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6.鬼執事は何をやらせても完璧です!

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「どーも。中松さん、今日はヨロシクー」

 くだけた感じの琥太郎が中松さんに挨拶した。
 彼もコック姿で、様になっている。最近琥太郎狙いでちょくちょくグリーンバンブーに食事に来る同級生とか、若い女性が増えた。
 お姉ちゃんやお母さんは昔から常連ウケがいい。年上に可愛がられるタイプだからね。

 私はというと、若い衆からモテていると思う。でも、そういうのは中松さんがいるから、もういいかな。
 結構建設業の人とか、ドライバーのヤンチャそうな人に誘われることが多い。ガテン系ってヤツ?
 お世辞で『美緒ちゃん目当てで通っているんだよー』って言ってくるヤツいるけど、チャラいから相手にしていない。

 でもでもっ。中松さんが配膳立ってホール手伝ったりしたらさ、若い女性がキャーキャー言って通うようになるんじゃないの!?
 それは困る!

「中松さん」

「なんだ、美緒」

「常連さんとかに口説かれても、私と付き合っているってちゃんと断ってね! 押し強い人多いから!」

「お前も相当押し強いと思うが? 自分はいいのかよ」

「私はいいの。だって中松さんとつき合っているんだもん!」

 家族は私が中松さんに惚れているが、相手にされていない事も知っているから、誰もツッコまない。ここは、そっとしておいて。
 
「ま、解った。面倒な事になっても困るから、そう言う事にする」

「素直でよろしい」

「誰に言っているんだ。お前こそ他の男の誘いなんか断れよ?」

「あったりまえじゃん。もうすぐ結婚するって吹聴しておくから」


 そしてそれを既成事実に――

 
「そこまで言わなくていい。契約終了後、別れたらどうするんだ。説明するのが面倒だろ?」

「契約打ち切られないようにすればいいだけの話」

 ぽん、と大きな手が頭に置かれた。「まあ、あまり無理するな。俺みたいなワケアリ男、すぐ飽きるから」

「飽きないよ! 中松さん、凄く素敵だもん! 背中の鳥さんだって別に気にしない――」

 もが、と口を塞がれた。「人の秘密をベラベラ大声で喋るな、バカ」

 ふおわぉー。お口塞がれているよー。どうせ塞ぐのだったらお口にチューして欲しい・・・・。
 
「遊んでいる場合じゃねーんだ。仕事だし、キッチリやらないといけないだろ。手順を色々教えてくれ。とにかく、しっかりサポートするから」

 そう言って中松さんは、私やお姉ちゃんから聞いたグリーンバンブー全般の仕事を頭の中に叩き込んでいった。

 中松さんが担当する配膳は、伝票がカウンターに並んだら、中にオーダーを通して定食ができるタイミングでご飯をよそい、みそ汁を入れる。手が空いたら、ホールが片付けてきた洗いものを自動食器洗浄機にかけ、食器を戻す。
 ホールが用事で手を取られていたら、お客の案内や料理を運ぶ。時に、キッチンのサポートをする。ホールもキッチンも、両方こなしながら、配膳していくのだ。
 ベテランばかりでこなしていく仕事なのに、今日はリーダーがお姉ちゃんで、他のサポートが付け焼刃の姉弟。大丈夫かな?


 開店時間の五分前になったらお母さんが二階から降りてきた。ミチくんありがとー、今日はヨロシクねぇー、と相変わらず軽いノリで挨拶して、グリーンバンブーのロゴが入った緑のエプロンを身に着けた。中松さんにもエプロンをしてもらおうかと思ったけれど、一応キッチン内に入るので、コックの恰好に落ち着いた。


 うーん、本気でカッコイイ。こっそり写真を携帯で撮っておいたの。待ち受け確定ね。


 
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