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4.受注キャンセルなんて言語道断!(しかし不気味な笑顔で承諾)
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しおりを挟む「受注一万足キャンセルなんて、ふざけた女だな」昼間にかいつまんで説明したが、私から更に詳しい話を聞いて父が怒りの声を上げた。「紗那をバカにするなんざ、絶対赦せんなぁ! しかし一万足キャンセルなんて、福士社長も思い切ったな。よっぽどお前に惚れているんだな」
そうだ。遂に実家の父の耳にも社長が私と付き合っている事が届いたのだ。
というより、先日工場に来た時、父に話があるとか言っていた社長が、これ幸いと父に伝えたのだろう。その辺りから、父の機嫌がニコニコ良くなったのだ。そして私が社長に対して冷たい態度を取っている意味に合点が付いたらしく、何でもっと早く言わなかった、とりあえずめでたいのだから、祝いをしよう、という事で、私に初カレが出来た事について、勝手に祝われた。
もうこうなったら、今更偽装と言い出せない。どうしたものか。
当面はこのまま付き合っているフリをして、その後、面白みのない女だから、浮気されて別れた、と言うしかないだろう。とりあえずの計画は立てたが、ずさんすぎて果たして使えるのかどうか。
「紗那。く・れ・ぐ・れ・も、福士社長と上手くやるんだぞ! スギウラの為にも!!」
私の幸せよりスギウラかーい。
まあ、スギウラが安泰=私の幸せなんだけどさ。
「あの人(しゃちょう)の話はもういいから、新商品の開発、どうしたらいいの? スギウラだって、靴底の材料手配もしちゃったんでしょ? だったらスニーカーよりブーツなら何とかなりそう? ムートンブーツとか」
「バカ言え。スギウラで手配した底の大幅変更も無茶だけど、ムートンブーツをどこで縫製するんだ。だったらまだスニーカーで考える方がいいだろうな」
「無理かぁ。ムートンブーツなら、何とか一万足分ハケさせられるかと思ったけど」
インソールクッションの入ったムートンブーツは、今でこそ入手しやすくなったが、初めてシークレットソールやらインソールクッションが入ったムートンブーツが販売された時は、それこそ飛ぶように売れたのだ。しかし今は珍しくも何ともないから、そんなに売れない。
ああ、新しい商品がどしどし発売されて、靴がいっぱい売れていた時代が懐かしい。
足元のお洒落を気にする人が減ってしまい、量産型の安い靴が主流となった今では、自社ブランドの商品を売るのは、非常に難しい時代となった。
しかしムートンブーツは冬の鉄板。毎年買い替えるお客様に、フクシの新しいインソールムートンを提案できれば良かったんだけどなぁ。
確かにお父さんの言う通り、フクシはスニーカーには強いが、ブーツ方面となるとめっぽう弱くなる。しかもムートンブーツの縫製工場は、フクシの取引先に無い。海外に手配するとなると・・・・工場探しから始めなきゃならない。工場に視察に行って、サンプル作って・・・・新規の取引となると、秋の展示会へのサンプル仕上げでさえ納期が厳しい。
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