【R18】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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3.お帰りのキスを強要する旦那様(ニセ)。

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「今日はフランス料理のフルコースだ。作法については、中松にかなり仕込まれただろう。間違える度にカウントして食後に罰を与えるから、そのつもりでな」

 いいっ!? 罰を与えるって・・・・! 聞いてないよーぉ!
 今日の夕方からみっちり詰め込まれた、食事作法。
 そんなの全然やった事ないけど、一千万円の借金立て替えて貰ったし、既にニセ嫁として稼働中だからクビにならないようにしなきゃなぁ。

 眉毛をハの字にして困っていると、姿勢の良い恰好で中松がリビングダイニングにやって来た。仕草は流石に一流の付人だ。振る舞いが綺麗だ。

「オードブルでございます」

 あああ、遂にこの時が来てしまったあああ。私に出来るかな!?
 鬼松の言葉を思い出す。――ナイフやフォークなどのカトラリーは「外側から順に」使うのです、と。
 外側ね。うん、外側。大丈夫。

 隣の一矢を横目で見ると、良い姿勢できちんと待っている。はああ、美しいわあ。
 私も頑張らなきゃ。背筋を伸ばしてオードブルを待った。


「旬の野菜ムースと空豆のサラダ・ズワイ添えでございます」


 野菜のムースにズワイ添えって、今まで聞いたこともないようなメニューだ。グリーンバンブーで出す洋食なら『旬の野菜サラダ大盛のエビ天定食』みたいな感じだろうか。ズワイガニは無いからエビで。どうしてもズワイガニを使うなら、値段的にグラタンに少量利用するくらいしかできないよ。カニカマ使って『なんちゃってカニ添え』みたいにするか。
 今回はオードブル(前菜)だから、うちで定食にしちゃったらメインディッシュかぁ。全然違うね。

 中松が私の目の前に、大きくて白いお皿の中央に、ちょんっと『旬の野菜ムースと空豆のサラダ・ズワイ添え』が乗せられたオードブルの皿を置いてくれた。

 量少なっ!

 グリーンバンブーの定食は、たくさん食べて欲しいから結構大きい。リーズナブルで美味しくてお腹いっぱいになるところが自慢!

 美しい彩りは確かにいいと思う。何かのイラストみたいに、少しだけ円を描くようにかけられた鮮やかなソースもまるで芸術だ。
 料理のアートだね。アート。グリーンバンブーには無縁だわ。ガチ盛りである意味インスタ映えするけど、映えの種類が全く違う。


「食べてみろ、伊織。私が見ていてやろう」


 ゲー。お手本見せてくれるんじゃないのぉ?
 私は右外側からナイフを、左外側からフォークを取った。美しい芸術品のような料理にナイフを入れると、柔らかく弾力のあるムースはすぐに切れ、真っ二つに割れた。続いてフォークで刺し、ナイフも置かずに口元に運んだ。

「おいしー」

 繊細だけど旬の野菜の香りが広がるムースに、舌鼓を打った。

「伊織、相変わらず美味そうに食べるな」

 一矢が目を細めて笑ってくれた。
 あっ、合格なのかしら?

「中松、採点は?」一矢が中松に聞いた。

「三十点といったところでしょうか。ちなみに百点満点中の、でございます。初回でこの点数では落第ですよ、伊織様」

「なんでっ」

 あまりの低い点数に、思わず中松を睨んだ。ちゃんとやったのに!
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