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第二章

【三】星夜ー赤い絨毯と短期留学生③

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 生徒会長からマイクを受け取った生徒が、ざわめく観衆に向かって手を上げる。

「生徒会広報の阿部です。お二人の結婚を祝う生徒会主催のコンサートが、卒業式翌日に大ホールで開催されます!」
「「きゃー!」」

 ふたたび大地が揺れた。

「定員は100名。チケットはWebで今夜20時から販売されます。ゲストは地元出身のダンスユニット『伊達男』のみなさんです。なお、チケット価格は三万円」

「「キャー!」」
「「買う、買う~!」」
「たかっ!」
「若生君。イベントで大ホールを借りるのは凄く高いんだよ。警備や食事に経費がかかるからね」

 紀文先生が背後の窓から俺に声をかけてきた。

「OB主催の同窓会やダンスパーティーもここで行われているよ。卒業したら、ぜひ参加してくれ」
「伊達男はニャニーズと同レベルのイケメンズだもん、チケットは秒で完売するわね。ほら、生徒会長達の後ろに並んでいるのが、『伊達男』よ!」
「そ、そうなのか」


 中庭には、生徒達の歓声に手を振ってるイケメンが。拍手を受けながら、一同が校舎へと消えていった。

「なんだか、海人の方がイケメンだぞ?」
「ブロマ~ンス!」

 月子ちゃんが叫んだ。

「へ?」
「いえ、ゴホゴホッ」
「萩野さん、素晴らしいかけ声だわ」
「蜂谷さん、ありがとう」

 なにか腐女子結界が発生してるのか?

 パンパン。

「さあ、二年三組は乗降ロータリーに移動するぞ」

 紀文先生が手を打って生徒を促した。


 階段を下りて南側の昇降口に歩いて行くと、鮮やかな赤い絨毯が目に飛び込んできた。

「わぁ、久々に登場したわね」
 月子ちゃんはワクワク顔だ。


「星夜は見慣れてるんじゃないか」
「いや」
「超セレブな生徒が留学してくると、こうやってお迎えするの。ほら、校長先生や教師一同も並んでるでしょ。クラスメイトはレッドカーペットで拍手して歓迎の意を表す。無事短期留学生が帰国すると、私たちは単位がもらえるわけ」
「ええええ、一体何の単位なんだよ?」
「社交術よ」

 マジか。

 レッドカーペットの縁に並んで立っていると、十名以上の警備員が背後に配置された。

「ものすごい厳重な警備だな」
「皇太子クラスって、どこの国かしら?」
 生徒のヒソヒソ話が聞こえてきた。
「はい、これを持って振ってください」

 副担任が生徒に配り始めたのは小型の旗だった。テレビでよく見るやつだ。

「満月にラクダが描いてあるぜ。黄色メインの国旗って、どこだっけ?」
「どこかしら……」


 萩野兄妹も知らない国のようだ。

 でも俺は、これを飽きるほど目にしてきた。

「まさか……」

 ブロロロロロロ。

 静かなエンジン音が近づいてきた。黒塗りの大型セダンが坂を上がってくる。一台、二台、三台……。日本警察の白バイまで連れてきたぞ。

 
キキ~。バタン。
「アジャール王国第二王子、ルシアン王子のおなーりー」
  教頭が声を張り上げた。
 ここは江戸時代か?

 ダークスーツの男性が後部座席を開けると、紅葉学園の制服を着た若者が降り立った。

 小麦色の肌に黒い眉、凜々しい口元、そして煌めくダークブルーの瞳は、記憶と寸分も違(たが)わない美丈夫ぶりだ。

「星夜!」



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