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外堀埋めて・・・ではなく後ろを固めて

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 王都は、第一王子の誕生を祝う雰囲気で、ほぼ一色だったわ、私達夫婦が到着した時には。それは当然のことではあったけど、今回はいつも以上に盛り上がっていたわ。それと言うのも、ガマリアが、もといガマリア王妃が先々代の時から廃止になっていた公開出産を復活させて、公衆の前で出産したからなのよね。公衆といっても、200人程度、うち半分以上は抽選で、もちろん無料で、残りの半分以上はかなりの高額の寄付金を払って、さらに残りは中流以下の市民から抽選によるものだった。もともとは100人未満だったのが、希望者が多く、増員したけれども、焼け石に水、それで高額な金をだすことを条件としての特別枠をもうけたわけ。その中に、無料のさらなる庶民向け枠も設定した。ちゃんと、金持ち優先ではなく、庶民も増員の対象、村長の姿勢と言っている、見せているわけよね。それで、国の財政難に少しでも寄与するなら、
「私と子供たちも本望ですわ。」
とか王妃が言い出した、心配してオロオロする国王陛下を押し切ったそうだ。さすがに、ブルペリエ男爵の孫娘。
 でも、さすがに、大広間で、もちろんベッドの周囲はカーテンで仕切られて見えないようになっていたけど、人の息で熱く、蒸して、かなり息苦しくて、
「王子殿下のお誕生!」
と侍女が赤子を取り上げた直後に、王妃は失神、気絶したという、さもありなん。絶対、私は嫌よ。王妃にならなくてよかった。公開食事だって、とてもできないと思っているくらいだもの。そういえば、ゼハンプリュは王太子妃になっていた時は、公開食事をしなかつたような・・・気持ちはわかるわよ、でも、やっぱり彼女ではミカエル様を支えられなかった、だめだったということね。

 私達は、国内第二、第三の貴族であり、国王陛下の悪友、王妃殿下のご学友だから、第一王子誕生のお祝いということで、拝謁できたわ。王妃は、出産からさほどひがたっていなかったのに、元気いっぱい動き回っていたわ。小柄、本当は平均的だけど、の体によくこれだけの元気が入っているのか、驚くくらいだったわ。

「ギャー!」
 私が抱くと、第一王子殿下は、この世の終わり、最後の審判が来たかのように泣き叫んじゃった。それが、サムロが抱くと、ケロっとした顔で微笑み、気持ちよさそうに寝息をたて始めた。私どころか、侍女達すら唖然、目が点。あんた、よっぽどこの母子との相性がいいのね、前世で何かやったんじゃないの?こら、ドヤ顔して笑っていない。

 王妃は、私達の表情を呼んで、国王陛下を促して別室に誘ってくれた。もう、尻に敷かれっぱなしで・・・、でも、それでよしと一貫しているところは流石かもしれないわね、国王陛下は。小利口ものの浅知恵、行動よりずっとまし。
 そして、私達は私達の決意、方針を伝えたわ、ストレートに。
「わかりましたわ。私も、国王陛下も最後まで、あなた方の味方ですわ、絶対に。」
とガマリア王妃。国王陛下は、無言、でも、しっかり頷いてくれたわ。こういうしっかりしたところもあるのね、とあらためて思ったわ。けっして妻の言う事にしたがっている、という感じはしなかったわ。

 まずは、一つ目の仕事は終わったわ。私達の目的は、しっかりと自分の味方を固める、確保すること。大公様はね私達の要請を拒否したら、私達への圧力、サムロとコリアンダー公爵家潰しとピール公爵家と私の乗っ取りを、さらに強引進めてくるだろうから。

 進歩派の貴族、再洗礼派の聖職者、進歩派でありかつ宗教的には穏健的な三位一体教会、聖典唯一派、運命論教会の聖職者、高等法院判事、行政官、国民議会議員と接触して支持を求めたわ。

「私が全力で活動した結果、お二人の身分もなくなることになるかもしれませんよ。」
はイチジーク書記官。ますます、その敏腕ぶりは輝いていたわ。招いた夕食の席で、辞職後の全面支援、私達の考えを率直に言った後、厳しい表情で言い放ったわ、声は小さかったけど、重かったわ。なんて言おう?
「武術道場でも開きましようか、そうなったら。」
とサムロ。冗談のような内容を口にしながら、表情は真剣だったわ。
「ふ。」
 イチジーク書記官は吹き出した。そして、笑い出した。サムロも、苦笑したわ。
「君は相変わらずだ。私よりいつも先に行っている、見ている。全く、君には勝てないよ。」
「会長は、いつも先に行き、道を作ってくれます。私は、その道を歩いているだけです。」
「もう・・・君という奴は、本当に。」
 笑いあう二人を見ていると、サムロの頭を思いっきりどつきたくなったわ。

 ブルべリエ男爵にも行ったわ。爺さん、開口一番、
「私はの短い余生も、残りの財産も、我が一代のものは、国のために、全部使わせてもらいますわ。」
と言って大笑い。自分の曾孫と玄孫のためにということだけど、その気迫は伝わってきたわ。さすがねと思ったわ。

 そして、サムロは軍隊内の知人に、私は元学友達に働きかけたわ。ああ、一人は監視だけど。
 それから、学業中の弟も、しっかりと・・・と思ったら・・・。できる限り頻繁に会い、話しをし、手紙も送っていたから、不信感とか唆されるとかは心配してなかったけれど、何故か、すっかりイチジーク書記官に傾倒して、サムロ妹達と仲良くなっていたわ。どちらも彼のことを心配して、サムロが頼んでいたことなんだけど・・・。サムロが苦笑するくらい・・・。年上ばっかり・・・あんたねえ。ちなみに、彼は婚約はしていた、二度。どちらも、美容器で死んでしまって、この時は婚約者はいなかったのよね。でも、狙ってくる女達は多いはず、姉のひいき目ではなく、結構イケメンだし、未来のピール公爵なんだから。悪い女達から守ってもらったと思っておこう。
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