余命50年のエルフさん

転定妙用

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余命50年のエルフは結婚する。

追放劇のヒロインになったわよ~(ミストグリーン)

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 私は、アサの手を引いてその場を立ち去ってやったわ。その時、私の心の奥底からふつふつと、私は自分が冒険者チームから不当な追放を受けたヒロインだ、これから新たな冒険が始まる瞬間だ、という言葉が沸き上がってきていた。私は、がっくりなんかせず、期待に打ち震えていたわ、わくわくしていたわ。
「ああ、退会届はギルドには私達から提出しておきますからね。」
とアサはちゃんと、一瞬振り返って、はっきり言ってくれた。さすがに旦那様、息がぴったし。
 私達2人の新チーム誕生よ~。

 この三ヶ月、デキるだけ足を伸ばして、行ってみたい、見てみたい、食べてみたいものがある、戦ってみたい、面白い仕事でとかで出向いたけど、やっぱり限られるわ。もっと遠くに行ってみたい。でも、チームは拠点を置いて、という方針だし、私達も其所から出るというのは後ろめたい所があって躊躇していたのよね。追放されるなら、堂々と出ていける分け前だから、考えようでは、良かったのかもしれないわね。私は残れというだったけど、その私達にはメリットがないしね、第一、旦那様を捨てるなんて、エルフとしてはできないわよ。それに、チーム全員とアサを天秤にかけると、アサの方が役に立つし、頼りになるもんね。

「か、カスミ。考え直さない?」
と息せき切って、ダークエルフの女が追いかけて来たわ。翌日、部屋を引き払って、旅立とうと市の城門の近くまで来た時だったわ。
 彼女との仲は悪くはない。だから、来させたのね。
「今帰れば…。それにアサさんのことも考えるって。」
 彼の追放は取り消すとは言わないのね。彼女の顔も、絶対追放するわ、というものだった。アサの方はみなかったし。彼女、アサとも関係者は悪くなかったもんね。それはそれで、面白くないけどね。あ、もちろん、彼女をダークエルフだから嫌っているとかじゃないのよ。世間では、ハイエルフは、他の種族に対して上から目線だの、尊大だのと言われているだけでなく、他のエルフ族、特にダークエルフに対しては、差別意識、優越意識が酷いとされているけど、そんなことはないわ。う~ん、それ本当?と言われると、世間一般のハイエルフ観に近い連中はいるわね、確かに。でも、大抵は、王族ですら、王族といっても人間達のとはちょっと違うけど、そういうことはないわ、私のしるところでは。ただ、ハイエルフとしての家系に誇りを持っているわ、強く。だからと言って、純血種だなんて、ほんの一部を除くとあまり問題視していないわ。人間の近くで暮らすエルフ族ほどではないけど、ハイエルフだって純血種なんていないわ。ただ、ハイエルフの形質が出ている者だけをハイエルフとして受け入れるというだけのこと。それがそれが閉鎖的と思われるのは事実だけど、そうでない者を差別しているわけではないし、親族として認めているわ。ちなみにダークエルフというのは、特定の部族名ではなく、人間の中で暮らしている、傭兵的な集団とかに対して呼ばれているのであるけれど、浅黒い肌のエルフに対しても使われる場合もあって、定義なんてないわ。

「わ、私は反対だったし、他のメンバーだって・・・。」
と申し訳なさそうに彼女は言ったわ。そんな彼女は、くやしいほど可愛いかったわ、抱きしめてあげたいくらいに。
「わかっているさ。リーダーも・・・。まあ、長い新婚旅行に出かけたと思ってくれ。」
「アサさんがいなくなると、困るんだよね、全てで・・・。なのに・・・。」
「俺の代わりと何とかなるさ。カスミとは違うから。」
「ご、ごめんなさい。」
 彼女は下を向いて、来た逆方向に駆けだしていった。泣いていたのかもしれない。彼女には同情するけど、ちょっとむかつくわね。
「君に出ていかれるのは痛いだろうな。」
「あんまり卑下するのは良くないわよ、かえって。」

 彼は、本当はではなく、本当に有能なのである。チームにとっては、また、私も含めたチーム全てのメンバー個々にとって、そして、市民の大半にとって、有能なのである。
 確かに、戦い方も、その全ての能力も派手ではないわ。一発で魔獣をぶっ倒す、例えば大火球を放つなどの能力はないわ。でも正確に、かつ体の中にダメージを、狭い範囲だけど打ち抜く、切り裂く、突き刺すなどはすごいのよね。私の攻撃の時間稼ぎ、陽動、ダメージを広げて動きを鈍らす。それは、私の攻撃で倒した相手にすかさず止めを刺す、私に向かってくる複数の魔獣やら、ゴブリン、オーク、オーガ等を押し返す、数を減らして守ってくれる。この数年間、特に結婚してからは、それが全く一体に近くなっている。
 雑用事や作戦だってそうよ。慎重で、準備をしっかりする、先を見通すけど、どこか抜けているし、迷ってしまったりしている。それを私が、指摘したり、なおさせたり、手伝って補正する。そして、私の言ったこと、提案したことを、うまくいくように立案して、進めてくれる。
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