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6.鬼執事は何をやらせても完璧です!

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 中松さんは焦るどころか顔色ひとつ変えず、大盛ご飯をさっと美しく盛り付け、ネギ抜きと言っていたみそ汁も間違えずに作り、(というかもうネギ抜きのみそ汁がひとつ用意されていた)出来上がった料理と共にトレイに乗せた。お母さん一人じゃ運べないから、手が空いた私が一緒に運ぶことに。

「美緒、このランチは五番テーブルと六番テーブル。みそ汁ネギ抜きは五番テーブルだ。ご飯は全部大盛だから、どれを出してもいい」

 トレイに乗せながら的確に指示をくれて、伝票を渡してもらった。
 受け取って料理を運び、戻ってくると次のビフカツとステーキ、ご飯とみそ汁がトレイに同時搭載されていた。「それ、三番テーブルな」


 何この人!
 鬼完璧なんですけど!!
 グリーンバンブーで働くのが今日が初めてとは思えない!


 そんな中松さんの見事な鬼配膳術のお陰で、今日のランチは何の問題もなく乗り切れた。


 こりゃ・・・・イチ君が貸し渋るわけだ。
 納得した。何でもできちゃうのねっ!


 ていうか、永久に貸し出して欲しいっ!
 もぉおっ。またこの完璧鬼執事じゃなくて鬼配膳係に惚れちゃったよ――!


 早く中松さんを私のものにしたーいっっ!!



 パーフェクト鬼配膳のお陰で、無事にランチを乗り切った午後三時。
 準備中の札を表のドアに掛けた所で、終わったー、と思わず声を上げた。


「ミチ君――っ。ミチ君のお陰で無事に終わったよぉ。ありがとう――!」


 お母さんが中松さんの手を取って、嬉しい気持ちを表す為にぶんぶんと振り回した。

「ちょっと! 止めてよっ。私の中松さんに触らないでっ!」

 慌てて二人の間に割って入り、お母さんと中松さんを引き離した。ミチ君とか馴れ馴れしく呼ぶのも嫌なのに!

「勝手に触ったら、たとえお母さんでも赦さないから」

 怒った顔を見せたが、令嬢口調を心掛け、丁寧に言った。コラ、って言うと多分お母さんが『美緒ちゃん、こわーいっっ、えーん』って泣き出して、私が中松さんに叱られるから、必死に耐えた。
 好きな人に幻滅されないために、頑張れ、私!

「ごめぇん。そんなつもりじゃないの。えーん」

 結局泣くんか――っ!

「無事にランチを乗り切れたのが嬉しくて、つい。お父さんやギンさんまでいないから不安で。ごめんねぇ、美緒ちゃん」

 反省したお母さんは、泣きながら私の手をにぎにぎしてきた。

「まあまあ、美緒。この程度で母親に目くじら立てなくてもいいだろ。減るもんじゃあるまいし」


 減るのよ! 何かが!
 鬼完璧な筈なのに、肝心の乙女心を解っていない!!


 
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