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全員集合・・・しちゃったら?

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「いえ、お嬢様・・・奥様、あまり派手過ぎる飾りつけは、我が家の・・・ピール家の武門としての姿を損なうのでは・・・コリアンダー家の者達に、遅れをとっていると思われては・・・。」
 私の侍女長の文句に、私は、いつからコリアンダー家の脳筋頭に毒されたのよ、この裏切り者、と心の中で叫びたくなっちゃった。そりゃ、私も武門の意地で負けたくないし、質実剛健な家風は私達の方が本家本元よ、と言いたいけど、限度があるわよ。私のサロンの飾りつけがあまりに質素だったら、それはそれでいいんだけれど、一応、私達は王都にいるんだから、王都の華やかさに従わないと、サロンのお客に馬鹿にされちゃうでしょう?

 新婚旅行?が終わり、旅行の最中にもやってはいたけど、やっぱりそれなりな溜まってしまった領地の政務を何とか片付け、今後の領地経営を話し合い、新婚旅行の見分をもとにしてね、方針を定めて、行政官たちや議会と話し合ったわ。そういう諸々のことを一段落させてから、私達は王都に旅立ったわ。自分の領地に引きこもっているわけにはいかないのよね、何時までも。ある程度は、王都にでて、過ごさないと。

 そして、私はサロンを開くことになるわけ。大抵は、近い人達や芸術家から思想家、あるいはとにかく評判の男女を招き、酒も、食べ物を出しながらも、そこでの会話や議論を楽しむ。お気楽にやっているのではないわ。自己顕示欲のためにやっているのもいるけど、芸術家などのパトロンとして、彼らを世にだすことも貴族のステータスだし、情報交換や関係づくりのための重要な役割もある。だから、あまり頻繁に開くとお金がかかっちゃうから、ある程度の回数、規模も最小限にしたいけど、って私ってケチなんだろうか、人が敬遠するようになっては困るから、目も耳も鼻も舌も喜ばせなければならないから、おしゃれに、流行を取り入れて・・・していかないといけない。他のサロンにも、返礼も兼ねて、招かれるようにならないといけないし、相応に行き来がないとだめなのよね。ああ、他のサロンに行くのも費用が掛かるのよね。

 そして、私達の結婚記念日でもあるから、そこそこ大きく、華やかにしないといけないからと、新しく買ったのではないけど、母上の取って置きをほじくり返して見つけてきたものなのよ。大きくはないけど、周りが宝石で飾られた時計。それを部屋の中央に飾ろうと思ったのに・・・、それなのに~。このおばさんは、私の子供の頃から・・・こんなだったけど・・・。
「いいんじゃないか?このくらい華やかなものがあった方がいいしね。」
 夫のサムロが笑いながら助けに入ってくれて、彼女も引き下がってくれたわ。でも、私ではダメで、サムロならいいのよ、あなたは私の子供の頃からの侍女でしょう?

 それに今日は、王太子夫妻とパパイ大公夫妻も来るんだから、いつもとは違うのだから・・・。あ、別にパパイ大公が来るからと言って、張り切っているとか、わくわくしているとかではないのよ。あ、あなたこそ、ガマリアが来るから嬉しがってはいないでしょうね?

 そうこうしているうちに、客達がやってきた。あくまで、両夫妻はお忍びで来るのだから、そこそこ大きくしているにしか過ぎない。それに、サロンに飛び込みでくるのは、よほどのことでない限り失礼ですからね。
 そして、ご丁寧なことに二組の夫婦はほぼ同時にやってきたのよね。
 この二組を同時に呼びたくはなかったのよね、本当は。それに、結婚記念なのよ、今日は。確かに、私達が結婚したのは、この二組の夫婦のせいて゜はあるけれどね。
 でも、向こうから出席したいといってきたんだもの、断れるはずないじゃないの。

 案の定、ゼハンプリュ大公妃は、ガマリア王太子妃を睨みつけるわ、睨みつけるわで・・・。周囲が冷気で包まれたわ。その上。私を汚い蠅のような目で見たのよ。ちょっとね、私ははあんたの被害者なんだからね。さらに、サムロにも・・・なんか嫉妬しているような・・・・そんな権利ないんじゃないですか?自分の犬のようにでもおもっているのかしら?大公様はというと、私と腕わ組んで、迎えたサムロを不快だという目で見たわ。私の方は、元気でいるようだな、俺のものだぞというような感じで、思わず複雑な悪寒が走ったわ。捨てといて、そういう態度はないんじゃないですか?でも、私のことを、そういう形でも思っていてくれたことに、何故か少し嬉しくなっちゃったわ。サムロには絶対ばれないようにしないと。
 でもね、サムロね、あなた、ガマリアとどういう視線をかわしているのよ。恨んでも、怒りを感じてもいない。二人の視線て、久しぶりにであった幼馴染同士が恋人と連れ立っているのを互いに見て、戸惑っているようじゃない。あとで、とっちめてあげるから。ミカエル王太子様はというと、なんだか能天気な顔をしていると思ったら、おろおろしたり、馬鹿のようで、純情のようで、人がひたすら良いような人ね。とにかく、私達二人は、何とかうまく4人を邸内に、広間に案内したわ、することができたわ、びびりながらも。もちろん、サムロも、わかるわよ。

 私やサムロが見つけた音楽家の演奏や芸術家の作品の紹介、哲学者たちの論争などが、私のサロンで演じられたわ。料理も、両家の領地から特別に取り寄せた、南と北の海の幸、山の幸、郷土色が強いけど、王都で精錬された技術も加えた料理もだしたし、我が家秘蔵のワインやコリアンダー家自慢の長期醸造のビール、さらにお茶、それも色々よ。

 他のお客ともども称賛しながらも、火花を散らしている女が二人。それから、おろおろしている男が一人。でもね、サムロ、なんで、あなたはパパイ大公様とにらみ合っているのよ。
 そして、
「遅くなって、申し訳ありません」
と登場したのが、イチジーク行政官。助かったわ~。その颯爽とした、堂々とお姿でこの雰囲気をかきみだして頂戴。そこで、私の夫と見つめ合っていない!私が睨みつけているのに気が付いたのか、サムロがさりげなく誘導したから、彼女もすぐに役割を理解して、動き出してくれたわ。

 あれから半年、国王陛下から完全に国政を丸投げされて、進歩的政策に本格的に、微温的、姑息と非難されているけど、舵をきって右往左往ながら、周囲を混乱させながらも、ミカエル王太子は一応、あくまで一応だから、一貫して進めていたわ。それもあって、国内は喧々囂々、それにパパイ大公様が批判を強めているから、王家とパパイ大公家との対立は先鋭化しつつあったわ。まあ、喧々囂々の原因のある程度は、パパイ大公様が扇動しているようだけど、サムロが言うには。カーキ公爵家は、保守派の巨魁でもあるし、ゼハンプリュの意志もあるんだろうけど、大公様を全面支持というところ。私達はどうしようか?まだ、両勢力からは、何の働きかけもないけど・・・。
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