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②天使のような王子様 / 5,940文字

1. 転生したら糸目なおデブが美人な世界でした

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わたしの名前はレティーシア・ミニョネット。原因不明の病にかかって生死の境を彷徨い、なんとか持ち直したばかりの侯爵令嬢。歳は十歳である。

母親はすでに他界していて、父親に溺愛されて育ったわたし。だけど甘やかされすぎて我儘になったということもなく、賢く淑女らしく育った。ミニョネット侯爵自慢の娘。

そんな事をベッドの中でつらつらと考えてしまうのは、わたしが前世の記憶を思い出したからだった。
前世のわたしも女性だったことは確かだけど、自分の名前や家族のことは思い出せない。ただ、日本という国で育ったことによる価値観と常識を思い出した感じだ。

というのも、周りの景色が一変してしまったのだ。

今までとびきりハンサムだと思っていたお父様が、小太りな中年オヤジにしか見えず、ちょっと不細工だと思っていた侍女がそこそこの美人に見えるのだ。
目覚めたばかりのわたしはしばらく混乱していたが、この頃はだいぶ慣れてきて、気持ちも落ち着いてきた。

そしてわたしは今日、ようやく覚悟を決めたのだ。
これまで美少女だと持て囃されてきた、己の顔を見る覚悟を!



「メアリー、手鏡を持ってきてくれるかしら」
「はい、お嬢様」

わたしは渡された豪華な手鏡の取手を握りしめ、恐る恐る覗き込む。

そこには豊かな金髪の西洋人形のような少女……ではなく、一本書きしたような細い目に、小さな鼻、薄い唇にぷっくりとした頬の、こけしのような自分がいたのである。

(なんというミスマッチ……!)

天蓋付きのベッドや、ふりふりのネグリジェの似合わなさに絶望する。しかし、この世界では今のわたしのような塩顔でぽっちゃりな体型が好まれる。正真正銘、ここでは美少女なのだ。違和感しかない。


     ※  ※  ※


慣れというのは恐ろしいもので、三ヶ月もするとわたしは清潔感あるおデブなお父様が好きになっていた。笑うと無くなる目も、最初は変態ちっくだと思っていたのに、今では可愛らしく見えるほどだ。

お父様の愛情深さは本物で、わたしの意志を優先し、さまざまなことを学ばせてくれたのも嬉しかった。
わたしは一人娘だけれど、跡継ぎにはなれない。婿を取るか、養子を取ることになる。だから必要なのは淑女としての教育だけなのだけれど、この世界のことが知りたくて、わたしは勉強をしたがった。そしたらお父様はレティーシアが望むならと、家庭教師をつけてくれたのである。

今は経営学が楽しくてハマっている。計算は得意だし、様々な管理体制を学ぶのが楽しい。いつかわたしも事業を起こしてみたいと思った。そうして領地の役に立つことが出来たら嬉しいと思う。



時々少ないお友達を呼んでお茶会をしたり、読書をしたり、勉強をしたり、絵を描いてみたり、温室を作って珍しい薬草を育ててみたり。
引きこもりがちながらも好きなように暮らしているうちに、気付けば二年の月日が経っていた。

わたしは十二歳になって、身体つきもすっかり大人っぽくなっていた。そこだけは西洋っぽく発育が早いらしい。
ぽっちゃり体型なのは相変わらずだけど、周りからはますます美しくなったと誉めそやされている。

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