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10.ご褒美に若頭とのデートが決まりました!

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「良かったね、お嬢。あ、さっきね、白雪お嬢のお父様に、娘は預かった、返して欲しかったら今すぐ一人で緑の花公園の南側広場へ来い、警察に通報すれば、娘はどうなっても知らないぞ――ってメッセージ送ったの。白雪お嬢の画像付けてね。そしたら、こうやって仕事放って来てくれたってワケよ。強引なやり方だったとは思うけれど、でも、こうでもしないと仕事人間は来てくれないから。身近に淋しい思いをしてきた人を知っているから、お嬢もきっと同じなんだろうなって思った。もっとさ、ちゃんとお父さんに我儘言えばいいんだよ。お嬢まだ七歳だよ? いっぱい、我儘言ってもいいんだ。遠慮しちゃダメ。ね?」

 
「みおっ・・・・!」

 遂にうわーん、とお嬢が泣きだして私にしがみついた。

「ホントは、家にお父様がいなくて淋しかったのよね?」

 こくこく、と頷いて、お嬢が素直に自分の気持ちを吐き出した。「お父様、何時も忙しいから・・・・! ずっと、淋しいって言えなくて。悪戯繰り返していたら、お母様が出て行ってしまって・・・・それで・・・・それで・・・・」

「周りの大人を振り回す前に、先ずは自分の親に不満があるなら言えっつーの。っとに、世話の焼けるお嬢だよ。ホラ、泣いていないでしっかりこの時間楽しみな! 折角念願のお父さんが来てくれたんだ。笑って、笑って! お嬢に泣き顔は似合わないよ」

 にっ、と笑って見せると、お嬢もにっ、っと笑い返してくれた。

「美緒、本当にありがとう! 元気出た!」

「そうこなくっちゃ。あ、五城さん。お偉い社長さんか何か知りませんけどね、今日の缶蹴り勝負は真剣ですよ。手加減一切ナシのガチ勝負ですからね。死ぬ気でかからないと、すぐ捕まりますよ。なんせ、缶蹴り女王直伝ですからね、白雪お嬢は強いですよ」

「か・・・・缶蹴り・・・・?」

「えーっ、お父様缶蹴りも知らないのおっー? 白雪が教えてあげるから! こっち来て!」

 嬉しそうにお父さんの手をグイグイ引っ張って、陣地内に連れ込んで缶蹴りのルールを必死で説明している。

 良かったね、お嬢!

 
「美緒。やってくれたな」

 ぽん、と頭を撫でられ、見ると中松さんだった。「無茶ばっかりする割に、なんだかんだで円満解決になるのが凄いな」

「でしょー」

「よくやったじゃねえか、と褒めてやりたいがやり口が強引だな。本当に警察が来ていたら、どうするつもりだったんだ?」

「もしそうだったとしても、何とかなると思って。悪戯したって正直に白状するつもりだったし、それでお縄にはならないでしょ。イチ君がいるし」

「ははっ。ホント、美緒には参る」

「でもね、お父さんは警察には言わないと思った。入江さんから聞いていたけど、お父さんも相当白雪お嬢の事は気にかけていらっしゃるわ。なかなかそれが上手く伝えられなくて、仕事しか頑張れない不器用な人みたい。だからこういう強引な手が有効なのよ」

「お嬢の事、色々考えてくれてありがとう。昨日、あんな目に遭わされた相手なのに」

「全然気にしてないし、もう友達になったもの」

「友達? 一体、何友達なんだ?」

「えーっと・・・・缶蹴り友達と、中松さん推し友達? 推し友って言えばいいのかな?」

 推し友が中松さんと聞き、ぶはっ、と噴き出された。
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