記憶探しの旅に出ます

あか りくこ

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序章 見守る者たち

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 その星系は、宇宙ではよく見られる数個の恒星が軌道の中心点を軸に付かず離れず回りあう多重連星ではなかった。
 主星のすぐ脇を回るガス惑星ホットジュピター、巨大な岩石惑星スーパーアース、ミニネプチューンといったごくありふれた構成でもないその星系は、一つの安定した恒星と、主星のやや近くを回る小ぶりな岩石惑星が三つ四つ、その外側を五つ六つのガス惑星が取り囲む特殊な構造だった。

 宇宙ではあまり見られない構成に、この単一恒星系がどこで誕生したのか軌道を逆算して調べることにした。
 すると、かつて観測した地球と呼ぶ岩石惑星が所属する単一恒星系と同じ星域で誕生したことが分かった。つまり、この星系は星団として誕生しながら、何らかの原因で連星になり損ねたはぐれ星系ということだ。

 ならば、惑星の組成も酷似している可能性があると宇宙人たちは考えた。条件を整えてやれば地球と同じ酸素好気性生物進化の過程を観測できるかも知れない。

 そこで宇宙人たちはハビタブルゾーンにある海洋惑星をテラフォーミングし、観測船ヴィマーナを衛星として周回させ酷似した環境を作ることにした。



 宇宙人たちはこの惑星にエデンと名付け、超大陸をパンゲア・エデン、超海洋をパンサラッサ・エデンと名付け、早速観測を開始した。

 エデンが公転軌道を数万数千万周回する間に、パンゲア・エデンは分裂衝突を繰り返し、地表にはサンゴ礁、熱帯雨林、砂漠、森林と湖沼、永久凍土、様々な環境が生まれ、環境に適応した生き物で満ち溢れ、進化を始めた。
 その際、恐竜の繁栄と哺乳類の台頭が平行して起きた。恐竜は早い段階で鳥類へと分化を始め、安定陸塊パンゲア・エデンを母体とするエクウス大陸では恐竜と鳥類と哺乳類が共存する生態系が生まれのだ。
 陸地の分割、移動が起きてすぐににパンゲア・エデンから分かれたために恐竜の生息数が比較的少なかった島大陸ハフリンガーは、早い段階で大型恐竜が駆逐され、最終的に人類に至る種と肉食目の間の特徴を持つ獣人が生まれた。
 
 宇宙人たちは獣人にミアキスヒューマンと名付け、観測を始めることにした。
 地球とは違う進化が起きたことを宇宙人たちは驚き喜んだ。彼らは好奇心の塊のような精神を持ち合わせていたからだ。

 興味深い事に、ミアキスヒューマンは容姿の発現に法則性がなかった。ほぼ獣の外見の親からほぼ人間の姿の子供が生まれたりする。
 ミアキスヒューマンの発現率の割合に準じて

 ・ほぼ純ミアキスの姿のニアミアキス

 ・70パーセント近い発現率でほぼ二足歩行のミアキスのスリークォーター

 ・半分ミアキス要素が発現しているハーフミアキス

 ・ハーフよりサピエンスの姿に近いクォーターミアキス

 ・ほぼサピエンスと変わらない外見のニアサピエンス、(ミアキスヒューマン達はファーミアキスと呼んでいるらしい)

 サピエンスとの最大の違いは宝石、貴石に不思議な光を封じ込める事が出来た。
 宇宙人たちはミアキスヒューマンを数組拉致、エデン星系外縁部で待機する母船の研究施設天磐船で光を採取する再現実験を繰り返したが、何も起きなかった。
 エデンの自然環境を再現した環境実験棟イムドゥグドでも、光の採取を再現することはできなかった。
 研究分野としてはおそらくエデン特有の磁場かなにかが影響するガイア理論に該当するかも知れない。研究室で再現できない以上、この現象は現地調査で解明していく方針で継続が決定した。

 この頃、サピエンスとルプス系ミアキスを長とする集落が出現した。
 そこはもともとミアキスの集落だったが、一人のサピエンスが移り住んで建築、灌漑、農耕、牧畜、漁を伝えた。
 何故サピエンスが移り住んだのかはわからない。が、以降サピエンスとミアキスヒューマンは共同生活を営むようになっていった。

 件の集落のサピエンス、ルプス系ミアキスが二世代経た頃、夜間に光を採取する姿が確認された。
 高感度カメラと赤外線カメラで撮った画像を観測船で暮らすミアキスヒューマンたちに見せても分からないと首を傾げるだけだった。

 もう都市国家と呼ぶべき大きさに成長した地上のサピエンスとルプス系ミアキスの集落に大きな変化が現れた。
 集落から、集団が分かれて移住を開始した。
 我々も彼らが移住した砂漠、密林にそれぞれ興した新しい集落を観察対象にして定点観測を始めた。

 そんな中、エデン星系に巨大彗星が超接近した。
 小惑星サイズの核を持つ彗星は、恒星の至近距離を掠め長大な尾を靡かせる壮大な天体ショーで終わるはずだった。
 彗星の軌道計算からエデンとの衝突の可能性が示唆されるまでは。

 宇宙人たちも万能ではない。
 彼らに出来るのは地表の生き物が絶滅しないよう祈る事だけだった。
 幸い、彗星は地表すれすれを掠めて飛び去った。
 地上には膨大な量の塵が降り注いだ。
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