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9.ニセ令嬢、モノホン令嬢の根性を叩き直す鬼になります!
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中松さんから貰うであろうご褒美の内容がどんなものかと馳せながら、お嬢を探した。上手く隠れているわね。
さっきアドバイスをした場所まで行くと、その奥にお嬢はじっと隠れていた。
「お嬢、みーつけた!」
わざと大きな声を出し、私の存在を遠くから知らせた。
こちらに気づいたお嬢が大木から身軽に飛び出して来て、全速力で走り出した。
ふーん。結構早いじゃん!
「待ちなさいよっ」
声を荒げ、必死で追いかけた。本気の形相を見せるが、小学一年生相手に全力で走ったら、流石に私の方が早い。でも今は、お嬢に勝って貰わなきゃ。
「お嬢、待ちなさ――いっ!!」
必死に走っていると、中松さんが加勢してきた!
何と陣地外からお嬢を捕獲できるよう、先で待ち構えている!
わっ。マズイ。どうしよう。このまま中松さんがお嬢を捕まえたら、私の計画が水の泡!
「がんばれっ、白雪ちゃん!」
「いけえええー! 美緒に負けるなぁー!」
「もう少し、頑張ってええええ――――!」
外野も盛り上がって来た。いいぞ、いいぞ!
いよいよ私とお嬢、中松さんが陣地へ到着し、最後の勝負へ。
「お嬢、覚悟!」
私は叫んでジャンプした。お嬢を捕まえようと出てきた中松さんに向かって。
お嬢にタックルすると見せかけているけれど、私はわざと外した。中松さんだったら、きっと受け止めてくれる筈――
私が逞しい腕に抱き留められるのと、カアン、という缶蹴り独特のいい音が響いたのは、ほぼ同時だった。
「わああーっ。逃げろ――っっ」
円内にいた子(逃げる人)は、全員バラバラに逃げ出した。
「助けてくれてありがとうっ」
「美緒ちゃんを振り切っちゃうなんて、白雪ちゃんすごいねっ!」
「ねーねー、隠れるコツ教えて!!」
そんな声が聞こえてきた。
うっしっし。予想通り、予想通り!
お嬢、やったじゃん。これで今日のヒーロー賞はイタダキだね!
「あーん、もう! しくじっちゃったわ!」
悔しがる声だけを上げておいて、どさくさに紛れて、ぎゅー、と中松さんに抱き着いた。
「美緒、お前わざと外しただろ。白雪お嬢に、華でも持たせるつもりだったのか?」
「そうよ。そしたら缶蹴り友達できるでしょ。友達と遊べたら、きっと楽しいわ。大人をからかったり、困らせたりしている暇なんてなくなっちゃうもの。多分もう、手を焼かなくなるわ」
「美緒らしい、いい考えだな」
ふっと優しい目線を送ってくれる中松さん。ああ、スキー!
今すぐチューしたーい!
「でも、俺が受け止めなかったら怪我してただろ。あまり無茶はするなよ」
「中松さんだからジャンプしたんだよ。ちゃんと私を受け止めてくれるって信じていたから。あそこにいたのがイチ君だったら、ジャンプしてないよ? 多分大けがしてると思うから」
真顔で言うと、中松さんが噴出した。
「ぷっ。あっはっは。そりゃそうだな。傑作だ」
ぎゃをー。また素敵な顔して笑う!
ずるいなあ。もう! 中松さんの笑顔、たまんないよ。
「どれ。散った子を探しに行くか」
「ラジャ!」
「――っと、その前に」
グイ、と頭部を引き寄せられたかと思ったら、ぐっと力が込められ、そのまま唇を激しく奪われた。えっ。なにっ。一体、何が起こっているの!?
獰猛な野獣のような目をしているのに、触れる唇は熱くて、でも優しい。
目を開いて驚いていると、褒美だ、と一言呟いて、ニヤリ。
――中松さん、色々もう、上手(うわて)過ぎるっ!!
缶蹴り女王をノックアウトしたのは、悪い顔した執事――もとい、三成組の若頭だった。
さっきアドバイスをした場所まで行くと、その奥にお嬢はじっと隠れていた。
「お嬢、みーつけた!」
わざと大きな声を出し、私の存在を遠くから知らせた。
こちらに気づいたお嬢が大木から身軽に飛び出して来て、全速力で走り出した。
ふーん。結構早いじゃん!
「待ちなさいよっ」
声を荒げ、必死で追いかけた。本気の形相を見せるが、小学一年生相手に全力で走ったら、流石に私の方が早い。でも今は、お嬢に勝って貰わなきゃ。
「お嬢、待ちなさ――いっ!!」
必死に走っていると、中松さんが加勢してきた!
何と陣地外からお嬢を捕獲できるよう、先で待ち構えている!
わっ。マズイ。どうしよう。このまま中松さんがお嬢を捕まえたら、私の計画が水の泡!
「がんばれっ、白雪ちゃん!」
「いけえええー! 美緒に負けるなぁー!」
「もう少し、頑張ってええええ――――!」
外野も盛り上がって来た。いいぞ、いいぞ!
いよいよ私とお嬢、中松さんが陣地へ到着し、最後の勝負へ。
「お嬢、覚悟!」
私は叫んでジャンプした。お嬢を捕まえようと出てきた中松さんに向かって。
お嬢にタックルすると見せかけているけれど、私はわざと外した。中松さんだったら、きっと受け止めてくれる筈――
私が逞しい腕に抱き留められるのと、カアン、という缶蹴り独特のいい音が響いたのは、ほぼ同時だった。
「わああーっ。逃げろ――っっ」
円内にいた子(逃げる人)は、全員バラバラに逃げ出した。
「助けてくれてありがとうっ」
「美緒ちゃんを振り切っちゃうなんて、白雪ちゃんすごいねっ!」
「ねーねー、隠れるコツ教えて!!」
そんな声が聞こえてきた。
うっしっし。予想通り、予想通り!
お嬢、やったじゃん。これで今日のヒーロー賞はイタダキだね!
「あーん、もう! しくじっちゃったわ!」
悔しがる声だけを上げておいて、どさくさに紛れて、ぎゅー、と中松さんに抱き着いた。
「美緒、お前わざと外しただろ。白雪お嬢に、華でも持たせるつもりだったのか?」
「そうよ。そしたら缶蹴り友達できるでしょ。友達と遊べたら、きっと楽しいわ。大人をからかったり、困らせたりしている暇なんてなくなっちゃうもの。多分もう、手を焼かなくなるわ」
「美緒らしい、いい考えだな」
ふっと優しい目線を送ってくれる中松さん。ああ、スキー!
今すぐチューしたーい!
「でも、俺が受け止めなかったら怪我してただろ。あまり無茶はするなよ」
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ずるいなあ。もう! 中松さんの笑顔、たまんないよ。
「どれ。散った子を探しに行くか」
「ラジャ!」
「――っと、その前に」
グイ、と頭部を引き寄せられたかと思ったら、ぐっと力が込められ、そのまま唇を激しく奪われた。えっ。なにっ。一体、何が起こっているの!?
獰猛な野獣のような目をしているのに、触れる唇は熱くて、でも優しい。
目を開いて驚いていると、褒美だ、と一言呟いて、ニヤリ。
――中松さん、色々もう、上手(うわて)過ぎるっ!!
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