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②天使のような王子様 / 5,940文字
3. 地上に舞い降りた天使(sideフェリクス)
しおりを挟む長い前髪で目元を隠しても、僕の醜さは隠しきれない。
人前に出ればこうなることは分かっていたけれど、化け物を見たように騒がれるのは苦痛だった。僕だって好きでこの顔に生まれたわけじゃないのに。
そんなことを思いながら、ジッと座って耐えていた。
(最初の挨拶の時間が過ぎたら退席しよう。それまでの辛抱だ。僕なんかのところに挨拶にくる人はいないだろうけれど……)
僕のせいでアーノルドのところへの挨拶も途切れてしまい、なかなか近寄ってくる人がいない。母上は気に入った子を選べば良いと言っていたけれど、僕自らが婚約者探しをするなんて無謀だと思う。いくら王子といっても、僕なんかに選ばれた令嬢は不幸でしかない。
(慣れれば平気だとアーノルドは言うけど、女性は男よりも繊細だから無理なんだ……)
そんなことを考えていると、可憐な声が聞こえてくる。
「フェリクス殿下にご挨拶申し上げます。ミニョネット侯爵が長女、レティーシアでございます。以後、お見知りおきを」
視線を上げてみれば、目の前にカーテシーをする令嬢がいた。勇気を出して近づいてきてくれたことに感動しつつ、僕は慌てて「顔をあげてください」と答えた。
「……ッ!」
「…………!」
驚いたように目を見開いているレティーシア嬢。僕は僕で彼女のあまりの美しさに目が離せなかった。
黄金の髪に雪のように白い肌、目鼻立ちのあっさりとした、完璧な美貌の少女。まるで地上に舞い降りた天使のような姿に、僕はすっかり言葉を失っていた。
「……殿下」
背後から近侍に声をかけられてハッとする。僕が何か言わなければ、彼女は下がることができないのだ。
分かっているのに頭の中が真っ白になってしまい、なかなか言葉が出てこない。その間もレティーシア嬢は僕から目線を外さない。それどころか微笑んでくれて、僕は信じられない気持ちで高揚した。頬が熱い。
「……今の時期はシェリーローズが見頃なのです。楽しんでいってください」
やっとの事でそう言うと、レティーシア嬢が思いもよらぬことを言う。
「もし、ご迷惑でなければ、殿下もご一緒しませんか? わたくし、王宮の薔薇園は初めてなのです」
「え? いや、僕の案内で良いのですか?」
「是非お願いしますわ」
照れたように頬を染めて、はにかんだ笑顔を浮かべるレティーシア嬢。まるで本当に心から僕と一緒にいたいと望んでくれているみたいで……僕の心臓は高鳴った。
エスコートをするべく手を差し出すと、そっと愛らしい手が乗せられる。
何がなんだかわからないまま、僕はレティーシア嬢を薔薇園の方まで案内するのだった。
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