記憶探しの旅に出ます

あかくりこ

文字の大きさ
上 下
30 / 37

情況の摺合せ2

しおりを挟む
姫の話

 ・宮司は2年前に死んでる

 ・サピエンスは無関係。宮司は死んでいる。死んでいるのに消滅していない。

 リョウの話

 ・エンキのマナという物騒なものが奥の院にある

 ・手あたり次第記憶を奪う

 ウルススの話

 ・100年前世界が崩壊してサピエンスが消えた




「でもそれで100年前に起きた記憶の食い違い、婚礼の朝に姫の記憶が無くなったことも一連の現象に説明が付きます」

 割と他人事のようにリョウが意見をまとめ、

「しかし、そのエンキの神託なんだろう?この婚礼は。自分で告げた神託をてめぇでぶち壊しにかかるというのが俺には理解できねぇ」

 フェルカドが素直な疑問を述べた。

「もしかしたら神殿の神官も記憶を消されているのかも知れない。それなら一応筋は通るっす」

 疑問にカインが仮説を提示し、リョウは黙って聞いているダキアの方に鼻先を向ける。

「正直、行幸は中止、アシル神官を動員してエンキのマナの捜索に駆り出すべきと具申します」

 予めカインに釘を刺されているのか、澱みない敬語でリョウが申し述べる。

「その、記憶を操作する、というか消し飛ばす。それは間違いない。そう思う」

 やや間をおいて、噛みしめるように返答するダキア。



 感情をあらわにすれば最後記憶を消される厄介極まりないエンキのマナを所有するシチフサ宮司はシェリアルを狙っている。言葉は悪いが、行幸は神殿の不手際を被ったようなものだ。



「グラディアテュール領行幸は後日仕切り直す。行幸隊列に通達した後、最速でアシル神殿に向かうぞ」

 ここでもミザルの決断は迅速だった。

「俺とアルコーは姫の護衛として行幸に合流する。フェルカド、チャラワン留守を頼むぞ」



 出立の準備の間、ダキアの胸中は穏やかではなかった。

 何を考えてるのか知らんがシチフサ宮司は一発ぶん殴らなくちゃ気が済まない。伴侶にちょっかいだされたという不快はもちろんのこと、シェリアルを苦しませたことに対する憤怒だ。

 恐らくだけど意識が戻った時、少しの間感じた、靄の中で何も思い出せない白い恐怖。あれが記憶を消された状態なのだと思う。自身でその身で体験したから分かる。あんなもの説明のしようがない。婚礼の朝からいままで姫はあんな状態に置かれていたのだ。

 行幸の途上、立ち寄る集落で、本来よく見知った関係の集落の長や、キンツェムの王族に「今現在顔も名前も一致しないどころか氏素性何も覚えていないのに旧知の関係という体で会話をする」無体な真似を強いられる様子を、どこかから高みの見物を決め込んでたと思うだけではらわたが煮えくり返る。正直な気持ち一発じゃすまないかもしれない。

編集
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

惑星エデン

あかくりこ
SF
その惑星は、彼らにとって未知の観察領域 極めて稀な条件を満たした星系に到着した宇宙人はその星を【地球にきわめてよく似た環境】に作り替え、生命の誕生、進化の観察を始める

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~

ロクマルJ
SF
百万年の時を越え 地球最強のサイボーグ兵士が目覚めた時 人類の文明は衰退し 地上は、魔法と古代文明が入り混じる ファンタジー世界へと変容していた。 新たなる世界で、兵士は 冒険者を目指す一人の少女と出会い 再び人類の守り手として歩き出す。 そして世界の真実が解き明かされる時 人類の運命の歯車は 再び大きく動き始める... ※書き物初挑戦となります、拙い文章でお見苦しい所も多々あるとは思いますが  もし気に入って頂ける方が良ければ幸しく思います  週1話のペースを目標に更新して参ります  よろしくお願いします ▼表紙絵、挿絵プロジェクト進行中▼ イラストレーター:東雲飛鶴様協力の元、表紙・挿絵を制作中です! 表紙の原案候補その1(2019/2/25)アップしました 後にまた完成版をアップ致します!

No One's Glory -もうひとりの物語-

はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `) よろしくお願い申し上げます 男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。 医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。 男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく…… 手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。 採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。 各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した…… 申し訳ございませんm(_ _)m 不定期投稿になります。 本業多忙のため、しばらく連載休止します。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

処理中です...