余命50年のエルフさん

転定妙用

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余命50年のエルフは結婚する。

だから結婚してあげるって言っているのよ。(ミストグリーン)

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 もしかしたら、結婚する相手は私以外を考えているかもしれない、もう決めた相手もいるかもしれない、私に隠れてつきあっているかもしれない、だって30歳だから。人間のだから、ちょっと心配したけど、あっけなく、私が拍子抜けするほど、あっさりと彼は私との結婚を受け入れてくれた。たく~、私が美しすぎるのが悪いんだけど、少しは考えなさいよ、流されやすいというか、何も考えていないというか、いつもいつも。しかも、
「それで、どうして急にお前の方から求婚してきたんだ?」
と今頃言い出して、もう~。私は順々と、私が余命50年しかない身になったことを、その悲劇を説明してやったわ。
「はあ?余命50年?か~。」
 な、なに、その、大したことじゃない、という顔はなによ?たった50年なのよ!
「まあ、俺が余命5年と言われたようなものかな?いや、それ以上かな?」
 なんて・・・まあね、そうだという事にしてあげるわよ。
「ところで、なんで俺なんだ?」
 う、う、そ、それは・・・どうしてかしら?というより、面倒くさいから、手近なところで手を売ったのよ。なんてごまかそうかしら?

「あ、私にもワインを注文してよ。私だけ素面というのは平等じゃないものね。」
 彼ったら、すぐに私のお気に入りで、高級な、ただ高級で一番高いというのではなくて、5番目くらいだけど、本当に美味しいと思っているやつを注文してくれた。
「私のお気に入りを、良く知っているものね、あなたは。だからよ。」
 我ながら、いいセリフだわ。
 彼も珍しく3杯目のホワイトエールを注文したわ。
 乾杯して、一緒にぐっと飲んだ、2人とも。私はちょっとペースが早くなっちゃって、一気に3杯目になって追いついちゃった。やっぱり、恥ずかしいものね。求婚して、受け入れられると関係が、気持ちが、それだけで変わるものなのね。
「分かっているわよね。エルフは、結婚したらお互いに一途なんだからね。浮気なんか許さないわよ。まあ、私の美しさの前には、そんな気持ちは起こらないでしょうけどね。私も、もうあなただけだからね、あなたも私だけよ。」
 つい酔いが回って、ちょっと言い過ぎることを言ってしまった。私より美人なエルフはいるだろうしね。それに、人間はやっぱり人間がいいというところもあるし、蓼食う虫も好き好きというところもあるしね。でも、急に不安になったせいもある、だから、こんな言い方になったのは。
「わかったよ。俺は、美人な年上のお姉さまが好きだからな。20歳年上で、若い、美人妻は大歓迎だよ。」
「ちょっと、まだ50歳じゃないわよ。45歳よ。」
 あ、しまった。いつも40歳そこそこって言っていた。嵌めたわね~。まあ、いいか。

「いい?さっきも言ったとおり、エルフはね、結婚したら、結婚を約束したら、もう相手に一筋なんだからね。あんたも覚悟しなさい。あんたのような地味男でも、まあ頼りになるし、優しいしけど、私は一途に愛してあげるんだからね。あなたも、私一途になりなさいよね。あ、こら、他の女に目を移すな。それだって、十分浮気だからね。」
 私は、声が大きくなっていた。ピッチが、いつもと違って、速すぎて、四杯目を彼が三杯目のホワイト・エールを飲み干す前に飲み干してしまったから、酔いがもう回っていたのだ。私も、後で考えてみると、恥ずかしかったのかもしれない。
「勘定を頼んだんだよ。もう、行こう。明日から、いろいろあるから・・・結婚するんだから。」
 こいつ、あっさり言うな。こういう奴だとは、知っていたけど。
「じゃあ、今日は・・・今晩から一緒よ。」
 私は、もう一人でいたくなかった。彼ったらため息をつきながら、私の手を取った立ち上がった。寄り添って出ていこうとする私達の背に、
「結婚おめでとう。」
「結婚初夜、頑張って。」
「安眠妨害しないでくれよ。」
と声が聞こえた。え?みんな知っている?あ~、いっぱい人のいる、呑んで、食べて、大声で騒いでいる連中の中であったとしても、顔見知りの中で私ったら、あんなことやこんなことを言っていたんだ、とこの時になって気がついたのだ。さ、流石に恥ずかしかったー!彼は、真っ赤なりながら、振り向かずに手を振った。私は彼にぴったり寄り添って歩いた、恥ずかしくて。

 その私達は自分達の宿にはいかなかった。私の部屋に彼を、彼の部屋に私を引き入れることはできない。恋人達が逢瀬を共にする、時々私達も使っている、宿にいったのだ。
 部屋に入ると、初めてではないのに、急に恥ずかしくなって、わくわくして、心臓が高まって、新鮮な気持ちになって、彼に抱き着いて、強く唇を押し付けて、舌をねじ込んで、絡ませた。彼もすぐに応じてくれた。争うように、主導権を取り合うように、舌を絡ませ、唾液を流し込みあい、すすりあい、一層強く押し付け合った。何度も何度も一旦唇を離しては、また重ねあって、強く抱きしめ合った。それは今までになく、執拗な口づけだった。
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