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第二章
【五】星矢ー月子と白馬のお殿様②
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校長が?
ブロロロロロ。
「あれは生徒会長の声だわ」
【今から第二グラウンドにて、萩野月子さんイベントが開催されます。高等部生徒の見学は無料。グラウンド内は進入不可、観覧席にお座りください。ブブセラや太鼓、ホイッスルは不可。温かなヤジは可】
やけに細かい注意事項だな。ヤジはいいのかーい。
「わぁ。イベントなんて久々ね!」
「れなちゃん争奪バトル以来だね!」
「相田君、鬼がちしたもんね!」
腐女子トリオよ。下剋上カップルの誕生した、イベントの説明プリーズ!
おっと、坂の上からゴルフ場で見かける五人乗りカートが走って来たぞ。運転席には紀文先生、隣に校長先生が見えた。門の手前で停止すると紀文先生が叫んだ。
「萩野君、第二グラウンドで君のイベントが発生した。カートに乗りなさい」
「紀文先生、私は人を待ってます。後じゃダメですか」
「菅(すが)建設とブルーレングループの会長夫人直々の申し込みだよ。さあ、乗って!」
「先生、俺も行きます」
海人が門をくぐると、校長先生がアザラシスマイルで頷いた。顎がたぷたぷと揺れている。
「さあ、乗りなさい」
Uターンして坂を上がるカートを、俺と腐女子トリオ(蜂谷、多賀城、気仙沼)、アジャール王子一行が小走りでついて行く。石油王が知ったら、学園が潰されるんじゃないか?
第二グラウンドは北側の校舎裏にあった。観覧席にはどんどん生徒達が集まっていた。
数にして約百人。高等部生徒の約八分の一だ。
「アジャール王子、帰らないのか?」
キラキラ王子がいると日本男児は霞んでしまう。月子ちゃんが王子に惚れたら、海人は泣くだろう。俺は追い出し作戦を決行だ。
「イベント、ミタイ」
『アジャール王子、会食に遅れます』
側近が母国語でスケジュールを伝えても、王子はガン無視だ。
「王子、遅れたら大変だろ」
今度は俺も無視しやがった。
『知事と市長がアジャール国との姉妹都市を望んでいます。国際的な友好の架け橋になるのが王子のお役目です。何卒……』
『あとどれくらい時間がありますか』
俺が第一側近のハーバルに尋ねた
。
『三十分後には出発しないと、渋滞につかまります』
「じゃあ三十分後に俺が見送るから、帰るんだぞ、王子」
「ワカッタ……」
渋々頷く王子の様子を、周りの生徒が驚愕の表情で見つめていた。
「アラブの王子に命令してる……」
「あいつ、何者なんだ?」
カートから下りた校長と萩野兄妹が朝礼台へ近づいていく。そこにはマイクを持った生徒会長と小型ビデオで撮影する副生徒会長が。俺たちは観覧席に座ってイベントが開始されるのを待った。生徒会長がザワつく生徒をゼスチャーで黙らせる。
【みなさま、これより萩野家と菅家のプレお見合いイベントが始まります!】
「「ピュー、ピュー」」
「「いいぞ~」」
「プレお見合いイベントってなんだ~」
「どうでもいいから、相手はどこだ~」
まるで温かくないヤジが飛び放題だぜ。月子ちゃんは校長が指さす方向へ顔を向けた。
グランド整備車両が出入りする北門が開いて、外からお見合い相手が……。
「ヒヒ~ン」
「「!」」
パッパカ、パッパカ。パッパカ、パッパカ。
蹄の音も軽やかに、白馬に乗った王子様が……いや、三日月の兜を被った鎧武者が。
「伊達政宗だわ!」
「かっこいい~!」
「あ、あの人たちは?」
白馬の後ろから徒歩で走って来る面々が。鎧武者が二人に旅人が一名、着物姿の男性が一名に、くノ一が一名……。
【みなさま、白馬の伊達政宗公に扮するのは、見合い相手の菅氏です。そして政宗公を応援するのは伊達★武将隊の伊達重実公、政宗公の従兄弟です。そして腹心、片倉小十郎。歌人、松尾芭蕉。政宗の命を受けてサンファン・バウティスタ号に乗った支倉常長、そして伊達の隠密くノ一です!】
「「おおおおお~」」
月子ちゃんの見合い相手は、政宗公フェチなのか?
ブロロロロロ。
「あれは生徒会長の声だわ」
【今から第二グラウンドにて、萩野月子さんイベントが開催されます。高等部生徒の見学は無料。グラウンド内は進入不可、観覧席にお座りください。ブブセラや太鼓、ホイッスルは不可。温かなヤジは可】
やけに細かい注意事項だな。ヤジはいいのかーい。
「わぁ。イベントなんて久々ね!」
「れなちゃん争奪バトル以来だね!」
「相田君、鬼がちしたもんね!」
腐女子トリオよ。下剋上カップルの誕生した、イベントの説明プリーズ!
おっと、坂の上からゴルフ場で見かける五人乗りカートが走って来たぞ。運転席には紀文先生、隣に校長先生が見えた。門の手前で停止すると紀文先生が叫んだ。
「萩野君、第二グラウンドで君のイベントが発生した。カートに乗りなさい」
「紀文先生、私は人を待ってます。後じゃダメですか」
「菅(すが)建設とブルーレングループの会長夫人直々の申し込みだよ。さあ、乗って!」
「先生、俺も行きます」
海人が門をくぐると、校長先生がアザラシスマイルで頷いた。顎がたぷたぷと揺れている。
「さあ、乗りなさい」
Uターンして坂を上がるカートを、俺と腐女子トリオ(蜂谷、多賀城、気仙沼)、アジャール王子一行が小走りでついて行く。石油王が知ったら、学園が潰されるんじゃないか?
第二グラウンドは北側の校舎裏にあった。観覧席にはどんどん生徒達が集まっていた。
数にして約百人。高等部生徒の約八分の一だ。
「アジャール王子、帰らないのか?」
キラキラ王子がいると日本男児は霞んでしまう。月子ちゃんが王子に惚れたら、海人は泣くだろう。俺は追い出し作戦を決行だ。
「イベント、ミタイ」
『アジャール王子、会食に遅れます』
側近が母国語でスケジュールを伝えても、王子はガン無視だ。
「王子、遅れたら大変だろ」
今度は俺も無視しやがった。
『知事と市長がアジャール国との姉妹都市を望んでいます。国際的な友好の架け橋になるのが王子のお役目です。何卒……』
『あとどれくらい時間がありますか』
俺が第一側近のハーバルに尋ねた
。
『三十分後には出発しないと、渋滞につかまります』
「じゃあ三十分後に俺が見送るから、帰るんだぞ、王子」
「ワカッタ……」
渋々頷く王子の様子を、周りの生徒が驚愕の表情で見つめていた。
「アラブの王子に命令してる……」
「あいつ、何者なんだ?」
カートから下りた校長と萩野兄妹が朝礼台へ近づいていく。そこにはマイクを持った生徒会長と小型ビデオで撮影する副生徒会長が。俺たちは観覧席に座ってイベントが開始されるのを待った。生徒会長がザワつく生徒をゼスチャーで黙らせる。
【みなさま、これより萩野家と菅家のプレお見合いイベントが始まります!】
「「ピュー、ピュー」」
「「いいぞ~」」
「プレお見合いイベントってなんだ~」
「どうでもいいから、相手はどこだ~」
まるで温かくないヤジが飛び放題だぜ。月子ちゃんは校長が指さす方向へ顔を向けた。
グランド整備車両が出入りする北門が開いて、外からお見合い相手が……。
「ヒヒ~ン」
「「!」」
パッパカ、パッパカ。パッパカ、パッパカ。
蹄の音も軽やかに、白馬に乗った王子様が……いや、三日月の兜を被った鎧武者が。
「伊達政宗だわ!」
「かっこいい~!」
「あ、あの人たちは?」
白馬の後ろから徒歩で走って来る面々が。鎧武者が二人に旅人が一名、着物姿の男性が一名に、くノ一が一名……。
【みなさま、白馬の伊達政宗公に扮するのは、見合い相手の菅氏です。そして政宗公を応援するのは伊達★武将隊の伊達重実公、政宗公の従兄弟です。そして腹心、片倉小十郎。歌人、松尾芭蕉。政宗の命を受けてサンファン・バウティスタ号に乗った支倉常長、そして伊達の隠密くノ一です!】
「「おおおおお~」」
月子ちゃんの見合い相手は、政宗公フェチなのか?
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