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第二章
【二】星夜ー祖母ちゃんの商業デビューと月子ちゃんの試練③
しおりを挟む「みんな、ちょっと聞いてくれ」
俺の言葉に非難が止んだ。男子生徒もこちらに注目している。非常に言いにくい……。
「その、月子ちゃんには同人誌の作り方を教えてもらってたんだ。だから、みんな誤解しないでくれ」
「同人誌?」
「もしかして、エロ漫画同人誌か?」
男子の食いつきがすげえ。
「いや、小説だよ」
「小説!」
「若生君、小説書くの?」
今度は女子達から質問が飛ぶ。
「いや、俺じゃないよ。その、俺の祖母ちゃんがBL小説家なんだが……」
片手で口を覆い、もごもごと早口で告白した。
「「「BL小説家‼」」」
教室が喚声(かんせい)で揺れた。……ような気がした。
「きゃー。若生君、腐男子?」
「マジ?」
「いや、祖母ちゃんだよ!」
「私は腐女子よ。それに漫画も描いてるの。だから星夜君のお祖母さまに表紙を依頼されて、相談してたの」
月子ちゃんは凜として美しかった
。
「なんだ~」
「恋人じゃないんだ」
ふう。これで騒動が収まってくれるかな。
「それでもずるいわよ。なんで若生君は他の女子と遊ばないの?」
「やっぱり萩野さんが好きなんじゃないの?」
「えー」
「萩野さんは婚約者いるんでしょ?」
「はしたない……」
「ずるい」
だんだんと悪意に満ちた言葉が湧いてくる。
「うわー。女子全員が萩野をいじめてるぜ」
「女ってこわ……」
男子が怯えたフリをして面白がっていた。
「俺の妹を侮辱するな!」
海人が氷の視線を浴びせると、生徒たちは凍り付いた。
「そうだよ。月子ちゃんは悪くないぞ!」
俺が援護したら、女子からブーイングが。何でだよ!
「お兄様、星夜君、ありがとう。私の認識が甘かったみたい。そうね、皆様には真実をお伝えしましょう。私には三人の夫候補がいます。萩野家当主が選んだ方です。本来なら、去年のうちにお見合いして婚約する予定でしたが、私の我が儘で先延ばしにしているのです。ですが、そろそろ覚悟を決めなくてはならないようです」
「月子、なにをいってるんだ。お見合いなんて俺は知らないぞ?」
「お兄様、まだ話は終わっていませんわ」
理知的な瞳で海人の疑問を封じ、クラスメイトを見渡した月子ちゃんは、宣言した。
「皆さんの疑心暗鬼を消すためにも、夫候補と会うつもりです」
「お見合いをするつもりなのか?」
海人が月子ちゃんの肩を揺さぶる。
「ええ。卒業後に結婚するわ。ですから、その前に同人活動を満喫したかったの」
「「!」」
「そ、そんなの、口だけでどうにでも言えるわ。本当に相手がいるのかしら?」
蜂谷さんは引き際を知らないらしい。
にらみつける蜂谷さんへ視線を投げた後、月子ちゃんはスマホを取り出して電話をかけ始めた。
プルルルル。
「もしもし、お祖母さま。お見合い相手に伝えてください。今日の放課後、私を迎えに来た相手と結婚します」
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