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選択肢は一つだけだけど・・・(サムロは思う)

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 今後の予定は、当面の予定だが、それは決まっている。新婚旅行だ。二人の時間を過ごすため、風光明媚な地や華やかな都市、国内外国、を巡る、それではない。新婚旅行という名で、両家の領地をまわるのである。ついでに、その周辺も訪問するが、他国領も、それに含まれてもいる。もちろん風光明媚、華やかな都市、見て、聞いて、食べて、飲んで楽しむものは、その過程にある。

 だが、あくまでは今後の領地経営のためである。両家の領地は、かなり広い、かなりの自治権をもった地域である。単なる個人の領地というのとは違う、他の大部分の貴族のとは違うのだ。議会もあれば、地方議会も、ある程度の自治権を持った都市もあり、村々には選ばれた村長、村議会などもある。そこへの、顔見世興行みたいなものだ、俺達夫婦の。それに俺がコリアンター公爵家を継いで、まだ一年ちょっとにしかならないから、この機会にしっかりと印象付けておいた方がいい。

 議会はあり、行政官、秘書官もいるが、やはり領地の経営、両家のそれは統治にも近いから、領主である俺達はしっかり考えていかなければならない。さらに、領地全体のことは公的な関係だが、私営地的な直轄の荘園などもあり、勿論行政官はいるし、そこの自治組織もあるが、より領主としてやるべきことは多い。まあ、その私営地的なところも、領民やその議会を無視できないし、領地全体の議会が関与してくるが。

 だから、今後の為に、互いの領地をどのように統治していくか、二人で考えるために、見て、聞いてまわるのである。周辺も訪れるのは、脅威にも、助けにもなる相手との関係づくりであり、ある意味偵察である。
 ところで、彼女、ピール公爵家領がまるまる俺達のものになるわけではない。ただ、彼女が生きている間、というより俺の妻でいる間はピール公爵家領のかなり広い部分が、あくまで彼女所有ということで、与えられることになっている。彼女が離婚あるいは死去した場合は、即ピール公爵家に返還されることになる。これは、結婚によりある貴族がどんどん大きくなることを防ぐための制度である。
 それであっても、そこそこ広く、飛び地になっているが、経営は彼女、つまり俺達でするわけだから、ちゃんと見てまわり、方針を立てなければならない。

 領主となった以上、立派に、善政だと、少なくとも思われる程度には、ちゃんと統治、経営したい。税金などは、可能なかぎり多く欲しいが、それで領民が困窮しては元も子もない。領民が、日々豊かになっていると、少なくとも思えるようにしなければならない。

 豊にして、どうするのだ?どうするつもりなのか?まあ、それはそれでいい、それは領主としての義務でもあるからだ。

 今から考えなければならないのは、俺達の保身である。俺達がいなくなっても、領民達には大した影響はないだろう。コリアンター公爵家、ピール公爵家がなくなっても大した影響はないだろう。まともな奴なら、善政は期待できなくとも、我慢できる程度の統治あるいは経営してくれるだろう。かえって、軍事貴族だと、頑なにそれを守っている両家がいなくなれば、そのための負担がなくなり、かえってせいせいするだろう。俺達でなければだめだ、と思わせるようにするつもりでもあるが。

 デュナは自意識過剰、自惚れだと言ったが、俺はガマリアにとって、抱きしめてキス、濃厚に舌を絡ませたが、そこまでだったとはいえ、前の男である。男というものは、女に対して「自分が初めての男である」ことを求めがちだ。ミカエル王太子は、結構親しい関係だったから知っているが、気のいい、少し軽薄ではと思えなくもない男である。わりと進歩派、進歩派に好意を持っていて、微温的ながら王太子領で、その改革、統治を実践している。国政段階でも、それを進めようとしているが、反対する勢力、無責任に背中を押そうとする勢力、さらには無意味、旧態依然と切り捨てる勢力などの板挟みになって、結構苦悩しているようだ。清濁併せ持つ度量も、確固とした信念、意志も、粘り強いところもない、わりと善良だが、頼りない男である。
 まあ、俺も彼のことを馬鹿にできるような男ではないけれど。
 そんなミカエル王太子だから、ちょっとしたことで、俺を不快に思い、不信感を持つことは考えられる。

 パパイ大公アイオンだ。彼は、天秤に図って、即デュナを捨てて、ゼハンプリュを取った。それでも、デュナは彼の女だ、彼の頭の中では。その女を俺が奪い、犯した、と思ってもおかしくはないだろう、そんなの言いがかりでしかないが、男というものは、特に自信のある男は、とかくそう考えるものだ。しかも、軍事貴族であるピール公爵家をかすめ取ったのだ。
 パパイ大公家は、王家に跡継ぎがいない場合は、代わって王位に就くことになっている家柄であり、幼い頃から文武の才が優れていて、カリスマ性も、指導力も、威厳も、美貌も、聡明さも、清濁併せ持つ度量も、人並みをはるかに超えている男である。しかも、パパイ大公家の思いを強く背負っている、意識していると噂されている男である。俺に不快感、不信感どころか恨みをもってもおかしくはない。軍事力など比べようもない、我がコリアンター公爵家ではあるが、目の上のたん瘤のような存在でもあるから、ミカエル王太子に俺への不信感を焚きつける可能性もある。ミカエル王太子とガマリアが、自分とゼハンプリュに悪意をむけている・・・そうは考えないだろうな、でも、大義名分の一つに利用するだろうが。
 デュナはというと、
「大公様はそんな人じゃないわ!」
と抜かしやがったが。まったく、そんな奴がお前を、あんな形で捨てるはずがないだろう。それを、恋人を、思い人を守ろうとする顔をするな。う~ん、俺、嫉妬したのかな?

 ガマリアはというと、捨てた男とはいえ俺の妻になったデュナには面白くない感情をもっているだろう。彼女憎しで、俺まで巻き込むことになっても、彼女への不信感をミカエル王太子に吹き込むかもしれない。これは、俺の自惚れかな、やっぱり。
 ゼハンプリュは、ガマリア、そしてミカエル王太子憎しで、パパイ大公アイオンの行動には全面協力だろうし、彼の前カノの、その上、まだアイオンが俺の女視しているデュナは腹立たしい存在だろう。

 しかしだ、コリアンター公爵家とピール公爵家がしっかり提携していれば、王家としても、やはり潰しづらい。気の弱い、善良なミカエル王太子は、そう指摘されると腰砕けになるだろう。パパイ大公としては取り込んだ方が得策だと思うかもしれない。ガマリアやゼハンプリュにとっては、俺達は二の次だろうから、あまり強くは排除は求めないだろう。

 そこまでいって、俺とデュナは一致した。デュナは、結構ちゃんと状況分析もできたし、理解することもできた。なかなか大した女だと思った。叔母上達が妹たちが、母上が、合格点を与えただけはあると思ったね、あらためて。彼女は、こいつこんな顔もするんだと言うほどの妖しい悪女の微笑みを浮かべやがった。ゾクゾクとしたね、その笑顔を見て。怖くなった、怖気づいたというのではない。なにか好ましい、頼りになるというか、心が躍るようなものを感じた。
 その夜は、上半身を密着させず、下に、上に互いの顔をじっと見ながら、俺は彼女の喘ぐ顔に満足しながら動いた。彼女も同様に激しく動いた。
 最後は、彼女を上にして、彼女の尻を両手でつかんでこすりつける様に動かして、唇を貪りながら終わった。これで、悪魔の契約を済ませたというように・・・そう感じた。
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