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しっかり大公様の腕をつかんでいないとね!

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 すごいスキャンダル。王太子ミカエル様は、国内第一と第三の貴族を敵にまわしちゃったわけよね。婚約破棄されたゼハンプリュ嬢が、やっぱり婚約破棄されたコリアンダー公爵サムロと手をつないだまま、王太子とガマリア嬢に背を向けて、衆人環視の中、歩き出しちゃった。
 あなた、何しているの?大公様の手を離しちゃだめよ、という声がしたような気がした、どこからか。自分が愛されているという幸せに酔い、他人の不幸に対する蜜の味を楽しんでいる私の心の中で。すると巧みに、私と組んでいたいた腕を外して、婚約破棄されてコンビのところに歩み寄るパパイ大公様を追ったわ。

「我が領地に来てはいただけませんか?」
「お言葉ありがとうございます。でも、私には所要がありますので、失礼いたしましす。さあ、コリアンダー公爵閣下いきましょう。」
 私は、大公様とゼハンプリュ嬢のやり取りを、大公様の腕にしがみつくようにして聞いていたわけ。私をゼハンプリュは一瞬睨みつけ、私はコリアンター公爵サムロと視線をかわして小さくうなづいていたのだけど、どうしてかはわからなかった。大公様は、私が腕にしがみついていることを、その時初めて知ったらしいわ。驚いて、怖い顔をしたけど、すぐにいつもの顔に戻ったわ。
「大公様。どうされたたのですか?ま、まさか。」
と不安でいっぱいになった私が問いかけかけると、すかさず抱きしめてくれて、
「心配するようなことは考えていないよ。」
と耳元で囁いてくれた。私は、嬉しくて、恥ずかしくで・・・ちょっとした疑いはなくなっていなかったけれど。
 抱きしめられる力が強くて、少し期待しちゃって、怖くなったけど、結局パパイ大公様は、私と私の両親達との夕食後、しばらく私とお話してくれて帰って行かれた。残念に、少しだけよ、思ったけど、やっぱり結婚前の、婚前の・・・はやっぱりはしたないし、結婚まで女は純潔、処女であるべきよね、と私はその晩納得しようとしたわ。

 それから三日後、パパイ大公様の領地に行って結婚式を挙げるための準備に忙しかった私のところに、ピール家の邸宅に大公様は訪れてくれた。
 その間、色々あったわ。私の方は今言ったことで忙しかっただけだけど、あの寝取られコンビ、ゼハンプリュ嬢とコリアンダー公爵サムロは、何とあの後、学園の庭園の一角で一晩中全裸で抱き合って、次の日にはカーキ公爵家に結婚の報告をして、国王様にも、その後、結婚を報告、そして結婚式を挙げてしまったというのだ。王都は、王太子の婚約破棄とあの二人の結婚騒ぎというより電撃結婚話でもちきり、盛り上がっていた、熱狂的に。

 な、なんてはしたない二人、と思ってしまったわ。しかも、あのゼハンプリュ嬢が哀れもない状態になって・・・なんて信じられないわ。でも、結婚式まで挙げちゃったんだから・・・、無理やりと言うわけではないわよね。カーキ公爵夫妻の前で、結婚を許してと泣いて懇願したとか、国王陛下の前に目の下にくまを作って参上したとか、もう溺愛同士、イチャイチャベタベタ状態で甘え放題だとか、あのゼハンプリュ嬢がといったところね。あんなことやこんなこともされた、したとかの話も・・・侍女達が仕入れてきた話だけど・・・なんか関係ないのにむかムカして、面白くないと感じるのはどうしてかしら?二人とも私とは関係ないのにね。

「ゼハンプリュ嬢が、婚約破棄されて悲観に暮れて、憔悴状態だったのをいいことに、それを利用して無理やりなどと、なんと卑劣な男だろうか。無理やりだろうな、可哀想なゼハンプリュ嬢。最後は、薬でも使っているのだろうが、本当に腹が立つな。」
 大公様は、私の前で憤慨しまくっていた。私は、大公様がゼハンプリュ嬢のことを、それほどまでに同情するのが面白くなかったわ。
「でも、あのコリアンダー公爵も、突然婚約破棄されたということですから。」
とつい言ってしまった。
「それが理由になるのか。まともな男なら、彼女を励ましこそすれ、無理やり自分の物にするなどはしないものだ。」
 少し怒ったように、声を少し荒げて私に言ったわ、大公様は。でも、突然のことで私が少しショックを受けて黙ってしまったのを見て、慌てていつもの素晴らしい笑顔を浮かべて、
「つい彼女に同情してしまって。悪かったよ、ごめん。」
と謝ってくれたわ。その後は、私が少しすねていたと思われたのか、彼女の話はしなかった。この翌日には、サムロとゼハンプリュ嬢は、コリアンダー公爵領で、盛大な結婚披露宴を開くと言って、王都を出たわけ。

 私は、その数日後、大公様の領地で結婚式をあげるために、大公様に伴われて王都を出発したわ。その旅立ちの前半で、ゼハンプリュとサムロの結婚披露宴の話を聞いたわ。大公様は、その話を聞かれた時、不快だという顔だったし、私も何故か面白くなかったわ。どうしてかしら。

 そして、大公様が、王都を出る直前まで、カーキ公爵のところに足しげく通ったという話が聞こえてきたわ。そのことには、どういうつもりなのかとか、私は大公様には訊ねなかったわ、まるで私が嫉妬しているかのようだし、何となく怖かったから。
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