目の前にはオリエンタルホテル、その右側にはオレンジ色に染まったポートタワーが見える。もっと夜が更けるとさぞかし美しく映えるのだろう。お洒落な街、神戸ならではの夜景が拝めるはずだ。
「ビール飲むか?」社長が聞いてくれた。
「いえ。戻ったら空港から運転がありますので、止めておきます。社長はどうぞ、お飲みください」
「今日は俺が運転するから紗那はゆっくりしておけばいい。お前だけ飲めといっても多分飲まんだろうから、雰囲気だけでも味わおう」
社長はノンアルコールビールを注文してくれた。とりあえずから揚げは二人前オーダーして、適当にサラダやおつまみを頼んだ。
程なくしてビールとおつまみがやって来た。乾杯して少ししたら、専用のカゴに大きなから揚げが入ったものが到着した。
「わあ・・・・すごい!」
熱々のから揚げは、衣がサクサクで中はジューシーな雰囲気だ。見るからに美味しそう。
「初めて食べた時、凄い衝撃だった。こんな旨いから揚げ食ったのは初めてだったからな。豪快にかぶりつくのがいいんだってさ」
社長が長い手を伸ばし、大きなから揚げを自分の皿に取り、添え付けのからあげ専用塩を上から振りかけた。
容姿端麗なのにそんな事は気にもかけず、豪快にから揚げにかぶりついた。
「んー。うま」
本気で美味しそうに食べているので、私も社長に習って大きなから揚げにかじりついた。
「わっ。美味しいっ!」
カリカリの衣にしっかりと味がついていて、噛めばサクっ、どころかガリっとするほど固いのに、すごく美味しい。地鶏のから揚げだから、すごくジューシー。衣のカリカリも含めて、クセになる味だ。
からあげが名物と謳うレベルに納得だ。関西で何店舗も展開しているらしい。ああ、関東にもあればいいのに。
今日は、この美味しいから揚げに合うビールが飲めないのが残念!
ここはビアホールになっているから、地ビールも楽しめるみたい。
「美味そうに食べるんだな」
「いけませんか?」
「いいや。いい。何時ものクールな紗那も結構だけど、可愛いお前の顔を見ていると嬉しくなる」
社長が優しく微笑んでくれた。
ドキン――こんな時に、止めてよ。心をかき乱さないで。
私はフクシを去るって決めたの。だからお願い、社長。
これ以上、私の心に入って来ないで――
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