24 / 39
第二章
【二】星夜ー祖母ちゃんの商業デビューと月子ちゃんの試練①
しおりを挟むゴールデンウィークは観光地の混雑を避けて、毎日祖母ちゃんとバーベキューやタコパをしてぐーたらを満喫していた。
「にゃーん」
「ルビー、鰹節が欲しいのか?」
「うにゃーん」
タコ焼きはやっぱり、庭でやるのが最高だな~。籐のカウチに寝そべって、サファイアを吸ってみた。もふもふ最高。
「星夜、これを見て!」
ルカ叔母さんが封筒を手にしている。中身を受け取って、目が飛び出た。
「セイウチブックス……出版契約書?」
「お母さんの小説を内緒で応募したら、採用されたのよ。商業デビューよ!」
「えええええ~っ⁉」
「しょ、商業デビュー?」
祖母ちゃんは、たこ焼きを芝生に落として呆然としていた。
「いまはネット小説や電子漫画の時代でしょ。電子出版社に原稿を送ってみたの。そしたらほら、お母さんの小説を電子ストアで配信してくれるって!」
「電子ストア?」
「テレビコマーシャルで見たことあるでしょ。ランタ! とか、コミックニャーモアとか、ニャマゾンとかよ!」
「すごいよ、祖母ちゃん!」
「そうよ、母さん。やったわね!」
「い、いいのかしら。私の小説で……」
「出版社が売れるって判断したんだから、いいのよ!」
「お、俺、海人に電話しなくちゃ」
「星夜、いまはゴールデンウィークなんだから後でいいんだよ」
荻野兄妹には世話になりっぱなしだから、とラン祖母ちゃんに止められた。
「そうだな。休み明けに学校で知らせるよ。きっと驚くぜ」
ラン祖母ちゃんの同人誌頒布計画は順調に進んでいた――。
①ラン祖母ちゃんはパートの合間に小説の推敲と校正作業を進める。
②俺は学校から帰宅したらラン祖母ちゃんのサポートとプピッターでの宣伝活動。
③月子ちゃんは習い事や勉強に影響が出ない程度に表紙を制作する。
④海人は月子ちゃんが祖母ちゃんと打ち合わせする時に家まで同伴する。(萩野家令嬢はひとりの外出が禁止されている)
⑤ルカ叔母さんは同人誌の印刷会社への入稿作業や通販手段を手配する。
小説の同人誌を作るには、中身(小説)と外側(表紙絵)の制作工程がまるで違うのを初めて知った。
A ①の小説を、ワープロソフトを使って本の大きさ(今回はA5版二段組み)に文章を整えて、さらに校正や推敲をする。読み上げ機能で誤字や脱字もチェックする。
B Aの原稿をコピーして、紙でミスがないかチェックする。発見したら赤ペンで記す。
C ミスがあればパソコンで修正し、再びパソコンの校正機能でチェック。
D もう一度印刷して最終チェック。
この工程が済んで、やっと印刷会社に依頼するらしい。マジか。俺、同人誌制作舐めてたわ。
表紙の制作も、これとは違った行程があることを月子ちゃんから教えてもらった。
画像の種類(PNG、JPEG、他)って何じゃらホイ?
解像度って何の違いがあるのかなー?(イケメン度が増すとか?)
大体、絵をデジタルで描くテクニックを習得するんだって、一朝一夕じゃ無理って俺だって分かる。月子ちゃんは努力家だと絵を見て悟ったよ。
俺も都会じゃ缶詰状態で勉強したけれど、何かを得たのかと言われれば、誇れるものはない。あの学校から逃げ出したくて勉強しただけ。俺は将来なりたい職業もない。
夢はここで平和に暮らしたい、ただそれだけだ――。
俺はスマホを学校に持って行かない主義なので、月子ちゃんや海人がルカ叔母さんやラン祖母ちゃんとの昼間のやり取りを教えてくれた。
転校当初は腐女子をどうやって探そうかと頭を抱えていた俺は、月子ちゃんの登場により全てが解決したと思い込んでいた。だが、それは間違っていたようだ。
俺が萩野兄妹に頼り切ってしまったために、月子ちゃんの立場を追い詰めてしまった――。
◆◆◆
毎日更新頑張りますので、毎日アクセスしていただけると励みになります。
応援、投票ありがとうございます。
11
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる