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お、女と密会していたの?わ、私?私は・・・

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「これは、パパイ大公閣下。せっかくお出でいただいて、留守にしており申し訳ありません。」
と夫が、サムロが入ってきたのである。
 助かったと思う反面、なんか後ろめたいものを感じちゃった。べ、別に後ろめたいものなんか、これっぼっちもないんだけどさ。
「いやいや、私が勝手に訪れたのが悪かったのだ。気にしないでくれ。」
 簡単に、私達にじっくり話した王太子夫妻の悪意と自分が私達の味方であるということを、彼にも言って、
「もう暗くなったし、妻が心配するだろうから、これで失礼するよ。」
と立ち上がった。
「おもてなしもできず申し訳ありません。」
と頭を下げる私達3人、そして私の侍女と彼の従者ともう一人の他3人も頭を深々と下げていた、に、
「私は、コリアンダー公爵家、ピール公爵家、デュマの味方だから、どんなことがあっても、信じてほしい。」
と言って私達3人の手を握った。
「では、さらばだ。近いうち、また会おう。」
と背を向けて、その直前サムロに、
「私のデュマを大切にしてくれたまえ。」
 ちょっと、大公様、よして下さい。そして、さらにつぶやくように、サムロだけに向って?
「しばらくの間。」
 ど、どういうことですか?
 そして、行ってしまったわ、一人で。大胆な大公さま。でも、私は冷や汗がどっと流れたわ。あなた、変な目でみないでよね。ここは目を背けないでいないといけないわね。はい、信じてね、彼の目を見つめたわ。

「お、お兄様。お義姉さまは、なにもやましいことはなさっていませんわ。」
 お、義妹、ありがとう。本当にいい娘だわ、あなたが義妹だったことを神に感謝するわ。
「私が来る前は、わかりませんけど。」
 あ―、裏切り者、後が悪い―!ええと、何とか胡麻化さないと・・・いや、やましいことはまったくないんだから正直に言えば・・・とにかく反撃してやろう。
「そういえば、あなたはどこにいってらしたのですか?急用ができたらしいと言って行ってしまわれましたけど?」
 彼はすぐには答えず、従者の隣に立つ家臣の若者に、端正で、いかにも真面目そうな家臣に視線を向けて、
「今回だけだぞ。お前は、コリアンダー公爵家の家臣だ。私やコリアンダー公爵家、領民、国以外に働くことは許されないし、許さないからな。行っていいぞ。」
 お~怖い顔をして・・・、彼はホットした表情をして、直立不動の姿勢を取って敬礼して、背を向けて駆けだした言ってしまったわ。あれ、そういえば彼、も覚えが・・・学園の先輩でたしか・・・なんだったっけ・・・あー!
「ま、まさかゼハンプリュ様と、み、密会していたの?何をしていたのよ、あなたこそ。」
と私は叫んじゃった。もう、とっちめてやるわ。
「え~と、私はこれで・・・。後は、ゆっくり、お二人で・・・。」
 あ、逃げるな、と思ったら、あっという間にいなくなっちゃった。あ、あんなところに・・・。彼女は索敵部隊に配属しようかしら、そこが適任ね。とにかく、と私はサムロを睨みつけてやったら、彼は生意気にも、開き直って、睨み返してきたわ。う~、どうしてやろうかしら。
「あー、悪いタイミングでお邪魔してしまったようですね。もう一度出直そうか?」
 いかにも困ったという声がした。イチジーク書記官だった。行政官の外歩きの正装をしていたわ。でも、なんで彼女が?
「いえ、また会長を出直させては申し訳ありません。妻も交えて、お話わお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「私はかまわないよ。奥方が同意されるのであれば。」
「私は構いませんわ。」
 ちょっと、また、って言ったわよね?どういうことかしら?いいわ、徹底的に修羅場にしてあげるから、感謝しなさい、覚悟してよね。

 まあ、イチジーク書記官とは、あの家臣が重要なことができたと彼を呼び、案内する後をついていったサムロがで途中で出会って、用事があるのだがという彼女に対して、後で天幕に来てほしいと言ったということだった。その家臣は、ゼハンプリュの推薦と要望でサムロの、コリアンダー公爵家の家臣として就職した恩義から、サムロを連れてきてほしいという彼女の頼みを断れなかったのだ。

「まず、お二人のことを解決していただいて結構ですよ。私は、待ちますから。」
 イチジーク書記官は可笑しそうに言ったわ。私達は、三角形で座っていたわ。
 私達2人は侍女達が持ってきた夕食、雑穀パン、シチュー、ハム、チーズの簡単な食事、イチジークさんは弁当持参で、それを食べていた。本当に用意がいいというか、先を見通して動いているというか。とにかく、がつがつ食べながら、動いてお腹が減っているのよ。
「あいつに連れられていったら、ゼハンプリュ様がいた、馬車の前に椅子とテーブルを置いて、座っていた。そして、私を向かいの席に座るよう言われた。」
 彼女は、自分と大公様のサムロへの好意と王太子夫妻の彼への悪意を説明し、今後自分達を頼るように言ったという。さらに、私との関係を聞いて、彼が互いに溺愛状態で幸せですよ、と言ったら、よかったわね、大公様も喜ぶわ、私達はあなた方夫婦の味方だからね、と答えたという。彼女の、その時の顔は、何を考えているかわからなかったと、サムロは言ったわ。
 何を言いたかったのかしら、何を思っていたのかしら、彼女は。

「それで君は、大公とどんな話をしたのか言ってくれるよね?」
 何、その甚振るような目は?私もですって?そ、そんなはずはないわよ、きっと、そうよ。私は、包み隠さず、言ってやったわ。その顔は?なによ?疑わしいという目は?そうでない?

「割り込んで申し訳ない。そろそろ、私の番でよろしいでしょうか。」
 私達は、既に暗くなっている中で、ランプのほの暗い光のもとで、話をすることになった。
 彼女の用事の一つとは、王太子夫妻は好意しか、私達にはない、ということと絶対味方であるということを信じてくれということを伝えることだった。ご夫妻は来賓の為の宴で忙しいのだ。だから、彼女にその伝言を頼んだのだ。
 
「もう一つは、個人的なことだ。」
 彼女は最近の状況を説明した。
 そして、国家、社会の改革は不可欠であり、ミカエル王太子はそのことをよく分かっているし、進めている。だが、それは斬新的とはいうには僅かづつな進み方、まあ微温的な改革でしかない。それでも、反対は強く、彼は常に揺れている。それを支えるのはガマリア妃、というより彼女の方がずっと積極的で、ずっと迷いかなく、一貫として、信念があるくらいだった。彼女は、そのことをオブラートに包むように、慎重な言い方で淡々と説明した。
「会長は、国民主権、普通選挙、中流階層が大半の国を目指しているのですか?」
「その言葉に、ご夫妻とも、不安など感じないのですか?」
「私のサロンには、夫の話相手にも、そのような方がおりますから。」
「だとしても、遠いこと・・・。犠牲がでないようにとは・・・。」
 遠い目だった、イチジーク書記官は。その話は、彼女の方から打ち切ったわ。そして、わへいが締結された隣国との間で、海外領土の領有争いが、また始まった。再び戦争は起こしたくないが、譲歩できる状況にない。議会も、紛糾しているし、パパイ大公が軟弱と非難キャンペーンをしそうだからという。
「戦争は考えていない。交渉は続けるが、安易な妥協はしないとはっきり表明して、我慢強く進めるしかないですね。」
 なによ、それ、何の解決にもなっていないじゃない?でも、以外にイチジーク書記官は破顔一笑、暗くてよく見えなかったけど、多分、して立ち上がった。
「サムロ殿。コリアンダー公爵閣下ありがとうございます。また、助けていただいた。」
「な、何も私はしてませんよ、いつもそうですよ。」
 な、なに、この雰囲気は?近くの町の宿を取っていて、馬車も待たせてあるというイチジーク書記官に、サムロも私も、無理やり護衛をつけさせて見送ったわ。

 これからとっちめてあげるから覚悟しなさいよ。だんな様。 


  
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