5 / 9
〜赤の炎〜
Again.0 先生とわたし 4
しおりを挟む【思い出】
その日の夜、わたしはまたユキヤの夢を見た――
高校二年になったばかりのわたしとユキヤが一緒に下校している時の夢。
電車で二駅の距離を、わざと電車に乗らないで、ゆっくり歩いて帰った。
二人でどこかに出掛けるのも楽しいけど、特別なことがなくったって、一緒にいられるだけで嬉しくて……
そこんとこユキヤは忠実でたくさん会話する人だったから、わたしはいつも幸せだった。
その日のユキヤは苦手な英語の授業であてられて困っていた時に、わたしが助けてあげなかったことを根にもって拗ねている。
わたし達は同じクラスだった――
「だいたいさー、自分はちゃっかり数学の宿題を丸写ししてたくせに、俺が困ってる時は助けてくれないなんてさー……」
ぶーぶーと文句をたらして口を尖らせているユキヤ。
わたしはそんなユキヤも可愛いくて大好きなんだよな~なんて思いながら、ついつい笑って対応してしまう。
「だからー、悪かったって言ってるじゃない。リーダーの予習ちゃんとやってなかったから訳に自信なくて。ユキヤに恥かかしちゃ悪いかなーって思ったんだって。これでも気を利かせたつもりだったんだよ~?」
「嘘つくなよ、俺より英語の成績いいくせに……どうせ俺が困ってるとこ見て楽しんでたんだろ。そーゆーのドSって言うんだぞ!」
「うん、まぁ、そこは否定はしないけどさ」
「否定しようよ! 人の不幸を楽しむとかそういう意地悪やめてお願い!」
早くもユキヤは涙目になって訴えてくる。
わたしはその顔がけっこう好きで、それ見たさについつい小さなイジワルをしてしまうんだってことに、ユキヤは気付いてるみたいなのに繰り返す。
喜怒哀楽が激しくて、中学の時からずっと影でわたしのことを慕ってくれて……
付き合うようになってからは、わたしのことが〝好きだ〟っていつも全力全身でアピールしてくれるユキヤ。
拗ねた顔も涙目になった顔も怒った顔も可愛くて大好きなんだけど、やっぱり一番好きなのは、あの太陽みたいな彼の笑顔だから……
わたしはユキヤに機嫌を直してもらいたくて謝り続けてた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる