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6.ピンチはチャンスと言うが、それは絶対に嘘だ(笑顔で乗り切れない!)
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しおりを挟む「ええっ!? アンクレット不良!? そんな筈は・・・・」
更に数日後のこと。先日納品した二千足のアンクレットを補修したブーツに、不備が出たとの連絡が入った。
連絡を寄こしてきたのは、浅岡専務だ。フクシで検品済と聞いていたから、自社では検品せずに小売店へ捌(さば)いたらしい。取引先がご立腹だと、社長へクレームの連絡が入ったのだ。
「検品不足でご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございません。そちらについては返品で弁済、もしくは無償修理にて対応致します。恐れ入りますが不備の写真を撮影して、私の所へ送って頂いても宜しいでしょうか?」
もう、フクシさんは最近いい噂を聞かないし、一体どうしちゃったの、しっかり頼むよ、と浅岡専務の大きな声が、社長の受けた電話の受話器から聞こえてきた。
え、でも、何で。
二千足の殆ど全部、頑張ってみんなで手分けして検品したじゃない。
何でアンクレット不良がまた発生しちゃうの?
そんなの、おかしいよ。
「どうやら浅岡商店の取引先様がご立腹らしい。今から謝りに行って来る」
「そんなっ・・・・社長もご存じですよね! 一日がかりでみんなで手分けして、アンクレットは全て補修作業して検品もやって、不備なく二千足出荷した事を――」
「不備が発生していると言われ、顧客がご立腹だと申されている以上、こちらの事情は関係なく対応せねばなるまい」
社長のいう事は最もだ。私ともあろうものが、狼狽してどうする!
しかし、修理は完璧にやった筈だ。確かに私が全て検品した訳では無いが、それでも全員で不備を出さずにあんなに必死に頑張ったのに。
そうこうしている間に、不良があったという問題のアンクレット写真が浅岡専務からメールで届いた。そこに映し出されていたものは、補修前のパーツ取れが発生している状態のアンクレットだった。
全員で直したのに、なんで?
どうしてまた、もとのアンクレットに戻っているの?
「幸い、浅岡商店の取引先は東京だ。青山らしいから、今からすぐ向かう。購入した五十足の殆どに不具合があったらしい」
「殆ど!?」
一体どういう事なのだ。
「スケジュール調整、頼むぞ」
社長はスーツのジャケットを整え、ネクタイの歪みが無いかを確認し、社長室を出て行こうとするところを、私も追いかけた。
「運転手が要りますよね。私も行きます。私が検品に携わったのです。一番多く商品を見た私の所で見落としがあったのだと。きっと、私のミスです。だから私も一緒に謝ります」
「いいや、違う。紗那は一生懸命修理してくれただろう。あの日は、全員で頑張ったじゃないか。きっと、何か手違いがあったんだ」
ぽん、と頭に優しく手を置いてくれた。まただ、また胸が高鳴る――こんな時なのに、と自分を律した。
「お前の修理は完璧だった。紗那がいい加減な仕事をするような女性じゃ無いという事は、俺は誰よりも理解しているつもりだ。気にするな。紗那のせいじゃない」
私の事をそこまで信用してくれているんだ・・・・。
こんなに嬉しい言葉をかけてくれるなんて、何だか恥ずかしくなった。
「す、スケジュール調整、伝えてまいります。先に車へ向かって下さい」
社長の言葉に胸を高鳴らせてしまった私は、普段と違う顔を彼に見られたくなくて、わざと後から行く事にした。
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