余命50年のエルフさん

転定妙用

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余命50年のエルフは結婚する。

え~と余命50年?(おっさん冒険者、アサヤケエ・サンライス)

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 「おう、久しぶり。久々の実家はどうだった?どうした?何か元気がないな、お前らしくないぞ。何かあったのか?」
 二杯目のホワイトエールの大ジョッキを、テーブルの上に置いて、俺こと、アサヤケエ・サンライス、30歳冒険者、最近はおっさん冒険者呼ばわりされることが多いが、しばらく実家に帰っていたハイエルフの女聖騎士カスミ・ミストグリーンの姿を、かなり混んできている居酒屋兼食堂の中で、クレナイ王国ベニ市の中の、見つけたので声をかけた。
 彼女は、人間の女性からみても長身で、見事な長い銀髪、少し厳しいくらいな印象をあたえるが面長のすこぶるつきの美人で、胸は巨乳ではないが結構大きく、俺から見ると程よく大きく、ウエストはくびれ、お尻は形がよく、ちょうどいい大きさで、両脚はすらっとして・・・つまりは、これまたすこぶるつきのナイスバディの持ち主である。肌はきれいで、つやつや、張りがあり、瑞々しく、臭いもなく、まあ、俺から見て満点に近い女であり、外見は人間的感覚では20歳以上には見えないが、女の色気もムンムンしていて、かつ清楚さも併せ持つ雰囲気。性格は、少し唐突、独りよがり、一方的なところはあるが、いわゆるハイエルフの傲慢さもなく、悪くはない。面倒見もいいし、チームの仲間としては、戦いでも、日常でも頼りになる奴だ。ま、実際は40歳くらいらしいが、本人が言うにはだが、数百年不老に近いハイエルフにとっては、20歳と40歳は同じようなものだそうだ。
 いつもは、颯爽として、つかみどころはないが、にこやかに愛想を振ることを忘れない奴なのだが、今日は何か、しんみりしているというか、そわそわしているというか、なんか元気がないというか、いつもとは違う、違うように俺は感じた。

 その彼女が、俺の向かい側に空く開いている椅子をもってきて、どーんと座って、俺の方をじっと見つめやがった。なんだ?と思ったが、ふと、俺は、"ああ、その時が来たのか。"と思いついた。
 唐突だが、多分意外だろうが、俺はこいつと付き合っているのだ、男と女の関係での意味でだ。仕事の相性がいいということもあったかもしれないが、実力的には一応上級、ベテラン、凄腕冒険者視されてはいるが、長身だが黒髪の地味顔で、マッチョでも、甘いマスクでもなく、巧なもの言いはできない、モテルオーラは発散していない俺に、どこが気に入ったか分からないが、何となく交際することになっていた。とてつもない寿命のハイエルフは、結構気まぐれで、変わっている連中を面白がったり、好奇心で付き合うことも多いから、まあ、その類だろう。そして、それ故に、彼女らは同じ相手と長く付き合うことはない、確実に相手は短い人生を終えてしまう。その後、そいつの重い想いを抱いて生きるのはつらい、つらいらしい、とてつもなく。だから、深入りはしない、ほどほどの関係で終わる、終わらせる。あ、ほどほどというのは、肉体の関係も含めての話だ。俺も、彼女が俺以前に二人と付き合っているのを知っている、同時にではない。そいつらの以前にもいると聞いている。そいつらに比べると、俺はその倍以上に長いらしい。
 しかし、俺にも、ついにその日が来たらしい、いや来たんだ。少し、いや、かなり残念至極無念であるが、なんとなくあきらめもついた。楽しかったよ、次もうまくやれよ、だけど、俺の前で見せびらかすなよ。彼女の場合ではないが、そうした実例をみたことがある。あれは修羅場になったなあ、俺と彼女は並んで、それを見学?した。その後で、
「あんな風にはならないようにするわね。」
「俺も未練がましいことはしないと、約束するよ。」
と約束したような気がする。

 しかし、俺はなんと言ったらいいだろうか?男らしいセリフがいい、格好いいのがいいが、かと言って未練が全くないような言い方は彼女に失礼だし、本音とは言えない、うん、嘘はいけない。虚勢をはるようなのも、男らしくないしな・・・う~ん、どうしよう。
 俺は迷いに迷った。それは、長い時間ではなかったと思う。まず、話しを聞こう。
「どうした?言いたいことがあるなら言ってくれよ。俺達、仲間なんだから。」
とにっこり笑って言おう。別れ話を切り出されたら、寂しそうに笑って、
「わかったよ。寂しい、残念だけどしかたがないな。今まで楽しかったよ。ただ、これからも、いい仲間でいてくれよ。」
 うん、これでいいか・・・いや、これからも俺の背を守ってくれ、が良いかな?これがいいか、いかにも戦士同士の会話、絆みたいで。俺は、二杯目のホワイトエールを一気に呑み込んだ。美味い。俺のお気に入りの、結構高いけれど、こいつは三日に一回、2杯と決めている。美味さを味わうのに、呑み過ぎはいけない。大抵の奴は、安酒を大量に毎日飲み明かす、しかも味もわからずに。高い酒を見栄で毎日飲む奴、こいつらも味など分からない。それに比べれば、俺はより少ない金で、美味さを贅沢に味わっている。まあ、それは俺の思い上がりかもしれないし、単なるケチた゜と言われてもいるらしいが。

「どうした?言いたいことがあるなら言ってくれよ。俺達、仲間なんだから。」
と飲み干したジョッキをテーブルに置いて、おれはにっこり笑って、いるよな、引きつっていないよな、言った。
 彼女は、思い切ったように口を開いた。ついに来たな。急に俺は緊張した。彼女との楽しい時間が走馬灯のように、目の前に浮かんだ。おい、それじゃ、俺が死ぬ直前みたいじゃないか?

「わたしと結婚して頂戴。そして、いっぱい冒険して、イチャラブいっぱいして、せめて曾孫、いえ玄孫までいっぱい作って、そして、そして・・・とにかくいっぱいしましょう!」
と一気にまくしたてた。
「そうか、ざ・・・・え?結婚して・・玄孫?お、おい別れ話じゃ・・・どうしたんだ?」
 後から聞いた話だと、俺は完全に目が点状態だったらしい。
「私ね、50年しか、あと50年しか生きられないの!私、何にもまだやっていないのよ。だから、いっぱい、みんなやりつくすの、たった50年間で。一緒になって、それをいっぱい手伝ってよ。」
 50年?たった50年?俺は、しばし完全に思考停止。
「それとも、私と結婚するのが嫌なの?」
 ドンと両手の平をテーブルに叩きつけて、身を乗り出して、顔を突き出してきた。彼女のきれいな顔が目の前に、そして臭くない息がかかって・・・、俺は思考停止、理性不稼働、本能的に、反射的に、
「はい、謹んで結婚させていただきます。」
と言ってしまった。

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