21 / 65
戦争に向けて
開戦は何時になるか
しおりを挟む
「あの爺の言う通りにした方がいいのかもしれないわね。」
ツチイは、自国に戻り、ウスイが傍らにいない日々を寂しく思いながら、1週間後には彼が来てくれることを待ちわびながらも、呟いてしまった。
彼女が、リツシユン王国でウスイとともに過ごした最後の日、次の日には彼女は自国に向けて旅立った、それは
つい半月前のことだが彼女にはひどく長い日々のような気がしてならなかったが、三位一体教会の老修道士が、彼との拝謁を求めて参上した。彼は嫌な顔をもせず、それを許し、ツチイを伴って、彼と玉座に座りながら対面し、話しを聞いた。
「ツチイ様が、いかに陛下をお愛しになり、お美しく、貞節にして、誠実で、寛大にして、聡明な、お優しい、有能である方であることは、よく知っております。あなたほどの女性は、人間界にあっても得がたいほどのお方であると思っております。」
と前置きして、それが全くのお世辞抜きであること、彼が世辞などは言わない男であることは良く知っていたし、その場でも感じていた。
「それでも。」
と彼が言ったのは、平和のために、女魔法と離婚し、二重王国を解消し、ウスイが三位一体教会信徒に復帰することをウスイに諫言したのであった。
ウスイは、彼の諫言に可とも不可とも言わず、彼に謝辞を述べ、聖都に赴き教皇に自分に戦意はないこと、三位一体教会信徒の保護を確約することを伝えてほしいと命じただけだった。もちろん、穏やかに、丁重にだった。
老修道士は、大きなため息と失望した表情だったが、それに同意して立ち上がった。一瞬、すがるような視線をツチイに送った。
彼が、何のかんのとは言っても、師として以上に、父のような慈愛をウスイに向けていることは、彼女には理解できた。
「何故、人間達は小難しい教義のことに、かくもまでこだわり、問題にして対立しあうのだろうか?」
と思うのだが、彼が三位一体教会信徒を正統、正義と信じているものの、それを超えて人命が失われることを憂慮していることは分かった。そのことは、ウスイにも通じていると、彼女は思った。
タイカーン国魔王として、この再洗礼派教会の信仰を守るための戦いに協力すべきかどうかも考えなければならなかった。単純に考えれば、全くないし、迷惑千番だ。ミーナ国は倒れたが、その残党というか、各地の何人かの有力者の下に結集して抵抗の姿勢を見せている勢力があるし、ミーナ国がなくなったせいで、他の魔族の国と境を接したことになる。人間達の争いに力など削ぎたくはない、というのが本音だ。彼らがミーナ国との戦いで協力、支援してくれたとはいえ、その借りは、既に返していると思っていた。
その一方で、これも本音であるが、人間、リツシユン王国と二重王国となったことで、農林水産鉱工業、商業が盛んになり、物資は豊かになり、国力は強くなり、民の生活は豊かになった。彼女の領内でも、新たな魔獣の加工場や魔法石の加工場ができたし、田畑は一部灌漑も進み、そうでないところも以前では考えられないくらいにりっぱになっていた。魔族達もなかなかやるじゃないか、やってきた人間達に大いに関心させるほど、仲間達からも驚かれるくらい器用で、巧で、優秀な連中が現れた。本当はいたのに誰も気が付かなかったのだ、いや、価値を見出さなかったのだ。人間達のおかげで、多くの魔族が自分の生きがい、働き甲斐、能力を振るえる場所をみつけることができたわけである。そのことも、そこから、そういうことから出て来る利益は、もう捨てがたいほどなのだ。軍事的にもリツシユン王国の支援は、出来れば、いやどうしても欲しい、必要だ。色々な軋轢もある、人間風情と二重王国などとはとかの反対派もいる。それを差し引いても、リツシユン王国との二重王国は、有益この上ないのだ。タイカーン国だけになったら、と考えるとその未来は実に不安だ。
リツシユン王国にとってはどうか?プラス、マイナスある。
それでも、戦争を、人間同士の戦争を回避することができれば、人間達は野蛮ではあるが、魔族と違って支配する者と支配される者以外の関係で平和を維持、それが一時的であったり、永続的なものではないとは言え、する手段を持っていることをツチイは知っていたし、他の魔族の部族との間で、その関係を結ぶ構想を持っていたが。
「だけど・・・。」
五歳の時に初めて会った時、泣いている自分を、自分が泣きたいくらいの時なのに、励まして、笑わせようとして・・・その後は常に優しく励まし、道を指示し、相談に乗り、困難を解決してくれ、ともに戦い、支援、協力してくれて、助けてくれて・・・そして愛してくれて、愛し続けてくれるウスイと別れたくない、と思ってしまう。
「別れたくないよ~。」
一人寝のベットの上で、自分でも大きく、形のいい乳房を自分の手で揉み、ブリッジを作って喘ぎ声を出しながら、ツチイは呟いていた。それが続いていた。
「君がいなくて寂しかったよ~。」
「わ、私だってよ。」
と、もうほとんど強行軍でやってきたウスイは、会う早々ツチイを強く抱きしめた。もう、その2人には国王と魔王の威厳はなかった。側近も侍女もそそくさとその場を離れた、気を利かせて。
「体が汚れているから・・・。」
と言いながらもそそくさに衣服を脱ぐツチイと、
「それは俺の方だよ。」
といって、自分も裸になり、彼女をベッドに押し倒す、ウスイ。
声を上げ、激しく動いた後、ぐったりして、
「もう、死にそう。」
というツチイ、何度目かである、を対面で座って抱きあげながら、ウスイは
「国が、国民がどうなろうと、俺は君といたい、それだけなんだよ。」
と強く抱きしめる彼に、頷きながら、それまでの全ての悩みを、迷いを忘れるツチイだった。
その頃、シユン王国では、聖女ケイはその大きな胸を鷲掴みにされながら、喘いでいた、第三王子の下で。
「素晴らしいよ。聖女様。」
「ケイと、ここではケイと呼んで下さい。」
「せ・・・ケ、ケイ。愛しているよ。」
「わ、私もです。」
ツチイは、自国に戻り、ウスイが傍らにいない日々を寂しく思いながら、1週間後には彼が来てくれることを待ちわびながらも、呟いてしまった。
彼女が、リツシユン王国でウスイとともに過ごした最後の日、次の日には彼女は自国に向けて旅立った、それは
つい半月前のことだが彼女にはひどく長い日々のような気がしてならなかったが、三位一体教会の老修道士が、彼との拝謁を求めて参上した。彼は嫌な顔をもせず、それを許し、ツチイを伴って、彼と玉座に座りながら対面し、話しを聞いた。
「ツチイ様が、いかに陛下をお愛しになり、お美しく、貞節にして、誠実で、寛大にして、聡明な、お優しい、有能である方であることは、よく知っております。あなたほどの女性は、人間界にあっても得がたいほどのお方であると思っております。」
と前置きして、それが全くのお世辞抜きであること、彼が世辞などは言わない男であることは良く知っていたし、その場でも感じていた。
「それでも。」
と彼が言ったのは、平和のために、女魔法と離婚し、二重王国を解消し、ウスイが三位一体教会信徒に復帰することをウスイに諫言したのであった。
ウスイは、彼の諫言に可とも不可とも言わず、彼に謝辞を述べ、聖都に赴き教皇に自分に戦意はないこと、三位一体教会信徒の保護を確約することを伝えてほしいと命じただけだった。もちろん、穏やかに、丁重にだった。
老修道士は、大きなため息と失望した表情だったが、それに同意して立ち上がった。一瞬、すがるような視線をツチイに送った。
彼が、何のかんのとは言っても、師として以上に、父のような慈愛をウスイに向けていることは、彼女には理解できた。
「何故、人間達は小難しい教義のことに、かくもまでこだわり、問題にして対立しあうのだろうか?」
と思うのだが、彼が三位一体教会信徒を正統、正義と信じているものの、それを超えて人命が失われることを憂慮していることは分かった。そのことは、ウスイにも通じていると、彼女は思った。
タイカーン国魔王として、この再洗礼派教会の信仰を守るための戦いに協力すべきかどうかも考えなければならなかった。単純に考えれば、全くないし、迷惑千番だ。ミーナ国は倒れたが、その残党というか、各地の何人かの有力者の下に結集して抵抗の姿勢を見せている勢力があるし、ミーナ国がなくなったせいで、他の魔族の国と境を接したことになる。人間達の争いに力など削ぎたくはない、というのが本音だ。彼らがミーナ国との戦いで協力、支援してくれたとはいえ、その借りは、既に返していると思っていた。
その一方で、これも本音であるが、人間、リツシユン王国と二重王国となったことで、農林水産鉱工業、商業が盛んになり、物資は豊かになり、国力は強くなり、民の生活は豊かになった。彼女の領内でも、新たな魔獣の加工場や魔法石の加工場ができたし、田畑は一部灌漑も進み、そうでないところも以前では考えられないくらいにりっぱになっていた。魔族達もなかなかやるじゃないか、やってきた人間達に大いに関心させるほど、仲間達からも驚かれるくらい器用で、巧で、優秀な連中が現れた。本当はいたのに誰も気が付かなかったのだ、いや、価値を見出さなかったのだ。人間達のおかげで、多くの魔族が自分の生きがい、働き甲斐、能力を振るえる場所をみつけることができたわけである。そのことも、そこから、そういうことから出て来る利益は、もう捨てがたいほどなのだ。軍事的にもリツシユン王国の支援は、出来れば、いやどうしても欲しい、必要だ。色々な軋轢もある、人間風情と二重王国などとはとかの反対派もいる。それを差し引いても、リツシユン王国との二重王国は、有益この上ないのだ。タイカーン国だけになったら、と考えるとその未来は実に不安だ。
リツシユン王国にとってはどうか?プラス、マイナスある。
それでも、戦争を、人間同士の戦争を回避することができれば、人間達は野蛮ではあるが、魔族と違って支配する者と支配される者以外の関係で平和を維持、それが一時的であったり、永続的なものではないとは言え、する手段を持っていることをツチイは知っていたし、他の魔族の部族との間で、その関係を結ぶ構想を持っていたが。
「だけど・・・。」
五歳の時に初めて会った時、泣いている自分を、自分が泣きたいくらいの時なのに、励まして、笑わせようとして・・・その後は常に優しく励まし、道を指示し、相談に乗り、困難を解決してくれ、ともに戦い、支援、協力してくれて、助けてくれて・・・そして愛してくれて、愛し続けてくれるウスイと別れたくない、と思ってしまう。
「別れたくないよ~。」
一人寝のベットの上で、自分でも大きく、形のいい乳房を自分の手で揉み、ブリッジを作って喘ぎ声を出しながら、ツチイは呟いていた。それが続いていた。
「君がいなくて寂しかったよ~。」
「わ、私だってよ。」
と、もうほとんど強行軍でやってきたウスイは、会う早々ツチイを強く抱きしめた。もう、その2人には国王と魔王の威厳はなかった。側近も侍女もそそくさとその場を離れた、気を利かせて。
「体が汚れているから・・・。」
と言いながらもそそくさに衣服を脱ぐツチイと、
「それは俺の方だよ。」
といって、自分も裸になり、彼女をベッドに押し倒す、ウスイ。
声を上げ、激しく動いた後、ぐったりして、
「もう、死にそう。」
というツチイ、何度目かである、を対面で座って抱きあげながら、ウスイは
「国が、国民がどうなろうと、俺は君といたい、それだけなんだよ。」
と強く抱きしめる彼に、頷きながら、それまでの全ての悩みを、迷いを忘れるツチイだった。
その頃、シユン王国では、聖女ケイはその大きな胸を鷲掴みにされながら、喘いでいた、第三王子の下で。
「素晴らしいよ。聖女様。」
「ケイと、ここではケイと呼んで下さい。」
「せ・・・ケ、ケイ。愛しているよ。」
「わ、私もです。」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話
ルジェ*
ファンタジー
婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが───
「は?ふざけんなよ。」
これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。
********
「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください!
*2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
聖なる歌姫は喉を潰され、人間をやめてしまいました。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ロレーナに資格はない!」
「歌の下手なロレーナ!」
「怠け者ロレーナ!」
教会の定めた歌姫ロレーナは、王家の歌姫との勝負に負けてしまった。それもそのはず、聖なる歌姫の歌は精霊に捧げるもので、権力者を喜ばせるものではない。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる