上 下
65 / 65
その後?

2人が出会ったことが全てが悪いのだ(最終回)

しおりを挟む
 元シユン王国第一王子カサギの領地から戻った聖女ケイの報告に、
「ご苦労だった。つらい思いをさせたようだな。後は、ゆっくり休むがいい。」
 教皇は穏やかな表情で、彼女に告げた。彼女の背を見ながら、彼女が、その言葉を受けても、リツシウン王国・タイカーン国二重王国内から、続々やってくる三位一体教会信徒達に、癒しを、小野が疲れを癒すことなく、その足で与えにむかうだろうことは分かっていた。それだけに、側近とサラギ王子に彼女が無理しすぎないように注意するよう、命じていた。
「本当によい娘だ。」
と教皇は大きなため息をついた。
「その彼女を捨てるとは・・・。ウスイめ、本当にお前はどうしたというのだ?」
とも呟いたのは、一人になってからだった。しばらく一人にするように命じたのである。

「あのような・・・。」
と口にはだしたが、初めてあった魔女王、女魔王ツチイは美しく、礼儀正しく、夫であるウスイの良き妻として、共同統治者としても、問題ないとは思った、ふさわしいとも感じたことを思い出した。そして、2人の力を借りなければならない政治的な事情があったとはいえ、二人の結婚を、夫婦であることを、二重王国を承認したのだ。ケイには、悪いとは思ったが。それでも、今のような事態になったのは、結局はウスイが彼女に出会い、彼女の虜になつたせいである。彼女に夢中になったウスイは、盲目となり、とんでもないことをしでかしたのだ。
「情けが仇となったか。」
 あの時、辺境の地に封ずるのではなく、やはり王宮内での軟禁にすべきだったのかもしれない、それであれば二人が出会うことはなかったはずである。軟禁する場所は、地下牢だったが・・・・。さすがに可愛そうだということで、辺境に領地を与えて、そこに送ったのである。
「それが過ちだった。」
 その地下牢での生活は過酷なものとなり、当然死を期待されるものだったが、教皇の頭の中からは消えていた。
「奴に期待し、情けをかけたことなど全てが過ちだったのだろうな・・・。」
 それが教皇の結論だった。

 とはいえ、彼にはもう、彼と再洗礼派教会信徒達を排除、弾圧することは思いつかなかった。三位一体教会としては、教皇庁としては、彼と再洗礼派教会信徒が牛ずるリツシウン王国なしには、三位一体教会諸国内の平穏も新教教会各派との関係、彼ら相互間の対立も含め、何とか平和を維持できているのは、今回の老師の葬儀を利用?した各国間の会合、交渉の結果実現したの、表面的には、形式的には教皇のよびかけであるが、リツシウン王国・タイカーン国二重王国の後押し、存在なしには不可能だということは、彼にはよく分かっていた。かつての教皇のように、とにかく異端殲滅を命じるより、信徒達の平穏、幸せを彼は優先するだけの理性があったのである。
「ケイが幸せであることが、不幸中の幸いだな。」
とも呟いていた。
「ウスイも不幸であったのかもしれない。あのようなことがなければ、魔族の女などに迷うこともなく・・・全てが順風満帆だったかもしれない・・・。私がもう少し・・・。神よ、私が愚かだったのかもしれません。」
「こんな状態でも、なんとか領民を安寧の中で治めることができている・・・ケイと結婚していれば、異端の教えを一掃し、正しい信仰だけの国を作れておったやもしれない・・・。」

 教皇をはじめとする海外からの弔問者達が帰国の途についたのは、それから3日後だった。

「不幸になったのは誰かしらね?」
 帰りの馬車の中でシユン王国王妃は、国王に問いかけた。
「自業自得だが、魔族女に惑わされたウスイとお前に捨てられた兄上、いつかは神の裁きがあるだろうな。そして、その兄上に引き裂かれたかの2人と家族たちだな。彼らには、神の救いがあるといいな。」
と表情を変えることなく、国王は答えた。
「兄上が拉致したとお思いなのですか?本当に?まあ、よいでしょう。私は、どうなのかしら?」
 いたずらっぽい目で質問した。
「これで不幸と言えるかね?」
「不幸なはずではないですわね。私は、最初から国王陛下になる方の婚約者だったんですから。」
 彼はその言葉を聞いて小さく笑った。
「まあ、あなたを苦しめる人生も満更ではなかったかもしれませんけど。」
 彼女は彼の手の上に両手を重ねた。
「私は幸せですわ。」
と言って、夫である国王に唇を重ねた。

  
 各国の使節が、教皇をはじめとした面々が去り、少し放心状態でさえある王都の中で、その王宮の中で、
「これからも一緒にいてくれ。」
「もちろんよ。あの時、そうありたいと思ったもの、初めて会った時から。」
「ああ、俺もだよ。」
 本当はあの時、そこまでは思ってはいなかった。だが、そう思いたいウスイとツチイとだった。
 王宮のテラスで、夜空を見上げながら、唇を重ね、舌を絡ませあい、抱きしめ合っていた、2人は。
「俺達が愛し合ったせいで色々なことになってしまった・・・だけど愛するお前といられるなら、これからも、他人を不幸にしても、騒乱を呼んでも後悔はしない。」
「それは私も同じよ。二人でどこまでもいきましょう。」
 さらに互いの体をまさぐりあっているうちに、たまらなくなって、服をはだけて・・・。

「カサギ様。私達を、もう離さないで下さい。」
「私達は、生まれた時から、カサギ様の妻なのです。」
「わ、私も、カサギ様だけなんです。」
 全裸の三人の妻に抱き着かれていたカサギは、彼も全裸だった、
「ああ、一緒にいてくれ。・・・愛しているから。」
と言って、3人を抱きしめていた。

 疲れ切っていたはずのケイだったが、優しくサラギに抱かれると激しく動き、喘ぎ声を出していた。帰国の途中の宿で。
"私は道の先で金塊を得た・・・他の人達は土くれを得たけど。"と満足気に快感を、サラギとともに感じていた。


 これで最終回とします。
 この後、誤字脱字の修正と補正をします。
 今まで読んでいただきありがとうございます。
 補正をして、少し内容が多くなるかもしれません。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

聖なる歌姫は喉を潰され、人間をやめてしまいました。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ロレーナに資格はない!」 「歌の下手なロレーナ!」 「怠け者ロレーナ!」 教会の定めた歌姫ロレーナは、王家の歌姫との勝負に負けてしまった。それもそのはず、聖なる歌姫の歌は精霊に捧げるもので、権力者を喜ばせるものではない。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

貴方に婚約破棄をされて3ヶ月が経ちました。皆様はいかがお過ごしでしょうか。

りすい
恋愛
婚約破棄をされた悪役令嬢からのお手紙

処理中です...