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軍事演習、私もでるわ~。

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 年に1回、必ずしもかならずというわけではないけど、王都近郊の平原で国軍の大演習が開催されるの。収穫が終わる晩秋に実施されることが多い。戦争で開かれない年が続き、それも終わったのに、昨年も開催されなかったわ。
 国軍全部というわけではなく、各軍団から選抜された将兵、部隊で実施されるとはいえ、多い時は数万人に達する時もある。今回は約2万人。空砲とはいえ、銃砲の発射音はすさまじく、特に重砲のはすごいわ。騎士隊の突進も、歩兵部隊の銃剣突撃も、かなり圧巻よね。
 目的は、国軍全体の連携を体験し、連帯感を造成することなどもあるが、国民に国軍の威容、ひいては王家の威厳を高めること、国民の一体感の造成もある。国民へのサービスでもある。王家の公開食事や公開狩猟と同様である。
 他方、民衆にとっては大イベントであり、見世物、楽しみ、ある意味祭りであるのよね。かなりの数の民衆が、お弁当持参で見学に集まり、それを目当ての屋台が出るのよね。そのことも考慮して、その場所を設定し、見える様に演習を計画するのよね。
 もちろん、王家や高位の貴族達や選ばれた各界の代表者、そして外国大使や賓客の見学する場所は、別に設定されているけど、これまた、彼らを見るのが民衆の楽しみなのよね。特に王家の皆さまは、そのことを意識して、よりよく見られるように気を配っているのよね。
 特に今回は、良く見える様になっていて、さらに特別に、身分の、年齢の垣根を越えて抽選で選ばれた男女とともに、王太子夫妻がともに見て、一緒にお茶を飲み、お菓子をつまんでいるのよね。ガマリア妃は、あの天使のような笑顔を振りまいて、男女年齢身分に応じて話しかけたりしたり、笑わせたりしているわ。ミカエル殿下も、こういう場には映えるわね。この外見は最高よね、本当に神は過ぎたる二物を与えてくれないわねと思わず思っちゃった。う~ん、二人の服装も野外で、移動が多いから、動きやすいという服装だけど、一見質素ながら、趣味は悪くない、優雅さも兼ね備えたエレガントな、かつ最新の流行も取り入れているもの。ガマリア妃よね、仕掛け人は、絶対。彼女、さりげなく、ちゃんと、その場にいる面々だけではなく、遠くから見ている民衆にも愛嬌を振りまき、優雅さ、美しさをみせるように演出しているのよね。さっすがよね~、彼女、あの曽祖父さんの血を色濃く引いているって感じね、侮れないわね。あ~、しかも、ミカエル殿下が映えるようにしている。なんとなく、殿下に親しみを感じてくるわね。頼もしさは感じないけどね。無理にそんなことを求めないで、一番効果的なものを選択したのね。
 ラズベリー男爵は、離れたところによく見える特別席、それでいて目立たない、を作って珈琲を優雅に飲んでいるわ。曾孫のそばにいたら、彼女の迷惑になることを知っているのよね。流石に単なる成金野郎じゃないわね。あの曾孫にして、この曽祖父ありね。あら、逆だったかしら。
 パパイ大公様も、賓客として招かれて、王族と並んだ席にすわっているはず。私のことも見ていてくれたかしら?ゼハンプリュと一緒、並んでだろうけど。

 これにコリアンダー公爵こと、夫のサムロも参加しているのよね。軍務を五年間勤め、公爵という地位から、26歳だけど少佐の地位にあるけど、国軍を退役しているから部隊を指揮しているわけではないから、国軍部隊を率いての参加は無理。でも、ちゃ~んと部隊を率いて、歩兵隊を、参加しているのよね。コリアンダー公爵は、数少ない、軍といえる兵力を持っている貴族だから、自分の家臣達を率いて参加しているの。彼が国軍将校の肩書をもっているから、なおさらなのよね。本来は、貴族は全員、なにがしらの兵を引き連れて参加するものだったんだけど、もう時代は個々の騎士がかけ参じて、槍を連ねて、個々に奮戦する時代ではないから、敢えて参加する者はいないし、参加されても迷惑でしかなくなっちゃったのよね。参加するために、多少ともの人数の部隊を率いている貴族は、極わずかになってしまったわ。それも名実ともに、自分の軍、実態のある、を率いてというのは例外中の例外、コリアンダー公爵家とピール公爵家だけなのよね。

 ピール公爵家ももちろん参加、コリアンダー公爵家に遅れをとってはいけない・・・とはいえ、国軍経験者がいないのよね、困ったことに、現在、長男である弟はまだ11歳、男女とも、親戚中探しても。家臣達の中にはいるから、彼を代理にということにできるけど、コリアンダー公爵家が当主自らなのに・・・。私がサムロと結婚しているからといっても、その下で合同というのは悔しいというわけ。私達のあの夜から、仲良くコリアンダー家の男女達と交際している我が家の家臣達も同様な気持ち。私だってそうよ。
 と言うわけで、両家は合同で部隊編成して、私も加わることになったわけ。つまり、ピール家は私が指揮するわけ、国軍経験とか言ってられないの。
 軍服を着て、私はサムロとともに、というより彼と肩を並べて、身を潜めて銃剣突撃の号令を待っているというわけ、今。あくまで、ピール公爵家の部隊は私が率いているのよ、うん、名実ともに。
 これを聞いて、サムロの叔母達や妹たちも参加、負けじと私の親戚の腕に覚えのある女達も参加することになっちゃったわ。まあ、誰も、行軍に、駆ける、匍匐前進だとかでも遅れをとらないでいるから感心感心。もちろん私もそうよ。
 お~、突撃ラッパ。銃砲の響き、馬よいななけ!、勝どきよーってね。いくわよー!目標の、敵の本陣の丘に突撃、占領。演習の締めくくり。
 一つの狂乱の宴が、幕を下ろしたということかしら。
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