57 / 65
その後?
ただいま
しおりを挟む
カサギは、魔族の妻であるミナを右側の椅子に座らせ、テーブルを挟んでもう二人の妻、元妻と他人は呼ぶが、と向かい合っていた。
彼女達が出奔して、リツシウン王国・タイカーン国二重王国に亡命してきて、カサギとの再会を望んでいるというウスイとツチイから知らせが来た。カサギは、直ぐに自分に与えられていた領地から、ミナを連れて王都にやってきたのだ。
日差しが入ってきて、部屋の中は明るく暗くはなかった。風通しもよく、空気はよどんでいなかった。陰気な感じはほとんどなかった。四人にはかなり広く、調度品も簡素ながらも整っていた。ウスイの好意を感じさせるものだった。
四人は、部屋に入ってから言葉を一切発していなかった。ずっと沈黙のままだった。空気はよどんでいなかったし、暗くもなかったが、重苦しい空気が部屋を暗くしているように感じられてならなかった。
カサギは何とか言わなければと焦った。だが、頭に言いたいことは次々にでてくるが、どうしても口にできなかった。
まず最初に思ったことは、困った、今頃来られても困る、このまま帰ってくれないかということだった。ミナとの関係もある。彼女達を受け入れたら、シユン王国がどう出るかかが懸念された。彼女達の夫たちは有力な貴族であるから、彼らが二重王国に帰還を要求する、それが通らなければシユン王国に訴え出る、それを受けて、或いはそれをうまく利用することで、それを理由に、なにかを二重王国側に要求してくるかもしれない。さらには、軍事的圧力を加えてくるかもしれない。それに負けて、彼女らを、まあ、それはいいとしても、その方が彼女達にとって幸福かもしれない、そして問題の主である自分を引き渡すと言い出すかもしれない。それ以上に、どのように面倒をみるか考えるのが、面倒くさくもあった。どちらにせよ、二重王国側に面倒をかけるのは、恩を仇で返すことになる。その上、彼女らは他人の男の妻になった女ではないか。他の男に抱かれて、一体になって、その男の上で、下で激しく腰を動かし、喘ぎ、喜びを感じて、その挙句、その男の子供を産んだのである。風の噂では、夫婦仲は良いどころか、彼女達の方から夫達に積極的に求め、前の夫よりずっといいと言って ・・・求めもしないのに話を持ってくる者が絶えなかった。良妻賢母で幸せな家庭を作り、守っているということだった。そんな他の男に抱かれて汚れた女達など・・・と雄としての思いもある、どころか強く感じていた。そんな女が面倒を持ってくるな、本心から思ってもいた。大体こいつらは、もともと勝手に押しかけて来た女達ではなかったか。
冷めきった茶をすすりながら、彼女達の顔を見た。"相変わらず美しいな。"と思った。その時、彼女達が押しかけて来た時を思い出した。"あの時も迷惑だと思ったものだな。だが・・・。"
"彼女達がいてくれて、どれだけ助かったことか。心も含めて・・・。"
「以前から、本当はお慕いしておりました。」
と二人とも彼の下に駆け付けて、彼女らの婚約者との婚約破棄に同意して間もなくはせ参じて、彼に目をウルウルさせて彼に言ったのである。その迫力の押されて・・・、"彼女達の美しさに、魅力的な体に悩殺されてしまった、理性をなくしてしまったんだ。"、彼女達を受け入れてしまった。辺境、北方の寒冷な豊かしは言えない領地で、彼女達は文句ひとつ言わず支えてくれた。苦しい戦いの中で、実家の将兵の多くが引き上げたのに、僅かな手勢を率いて、自ら戦いの先頭にすら立ち、彼を助けた。夜も可愛く、いじらしく、妖艶で・・・彼女達の体に溺れて、官能の中に溺れている時は不安を全て忘れることができた。彼女達が彼の元から離れることになったのも、四面楚歌、絶体絶命の彼を助けるため、何とか実家の助力を得ようと、実家を説得しようとして出かけたのである。彼女達が本心からそれを思っていたは分かっていた。彼女達が幽閉されるだろう、そして彼女達が別の男達との結婚を強要されるだろうことは予想がついていた。それでも、彼女達には生きていてほしかった、自分の死に殉じてほしくはなかった。彼女達に何も言う事無く、彼女達を行かせたのだ。そして、生きていてほしいという手紙も、彼女らの一番信頼している侍女にたくしたのである。いうならば、彼女達が他の男達と結婚し、子供が生まれたのは、自分の意志だったと彼は思った。彼女達の体の感触、声、匂いが五感に突然感じた。それ以上に、彼女達が赤ん坊の時に自分が抱けば、にこにこと機嫌がなおる、自分以外には殺されるというくらいに泣きわめくのに。そういう彼女達に癒されたのは自分の方だったことを思い出した。その後も自分を慕うように付きまとう2人に、色々な苦しい事、いやなことを忘れることができたことを思い出した。"俺の方が、勝手に彼女達の前に、彼女達の人生に押しかけていった・・・のかもしれない。彼女達に幸せにしてもらった。"彼女達をこのまま・・・と思い、声が漏れそうになった。心持ち顔をあげ、口を開こうとした時、理性が荒々しく止めに入った。
今なら間に合う、彼女達は元の幸福な家庭にもどることができる、その方が彼女達は幸せになれる。この度は、かつての夫との決別のため、正式な別れの言葉を告げに、けじめをつけるためのものだと言えばよいのだ。膝の上で手を握り締めて、今度は、今度こそは理性に従おうとあがいたのだった。
彼女達が出奔して、リツシウン王国・タイカーン国二重王国に亡命してきて、カサギとの再会を望んでいるというウスイとツチイから知らせが来た。カサギは、直ぐに自分に与えられていた領地から、ミナを連れて王都にやってきたのだ。
日差しが入ってきて、部屋の中は明るく暗くはなかった。風通しもよく、空気はよどんでいなかった。陰気な感じはほとんどなかった。四人にはかなり広く、調度品も簡素ながらも整っていた。ウスイの好意を感じさせるものだった。
四人は、部屋に入ってから言葉を一切発していなかった。ずっと沈黙のままだった。空気はよどんでいなかったし、暗くもなかったが、重苦しい空気が部屋を暗くしているように感じられてならなかった。
カサギは何とか言わなければと焦った。だが、頭に言いたいことは次々にでてくるが、どうしても口にできなかった。
まず最初に思ったことは、困った、今頃来られても困る、このまま帰ってくれないかということだった。ミナとの関係もある。彼女達を受け入れたら、シユン王国がどう出るかかが懸念された。彼女達の夫たちは有力な貴族であるから、彼らが二重王国に帰還を要求する、それが通らなければシユン王国に訴え出る、それを受けて、或いはそれをうまく利用することで、それを理由に、なにかを二重王国側に要求してくるかもしれない。さらには、軍事的圧力を加えてくるかもしれない。それに負けて、彼女らを、まあ、それはいいとしても、その方が彼女達にとって幸福かもしれない、そして問題の主である自分を引き渡すと言い出すかもしれない。それ以上に、どのように面倒をみるか考えるのが、面倒くさくもあった。どちらにせよ、二重王国側に面倒をかけるのは、恩を仇で返すことになる。その上、彼女らは他人の男の妻になった女ではないか。他の男に抱かれて、一体になって、その男の上で、下で激しく腰を動かし、喘ぎ、喜びを感じて、その挙句、その男の子供を産んだのである。風の噂では、夫婦仲は良いどころか、彼女達の方から夫達に積極的に求め、前の夫よりずっといいと言って ・・・求めもしないのに話を持ってくる者が絶えなかった。良妻賢母で幸せな家庭を作り、守っているということだった。そんな他の男に抱かれて汚れた女達など・・・と雄としての思いもある、どころか強く感じていた。そんな女が面倒を持ってくるな、本心から思ってもいた。大体こいつらは、もともと勝手に押しかけて来た女達ではなかったか。
冷めきった茶をすすりながら、彼女達の顔を見た。"相変わらず美しいな。"と思った。その時、彼女達が押しかけて来た時を思い出した。"あの時も迷惑だと思ったものだな。だが・・・。"
"彼女達がいてくれて、どれだけ助かったことか。心も含めて・・・。"
「以前から、本当はお慕いしておりました。」
と二人とも彼の下に駆け付けて、彼女らの婚約者との婚約破棄に同意して間もなくはせ参じて、彼に目をウルウルさせて彼に言ったのである。その迫力の押されて・・・、"彼女達の美しさに、魅力的な体に悩殺されてしまった、理性をなくしてしまったんだ。"、彼女達を受け入れてしまった。辺境、北方の寒冷な豊かしは言えない領地で、彼女達は文句ひとつ言わず支えてくれた。苦しい戦いの中で、実家の将兵の多くが引き上げたのに、僅かな手勢を率いて、自ら戦いの先頭にすら立ち、彼を助けた。夜も可愛く、いじらしく、妖艶で・・・彼女達の体に溺れて、官能の中に溺れている時は不安を全て忘れることができた。彼女達が彼の元から離れることになったのも、四面楚歌、絶体絶命の彼を助けるため、何とか実家の助力を得ようと、実家を説得しようとして出かけたのである。彼女達が本心からそれを思っていたは分かっていた。彼女達が幽閉されるだろう、そして彼女達が別の男達との結婚を強要されるだろうことは予想がついていた。それでも、彼女達には生きていてほしかった、自分の死に殉じてほしくはなかった。彼女達に何も言う事無く、彼女達を行かせたのだ。そして、生きていてほしいという手紙も、彼女らの一番信頼している侍女にたくしたのである。いうならば、彼女達が他の男達と結婚し、子供が生まれたのは、自分の意志だったと彼は思った。彼女達の体の感触、声、匂いが五感に突然感じた。それ以上に、彼女達が赤ん坊の時に自分が抱けば、にこにこと機嫌がなおる、自分以外には殺されるというくらいに泣きわめくのに。そういう彼女達に癒されたのは自分の方だったことを思い出した。その後も自分を慕うように付きまとう2人に、色々な苦しい事、いやなことを忘れることができたことを思い出した。"俺の方が、勝手に彼女達の前に、彼女達の人生に押しかけていった・・・のかもしれない。彼女達に幸せにしてもらった。"彼女達をこのまま・・・と思い、声が漏れそうになった。心持ち顔をあげ、口を開こうとした時、理性が荒々しく止めに入った。
今なら間に合う、彼女達は元の幸福な家庭にもどることができる、その方が彼女達は幸せになれる。この度は、かつての夫との決別のため、正式な別れの言葉を告げに、けじめをつけるためのものだと言えばよいのだ。膝の上で手を握り締めて、今度は、今度こそは理性に従おうとあがいたのだった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる