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焼きもち焼きなんだから

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「それで彼女たちと・・・前カノと他人の奥さんと同期生と、何を楽しく話したのか、きっちり話してくれるんでしょうね?」
 私は、鯛の干物をほぐしてから、一片を口に運びながら、サムロを睨みつけながら要求した。でも、美味しいわ、地元の食材と料理は、やっぱり。今日の夕食は私の領地の海岸地域のそれで統一している。王都で手に入る食材を使った料理が私達の食事が中心だけど、その方が安くあがるからだけど、たまには互いの領地から送られてきた、取り寄せた食材を私達の料理人が腕を競って料理して出すことがある。大抵は、それが交互にしている。得られるタイミングによるので、厳密にはそうはしていないけど。
「君も、昔の思い人との楽しい話やイケメンの他人の夫と嬉しそうに語り合った内容を、詳しく教えてくれるんだよね?」
 こ、この焼きもち焼き!嫉妬深いったらありゃしないんだから。そんなに心配ですか、あなたの美人妻のことが? 
 彼は、穏やかだけど、微笑んでいない顔で鯛のムニエルをもぐもぐしていたわ、美味しそうに。

 王太子夫妻とパパイ大公様と妻のゼハンプリュが、私のサロンを訪れてから数日の間に、私達はそれぞれのサロンに招かれたわ。
 パパイ大公夫人のゼハンプリュのサロンは、王都の洗練された、豪華だけど、けばけばしくはなく、上品な飾り釣りで、出されるお菓子、食事、飲み物も同様だったわ。圧倒されるような感じ、彼女の性格?というか彼女に対する印象かしらがよく現れているという感じだったわ。全然北方らしさがないじゃないの?妻として、パパイ大公領の、北方の文化なり、趣味なりを生かして、伝えるようにすべきじゃないの?やっぱり、彼女はわかっていないのよね、大公のことが・・・なんて思っちゃったわ。それが何か、優越感を感じちゃった。

 芸術家達一流で演奏も、絵画も素晴らしいけど、伝統的、正統派、貴族趣味的すぎるってとこ。詩人が語る即興の詩だってそうよ。
「静かで、優雅でしょ?」
「ええ、そうですね。素晴らしいサロンですわね。」
 ゼハンプリュの言葉に同意したけど、なんだか私の所は、騒々しい、騒がしい、下品だとでも言いたいのかしら?ふん、あなたの所は面白さやわくわく感がないし、教養もなにもかび臭いわよ、と言ってやりたくなっちゃった。
 私達二人は、人が集まっているところから少し離れたところに並んで腰を掛けて、甘いワインを傾けていたわ。その座る長椅子は、装飾の素晴らしい、いかにも名品といえるものだわ、流石にカーキ公爵家。
「あなたには悪いことをしたと思っているわ。」
 彼女は、本当に悪かったという表情で私を覗き込んだ。やっぱり美人だわ、と思っちゃった。見事な金髪で、ちょっと厳しすぎる印象だけど、圧倒されるような感じのする・・・、魅力されちゃうわね、女でも。でも、なんて答えよう?
「もう過ぎたことですから・・・それに、今が幸せですから・・・。今を幸せだと思うようにしています。もうねあの日から毎日が楽しくて・・・楽しく過ごしていますわ、二人で。」
 うん、嘘は少しも入っていないわ。本当のことばかりだもんね。
「私のことを恨んでいない?」
「今では、全くそんなことはないと言えますわ。」
「それを聞いて、安心したわ。コリアンダー公爵は良い人ですから・・・。」
 あ~、嘘ではないわよね?あの時のことを考えれば、憎らしくて、悔しくてならないけど・・・恨んではいないわよ・・・いないわよね?でも、最後の惜しかった・・・というような表情は?

 その時、歓声が聞こえてきて、私達はそちらの方、中庭の方を見たら、夫のサムロが大公の家臣達と剣の試合を始めているのが、見えたわ。パパイ大公様が言い出したらしいわ。
「あらあら。」
「もう・・・。」
 彼の家臣達、男も女も、このサロンの空気に耐えられなくなったのね。
「王太子も、王太子妃も、あなたやコリアンター公爵に良い印象を持っていませんわ。気を付けて・・・。でも、私達はあなたの味方ですわ。そのことを忘れないで。」
 唐突に私の両手を自分の両手で握り締めて、その気になれば、舌で私の顔を嘗められるくらいの距離に顔を近づけて囁いたの。
「はい。」
と言ってから私は慌てたわ。これ以上付き合っていたら、パパイ大公派に取り込まれちゃう?それは不味いのよね。
 私は立ち上がって、
「夫に加勢してきますわ。コリアンダー公爵家の嫁であり、ピール大公家の長女の実力を見せてあげないと・・・。少し失礼いたします。」
と彼女を振り切るように、あわてて駆けだしたわ。

 動きづらいドレスで、剣で立ち会うのは、思っていたより動きずらかったけど、夫に加勢して、二人でパパイ大公の家臣を圧倒してやったわ。
 試合が一通り終わったら、
「君が彼に連れていかれてしまって・・・彼に奪われて・・・私は悲しかったよ。」
「え?パパイ大公様が私を婚約者ではないと言われて、ゼハンプリュ様を連れていかれて・・・。」
「違うよ。傷心の彼女を慰めようと連れて行っただけなんだ。君も、てっきり側にいてくれていると思い込んでいたのだよ。いないことが分かって驚いて探させたのだが、・・・全ては遅かった。とても、残念で・・・悲しかったよ。今でも、あの時誤解されないように・・・君の手をもっと強く握っていれば・・・と悔やんでいるよ。」
「は?大公さま?」
 そんなこと信じるはずはないでしょう?でも、心が揺れたわ、本当に。もし、立ち去らなかったら・・・なんて、一瞬妄想してしまったわ。そんなことはないのよね、大公様は私を探して我が家には来なかったし、追いかけた私の両親に会おうともしなかったんだから。

 その後、私達のところにやってきたサムロに、
「私は、君を決して恨んでいないよ。」
「はあ?」
「君が、私がゼハンプリュ嬢を慰めている時に、誤解したデュナを連れて行ったことは、君も傷心の身だったということで同情さえしているくらいだよ。デュナを幸福にしてくれたまえ。ミカエル殿下は、君のことを妻の前の男だと不快に感じているようだし、君が恨んでいると恐れている。王太子妃はね、君が自分を恨んでいると怯えている。私は、そのようなことはないと言っているのだが、わかっていただけないようだ。私は君達の味方だから、いつでも頼ってほしい。」
「私とデュナは幸せにしていますから、そのようなことは決してありませんよ。」
 大公様は、黙って彼と握手したそうだわ。その時、周囲に、聞こえる範囲に、何人もの男女がいたのに、何故そんなことを?
 別れ際、
「彼女が幸せだと?わかっていないな。」
と呟いたのが、サムロの耳に聞こえたそうだ。

 その後、北方の各部族の部族伝統の衣服をつけた男女の一団が現れて、中庭で見事な馬乗馬ぶりや音楽、踊りを見せてくれたわ。サプライズ的で、強い印象を受けたし、楽しんだけど、何かちょっと唐突に入れた、見せものというような印象を受けたわ。どちらの意向かしら?私なら、なんて思っちゃった。ゼハンプリュは、北方のことはそんなに知っていないだろうし・・・。

 さらに、帰り際、ゼハンプリュ様がサムロの所に駆け寄り、
「ミカエル殿下達は、あなた方に悪意をもっているから注意して。大公様は、あなたの味方だということを信じてね。」
 彼女らしからぬ、何と言っていいかわからない表情だった。
「そして、お二人で幸せにね。」
とさっきの表情を消して、いつもの顔で私達の手を握り締めて言ってくれたわ。
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