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悪役令嬢様はとても可愛いのよね

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「どうですか?ここから、この時期の穏やかな海を見ながら、旬の黒鯛などの海の幸をいただくのは?」
 鯛の刺身とか、この地の、元々はわがピール家の領地で私の嫁入りで私の直轄領地になっている、自慢の食材に、わがピール家の料理人、コリアンダー家の料理人、さらにはカーキ家の料理人が協力して、郷土料理をアレンジしたり創作したりした料理の数々が、量が多すぎるという感じを与えることなく、並んでいる。

「とても美味しいですわ。それに美しい海に沈む夕日の美しい光景…も素晴らしいですわ。」
 そうでしょう、そうでしょう、そうでしょうとも、サムロのところや料理より、ずっと上でしょう?
 サムロも、鮭やホッケ、筋子とかの海の幸を、領地の中では温暖な港湾都市の別荘で、景色を見せながら彼女に食べさせたわ。もちろん私も全面協力。山の幸も、山荘や湖畔の別荘とかももちろんしたわ。
 決して幼児帰りしたとかではなく、凛としているけど…と~ても可愛い、可愛い過ぎるのよ~、反則級、犯罪よ~!元パパイ大公妃、ゼファンブル様!絶対、守ってあげるからー!サムロもそう感じているのが、ちょって妬けるけど。

 二度目の化け物女?の襲撃?後、彼女は体を壊しがち。あんな化け物女?が体内で育っていて、それを自力で体の外に吐き出したのだから、当然よね。戦場に取り残されて、私達が保護した頃にも感じた可愛らしさが、どんどんと加速、チート級になっちゃった。なんと噂されても、3人の同居生活は続けるわ。

 ただ、困ったことに、我が弟、現ピール公爵が、私達の関係を理由に自分も、としてしまったこと。つまり、サムロの妹と従妹と…
「だって、どちらかをなんて選べなかったんだよー!」
と二人とも妻にしてしまったこと。その女、2人とも年上なのよね、はというと、
「だって~、どちらを選ぶのとか、どちらかを選んでとか、私を選んでとかなんて言えなかったんですもの。」
 その上、言うに事欠いて、
「姉上だって、義兄上にもう一人を許しているではありませんか?」
「3人でラブラブ生活しているのですから・・・。」
だなんて。こ、この・・・それとこれとは全く事情が違っているんだから!サムロも頭を抱えていたわ。
「嫁になる前に、ピール家の嫁とふさわしいか試させてもらうわよ。」
なんて言えないし、遅いし・・・言ったけど、立ち合ったけど・・・文句を言えるような娘達ではないし・・・。サムロはしかたなく、色々と手をまわして、全てがなんとかうまくいったけで・・・。まあ、王都防衛戦で風呂にも入れずに肩を並べて、互いに背をまかせ合いながら戦っていて、互い臭いに発情して、塹壕の中で愛し合ってしまったらしいとか、和気あいあいというか、笑い話というか、猥談のネタになる程度の話で広がっただけなのが幸いだったけど。ただし、
「あの姉の弟にして・・・、あの兄の妹、従妹にして・・・だものな。」
とまとまるのはどういうことよ。

 そうこうしているうちに、私もゼハンプリュも妊娠、無事出産。お腹の大きいもの同士、お腹をさすりあったりして・・・。産後の肥立ちが悪かったということはなかったんだけど、やっぱり体力は落ちていたから、一年少ししてはやり病で、体調を急速に悪化させて、天上に旅立ったわ。私も、サムロも、慌てて駆けつけてきたガマリア王妃も泣いたわ。

 それで私は、再びサムロを独占・・・にはならなかったわ。

「イチジーク様。だめですよ、そんなに無理をしては。傷が癒えぬうちに・・・。」
「そうですよ、会長・・・。あなたが死んだら、政治、社会改革がとん挫してしまうんですよ、あなたが目指している。ここは、まず養生してですね・・・。」
「二人には悪いとは思っている。でも、静かに休んでいては、それこそ全てが台無しになるんだよ。」
 あ、まさに自由の戦う女神のごとく日々、八面六臂、獅子奮迅して、政治改革、社会改革運動に尽力しているイチジーク様が、過激派の襲撃にあって重体の身になって、コリアンダー公爵邸に担ぎ込まれた。何をかんがえているのかしら?もう少しだけ待てば、彼らの主張する改革が実行されるし、彼女が死んだらとん挫してしまうということがわからないのかしら?

 無理を押して、八面六臂の獅子奮迅をする彼女、その度に倒れかけて、私達の屋敷で手当をしてということが続き、そのまま同居生活が始まっちゃった。あの戦う自由の女神のようなイチジーク様が、サムロと私の前では、ベッドの上も含めて、可愛いなんて・・・このギャップも反則級、犯罪そのものよー!結局流されちゃって、とめられなくなっちゃったわ。その彼女も妊娠、出産。彼女はしかし、病気でとか体力が落ちてとかで他界したわけではなかったわ。どこが不足なのかわからないくらいの憲法の、妥協の産物ではあるけれどこれ以上のものはなかったわ、発布に反発した過激派の暗殺で、かなりの深手を負ってしまった。
 そして数日を経ずして他界したわ、サムロは、彼女の生涯唯一の敗北だと言ったわ。

 一市民としては例外的な国葬となったわ。私とサムロ、弟夫婦?、そしてガマリア王妃も、その多くの市民からの要請があった結果だった。盛大でいて、質素で、穏やかで、厳かで、そして誰もが悲しんでいた、式だったわ。
 私は悲しかったわ。でも、何故か、国葬が終わると、人影のないところで下を脱いだわ。以心伝心のようにサムロも。私は対面で彼に抱きかかえられながら、喘ぎ、動いたいたわ。彼を独占できたと喜んでいるわけではなかったわよ。でも、何故か急に彼を求めてしまったの。
「ごめんなさい、こんな時に。あなたを自分の物だというように・・・。」
と喘ぎながら言う私に、
「俺こそ・・・すまない。君に支えてもらわないとだめなんだ。」
と言って、私の耳元で囁いてくれた。
 私達は、涙を流しながら、激しく動いき続けたわ。私達は、悪魔ね。

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