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私だけではだめなのかしら・・・。

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「お嬢・・・公爵様・・・大丈夫ですか?」
 私付きの女秘書官が、心配そうに、私の顔を覗き込むように、言った。そんなに、酷い顔をしているのかしら、私ったら?彼女を心配させたら悪いわね。
「だ、大丈夫よ。さあ、残りの書類を片付けましょう。」
 彼女は心配そうな顔をしていたが、他の者とともに書類の内容を読み上げ、意見を述べて、私の考え、決定を待ち、私が決定すると、それに応じて書類の整理などを始める、それを繰り返した。

 昨年、両親が相次いで亡くなり、私が長男である弟が20歳になるまでピール公爵として、ピール公爵家領に戻って、領地の統治などを行うこととなった。パパイ大公のバックアップでスムーズにことは進んだけど、パパイ大公がピール公爵家を乗っ取ろうとしているとまでは言わないけれど、牛耳ろうとしているのではないかという心配が、私に対する非難が結構あって、ピール公爵家の議会で説明するのに苦労したわ。
 基本的には、行政官と議会が領内をまとめているけど、私が時々かえって政務をとらなければうまくいかない。その間、私はは大公様と離れ離れ。大公様にはやることが多いから仕方がないむ。でも、大公様の方から私のところに迎えに来てくれるわ。うるさい、我が領内の議会に、なれない大公様は不愉快な思いをしているけれど、私のためなら嫌な顔もせず出てくれて、うまく対応してくれている。本当にたのもしい、と感じるわ。
 何故か、大公様を後ろだてにして私に権利を、自分もピール公爵の後見人であるとか、主張して、乗り込んでくる輩がいるのよね。大公様はリップサービスしながら、ちゃんと全て私に伝えてくれているの。不満分子、不穏分子をあぶりだしてくれているのよ。だからね、証拠もすっかり揃えて、しっかりと処分してやっているわ。大公様は、私のことを、本当に思ってくれている、と実感できるわ。ただ、問題議員の処分や進歩派の哲学者の一部の追放とかわ助言してくれるのは困ったものだけど、それとて、私がやんわり断れば、それ以上は求めないし、そういう私の態度が、行動が、私の人気や信頼感、領内、領内だけでなく国内全体で高まっているから、これも私のために敢えてやっていると思うほどよ。

 でも、女秘書官が伝えてきたのは情報には、さすがにショックを受けたわ。とりあえずの、今日の政務が終わると、
「しばらく一人にして。それから、ワインを私のお気に入りのやつを持ってこさせて。」
と言ったわ。そして、執務机にワインの入ったグラスを置いたまま、肩ひじを机に乗せて頭を抱えちゃった。
 大公領の三位一体教会が、私は再洗礼派の心ままで三位一体の信者ではないと宣言したというのが一つ。これは大公様が領内の三位一体教会の大司教とその親分である教皇に働きかけた結果だわ。コリアンダー公爵謀反の訴えやゼハンプリュ夫人が夫の虐待を高等法院に訴えたということが二つ目。これも、大公様が画策したこと。大公様は国王陛下にコリアンダー公爵にとりあえず一旦離婚して様子を見るように命じるように願いでたり、カーキ公爵家に頻繁に出入りしているというのが三つ目。四つ目は、王都の運命論教会に接触しているということ。

「そんなに、あんな女が、ゼハンプリュが欲しいわけ?私じゃ足りないと言うわけ?」
 誰もいないのに、私は悪態をついた、文句を言った。
 悪いとは思うのだけど、良心が痛むのだけど、パパイ大公領内に残している侍女や家臣達に情報を収集させていた。大公公邸で、大公様が家臣達に命じているところに出くわして、密かに聞き耳をたてたこともあった。
 大公様は、ゼハンプリュを、カーキ公爵家のゼハンプリュを、どうしても欲しいねそのためには手段を択ばない、強引な工作を進めている、というわけ。彼女の肉体が、彼女個人が欲しいわけではない・・・ほしいとは思っているわね、美人だし・・・、彼女の持つ背景がほしいのだ。そして、大公様が彼女を得ようと動いている一連のことはね大公様が今動いていることの一部にしか過ぎないということも、うすうす気が付いていたの。

 大公様は、暗躍している、陰謀を巡らせている。確かにそのとおり。でも、それは私利私欲のためではないわ。確かに、パパイ大公家は、王家の跡取りがなければ代わって王位に就く特別な家柄で、代々その自負は大きい。幼い頃から聡明で、カリスマ性も、容姿も、何もかも優れていたアイオン様は、期待されるところが大きかったし、ご自分もそれを強く意識している。
「僕は、国の臣民が、民が、皆幸福な笑顔を浮かべるようにしたいのだ。」
という心からなのよ。
 和平は締結されたとは言え、長い戦争で国は疲弊し、王室、政府の財政はひっ迫している。それは、四代前の国王陛下が招いたもの。王室の責任、聡明で、名君となるだろうパパイ大公に王位を譲るのが当然なくらい。加えて、連年の天候不良での不作、それに伴う不況、それにより激しくなったいる新旧勢力の複雑な対立の激化。目先の対策、取り舵で汲々としている王家。パパイ大公様なら、大胆に全てを解決してくれるわ・・・きっと。そのためには、あらゆる手段が許されるわ。ゼハンプリュ、彼女の実家である保守派の巨頭であり、国際派貴族であるカーキ公爵と王族の血が流れているとこで、是非とも必要なのはわかるわ・・・理屈では。

 でも、王家は王位にしがみついているばかり。コリアンダー公爵は、その王家と結託している。だからこそ、アイオン様は、彼の追い落としを図っている。
 ゼハンプリュはサロンにしてもそうだけど、父から与えられた領地では、保守派とは思えない領地経営をしているわ。上は進歩派の思想家から農民にいたるまで集まってきているほど。口で進歩派を気取っているのではなく、堅実にそれを実現していた。それは、コリアンダー公爵の全面的バックアップがあってのこと、彼は前面協力しているわけ。これは、アイオン様の目的を妨害している、少なくとも結果としては。

 それでも、私は彼女がアイオン様の妻となり、私とアイオン様の愛を競うことになることを嫌がる以上に、あの彼女を変えてしまったコリアンター公爵との暮らしを壊したくないと思ってしまっていた。同時に。何故か嫉妬のような気持ちをもってしまったけれど。どうしたらいいのかしら?
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