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盛大に結婚式一段目よ!

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 厳粛な教会での結婚式、結婚披露宴のみのはずなんだけど、式もしてもらいたいと教会や関係者、見たいと親戚筋から一般の領民たちからの要望で、二度目だけど行うことになったの。三度目もしないといけないようね。あちらも、コリアンダー公爵領でも、あちらがやったのだからと言うだろうから、拒否できないでしょうね。
 でも、二度目であっても、わくわくとして夥しい視線を感じながらも、教会での結婚式は花嫁衣裳で入場し、司教様からの祝福を受けて、誓の口付けをする、そして教会の外に出て、ブーケを投げるまで、やっぱり特別な何かを感じるわ。祝福を受ける時も口付けをする時も、二人とも緊張して、震えてしまったもの。
 
 そのまま、馬車でピール家の本邸に。微笑んで、二人して、群衆に手を振る。市民、領民たちからの祝福の歓声を受けるわけ。ピール公爵家全体の了解を受けたという感じがするわ。本邸で、その後着替えて、花嫁衣装から、ピール公爵家軍服の礼装を、女でもズボン姿で、着こみ、今度はバルコニーで、手を振る。サムロは、コリアンダー公爵の軍服の礼装姿。私達は元々戦時には、国王陛下の下にかけ参じて戦うことで、戦う義務を負う事で領地を与えられたから、女子供でも常に騎士、軍人としての姿をしめさなければならない、領民にもそれを示すことが領主としての威厳以上に正当性を示すことになる、正統性を承認してもらうという方が正確かもしれないわね、からこういう場でもその姿をとらなければならないわけ。それは、国の貴族なら、法服貴族でない貴族のかなりの部分は同様なはずなんだけど、こだわって、固執して、維持しているのは、我がピール公爵家、コリアンダー公爵家の他にいくつあるだろうか、考えてみると。カーキ公爵家は、国第一の貴族だけど、ピール公爵家もコリアンダー公爵家もそのことを認めているけど、ずっと前からこのようなことは止めてしまっているわ。私兵というのはいるけど、どちらかと言うと警備、護衛、領地内の治安警察のためで、私達のように、いざという時のための騎士団、軍隊というものではないわ。それが普通なのよね、私達の方がずっと古臭い、カビの生えた伝統にこだわっている田舎者なのかもしれないわ。そうは思ってもね、私自身もそのことに誇りを持っているし、臣下も領民も同様。
 そして、披露宴。食べ物や飲み物の大盤振る舞い、領内全体でのお祭り騒ぎになるわけ。
「みんな。食べてる、呑んでる、飲んでる、楽しんでいる?私の結婚を祝ってね!」
といったところね。
 周辺の貴族たち、都市の有力者も、親戚筋も知事達もやってくるので、そうした人々には、私達夫婦は愛想よく挨拶しなければならないけど、これが大変。幼馴染の女達との姦しい会話もしないといけない。
「コリアンダー公爵と結婚と聞いて心配しましたが・・・・田舎者には見えない、洗練された人で安心しましたわ。」
くらいなところが大半だったけど、
「コリアンダー公爵家となんて・・・本当によかったんですか?」
と心から心配する、善意だからさらに悪い、のまでいて、流石に、コリアンダー公爵家は田舎者だけど、他人から言われるとむかっときてしまうわ。
 中には
「コリアンダー公爵家の邸宅に行かれたとか・・・。熊とかイノシシとか出て来ませんでしたか?」
と本当に怯えながら、話す夫人もいた。はては、
「その日の食のために、熊が担いでいる鮭を横取りしたり、落としたのを拾うために山深くいかなければならないそうですね?そういうことは、断った方がいいですわ。」
と忠告してくれる老婦人までいたわ。大きなお世話以上に、私はどういうところに嫁入りさせたいのよ、といいたくなっちゃった。
 でも、女達はまだいいわ。男ども、剣だ鉄砲だというのは、これまた実際に立ち会ったり、競い合って理解してくれたけど、やっぱり何のかんのといっても、実際の戦場の軍務を五年間務めたサムロには一目おかなければならないものがあるのよね。その点では、少し鼻が高くなっちゃったわ。う~ん、私も脳筋かな~?ち、違うわよね!
 でも困ったのは、
「どうして、コリアンダー公爵家という田舎者となんだ!」
「今からでも、遅くはないよ!」
「コリアンダー公爵家なんか格下じゃないか。」
などという幼馴染、一応、あくまでも一応であって、面識がある程度の周辺の子爵、伯爵家の二三男達。酔った勢いでまくしたてて来る。なにが格下よ、あんたら、何様のつもり?まるで、私があんたらと関係があるようじゃない?ピール公爵家に婿入りを狙っているだけじやないの?あ、サムロ、誤解しないでよね。以前はパパイ大公様一筋で他の男なんか関心すらなかったんだから。焼きもちなんかしないでよねそんな目をしているわよ。
「おお。コリアンダー公爵。お久しぶりです。」
とドスの効いた声が聞こえてきたわ。国軍の部隊司令官、歴戦の将校で有名な男だったわ。サムロは、彼の部下として軍務についた時期もあったらしいわ、彼との話では。彼はサムロを褒め、大したことはできませんでしたよ、苦笑するサムロ、それを叱る元上官。何か既視感が・・・。
 そうこうしている内に、不満分子は連れていかれたわ。まあ、サムロはまあまあの評価を得て、よい結果が残ったわ。

 明日から、二日間は、ピール公爵家領にいることになっているから、できるだけ見学させてやるわよ。自分の田舎者ぶりを自覚しなさい。
 ちなみに、プルペリエ男爵から結婚祝いが届いたわ。かなりの額だったわ、流石だわ。その使者は、主の、
「あの、小生が両家に商売でお役に立てさせていただく件よろしくお願いします。」
と伝えてきたわ。しっかりしているわね、分かっていますとも。両親にも了解をとりつけたわ。

 夕方になると再度のパレード。先祖伝来のパレード。公爵家代々の伝統ある甲冑をつけて、私達は馬車に乗って、サムロは同様にコリアンダー公爵家代々の甲冑をつけて、露天の馬車に乗って、肩わ二人で抱き合って、観衆の歓呼の声に手を振るの。まるで、見世物ね。少し気持ちもいいけど。それでもって、狂乱にも似た宴がお開きになるわけ。

 さすがに疲れて、バタンキューとは、でもいかなかったわ。
 甲冑姿で、互いの甲冑を説明しているうちに、どちらからだったかしら、落ちのびてということがご先祖様にもあったとかの話になって、彼も私も、宴の興奮が残っていたのか、
「これからどうしましょう?」
「王家にも、パパイ大公家にも、カーキ公爵家にも恨まれてしまっては、もうどうすることもできなかった。」
「え?ええ・・・。」
「すまない、僕が力足らずで・・・。」
「そんなこと・・・。最初から運命だったの・・・。最後に口付けを。」
なんて言って、唇を合わせたら熱くなってきて、彼ったらすかさず下を脱がせて・・・私も同じことをして・・・、下だけひゅうひゅうしているというのも、物凄く卑猥でエロチックで、彼は
「本当に形のいい、ほどよい弾力のあるお尻だね。」
とか言いながら、鑑賞するように、嘗めまわすように眺めて、かぶりつかれるように下を攻められて・・・結局、組んずほぐれつ愛し合い、念入りに声を響き渡らせちゃったわ。
 でも、彼の設定が、とても怖くて、それがより快感を感じさせたけど・・・それはどうでもいいけど、どういうことかしら?ひどく心配になったわ。後で、ゆっくり聞いてみなくちゃ。

 そして、翌日中には、どういうわけか、聞こえるはずもないのに、
「昨夜の声が刺激になって、領内は来年子だくさんだ。」
なんて噂が流れて・・・。
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