【R18】お前が好きだから、仕方なく付き合ってやる ~笑顔でお断りしましたが、何か?~

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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6.ピンチはチャンスと言うが、それは絶対に嘘だ(笑顔で乗り切れない!)

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 神原はアッシュグリーンのさらっとした髪をかき上げ、ゴールドのフレームの細い眼鏡を中指で整えた。
 彼は、四十歳くらいの年齢に対しては若い容姿だ。背も百八十センチは超えていて長身。イケオジと呼ばれる部類に入るのだろう。しかし私には、嫌味眼鏡にしか見えない。人の弱点を姑息に嗅ぎ付け、それをネタに自分の有利になるように物事を進めていくのだ。
 言い換えれば経営手腕がいいのかもしれない。しかし、フクシのようにウィンウィンをこの男は望まない。あくまでも、神原が浅草でナンバーワンになればいいのだ。儲け第一主義の利己的冷徹男だ。


「早速ですが、アンクレット不良についてお詫びに参りました。この度は、ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした。社を代表して、お詫び申し上げます」

「侘びは結構ですよ。というのも、フクシさんが製作されたブーツを彼女にプレゼントしましたところ、シューズメーカー社長ともあろうものが、不具合品を寄こすなんて、と、大層立腹してしまい、それが拗れて別れ話に発展しまったのですよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
検品不具合のある御社のブーツのせいで、私は結婚を前提に付き合っていた彼女と別れる事になってしまったのです」


 だから何なんだ、と冷ややかに言い放ちたい。そんなの何の証拠もないし、どうせでっち上げに決まっている。


 難癖付けて、フクシを叩き潰したいだけなんだ、きっと。
 何かからくりがある筈だ。あれだけきっちり検品した在庫にこんな不具合が出て、このタイミングで神原社長の登場なんて、おかしすぎる。

 でも、証拠がない。彼が不正を働いてフクシに難癖付けているという証拠が。
 考えろ。打開策を。
 いいようにスギウラを神原に取り込まれたりしたら、フクシはもう終わりだ。私がしっかりしなければ。


「それは申し訳ございません。しかし、弊社として出来ることは、ご要望があればパーツ修理、それをお望みでない場合は商品代金の返金で対応致しております。何卒、ご理解いただけないでしょうか。わたくし共に出来ることは全力で対応致しますが、限界はございますので、ご承知頂きたく存じます」

「おやおや。天下のフクシが自慢のシューズで不具合を出したうえに、人のプライベートをぶち壊しておいて、商品代金の返金で済ますと、ぬるい事をおっしゃるのですね?」

「ぬるいと申されても、商品代金の返金で済ませられないとなれば、弊社としてはどのように対応すれば良いか、具体的におっしゃって頂かないと判断致しかねます」

「誠意を見せて頂きたいのですが」

「誠意とおっしゃいますと? 金銭を要求すると、そういう事でしょうか?」

 具体的に何が目的なのか、言わせなきゃ。
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