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7.自分の気持ちを再確認(今更どうにもできない)

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「不具合については、もう少しきちんと調査しましょう。あと、明日もう一度話し合いに呼ばれております。彼女にも来て貰い、直接弊社が侘びる事になりました。夜に来いと言われておりますので、あと一度だけ、行って参ります」

「彼女がそこへ来るなら、俺が直接侘びよう。すまなかったな、嫌な役を引き受けさせてしまって」

 そう言うと思った。だから、私は予め用意しておいた答えを伝える。

「社長、折角ではございますが、先方様は私を指定されておられます。どうせあと一度のみです。すぐに終わらせて来ます。別に、嫌な役ではありません。会社の為に、当然の事です」

 シミュレーションしておいて良かった。嘘を交えているものの、全く嘘ではない。なのでスムーズに言えた。今のが嘘だと疑われたりはしないだろう。

「・・・・そうか。色々とすまない。じゃあ、頑張る紗那に褒美をやろう」

 社長が私に不用意に近づき、ぐい、と引き寄せられた。何故か社長の胸の中に、すっぽり納まる形となった。

「あの・・・・何を・・・・?」

「ん? これは、充電だ」

「今、褒美を下さるとか、言いませんでした?」


 それで何故、抱擁されているのだろう。


「ああ、褒美をやると言ったぞ。だから、紗那充電」

「は?」

「だからこうやって紗那を充電している。これが褒美だ。俺への褒美」

「い・み・が・わ・か・り・ま・せ・ん・が?」

 冷ややかな笑顔を向けると、やっぱり紗那、最高だー、と嬉しそうに微笑まれ、きつく抱擁された。
 わあーっ。止めてよぉーっ! 私もドキドキしてしまうでしょーっ!
 しかもあんな(神原社長のキス事件)があった直後だし、自分の気持ちを再認識して、もしかしたらこのトンデモ変態社長が好き、とか思ってしまっているかもしれないというのに!


「だ・い・す・き・だ」


 そう言われて、思わず冷ややかに見つめてしまった。
 社長が普段通りのキモい態度を取ってくれたおかげで、冷静さを取り戻す事が出来た。
 でも、大好きと言われたら単純に嬉しいと思うようになってしまった。
 前までは、キモいって思うだけだったのに。
 自分の気持ちに、こんな場面で気づきたくなかった。


 もうすぐ、別の男の嫁にならなきゃいけない時に、皮肉なものだ。
 こんな気持ち、今更どうにもできない。

 だから私は、今日も笑顔で断わり続ける。


「キ・モ・い・で・す」


 いつも通り、何の代わり映えの無い、冷徹な私。こうすれば、社長は喜んでくれる。変態だから。
 これでいい。可愛げのない女に最後まで徹して、ニセの恋人契約をさっさと終わらせて、貴方とはさようなら、よ。

 
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