14 / 39
第一章
【五】月子―腐女子の結界②
しおりを挟む
「星夜のお父さんが渡米するから、海人はお祖母ちゃんと暮らすことになった。俺たちと同じ高校に編入してくるって!」
「よかったね、お兄ちゃん。星夜君と親友だったもんね」
海人お兄ちゃんは、自分の容姿や人気に嫉妬したり、嫌みを言う馬鹿な男の子にうんざりしていた。マイペースな星夜君は萩野家の日本庭園でお祖母さまの点てたお抹茶を飲むのが大好きだった。
お祖母さまにも気に入られていた、父親がエリートの友達……。
彼はどんな若者に成長したのかしら。都会のセンスが染みついたクソ生意気な男になってたら、きっとお兄ちゃんはがっかりするだろうな……。
私たち兄妹が通う『私立紅葉学園』は、金持ち家庭の生徒が七割、一般家庭の生徒が二割の、地元では有名な中高一貫校だ。
残りの一割は海外のボンボンが気まぐれに留学してくる。
二割の生徒は学業が優秀な特待生。姉妹校の『青葉学園』の生徒と共に『青葉大学』へエスカレーター式に進学する生徒が多く、卒業後は県内の経済を支えている実家の企業へ入社する。要するに、ボンボンネットワークがここで培われる訳だ。
既に見合いをして婚約しているカップルもいて、私が一番仲のいい幼なじみも一年後に結婚式が予定されている。私はブライズメイド、お兄ちゃんはアッシャーを頼まれている。安心して。新郎は海人兄ちゃんと違う、クールガイタイプなのよ。
「星夜、こっち、こっち!」
弾んだ兄の声に、女子生徒達が反応した。
「わあ、萩野くん。今日もイケメン~」
「顔の造作が神レベルだよね」
「あの泣きぼくろがいいの!」
いいの=エロいって事ですよね。海人兄ちゃんは坂道を駆けだした。珍しい。
「海人、久しぶり!」
クラス分けの掲示板の前でウロチョロしているイケメンは、なんと星夜君だった。私と同じ身長だったのに、三年間で三十センチ以上伸びていた。やや前髪は長めだけど、都会の洒落た美容院でカットしたと見える。
おぬし、モテ男を目指しているのか?
でもあら、おでこにニキビ発見。それに目の下に隈まであるわ。肌のメンテナンスはイマイチね。
挨拶を交わしたら、昔と変わらない星夜君だった。発音も仙台なまりのままだ。
「そうだ、三人でLIN○グループ作ろうぜ!」
「俺、学校にはスマホ持って来てないんだ」
「ブハッ。何でだよ。中学生じゃないんだから、休み時間にゲームとかできるじゃん」
「俺は、卒業まで持ってこない。だから帰ってから連絡するよ」
「星夜……お前、転校先で何かあったのか?」
星夜君は転校してからも、ずっとスマホを持っていなかった。お兄ちゃんが星夜君の自宅へ数回電話をした際、私にこぼしていた。
『あいつ、学校の勉強についていくのが大変で、親にスマホを禁止されてるんだって。高校になるまで買ってもらえないって愚痴ってたな……』
私は海人兄ちゃんと視線を交わした。ここで離す内容じゃない。
「よかったね、お兄ちゃん。星夜君と親友だったもんね」
海人お兄ちゃんは、自分の容姿や人気に嫉妬したり、嫌みを言う馬鹿な男の子にうんざりしていた。マイペースな星夜君は萩野家の日本庭園でお祖母さまの点てたお抹茶を飲むのが大好きだった。
お祖母さまにも気に入られていた、父親がエリートの友達……。
彼はどんな若者に成長したのかしら。都会のセンスが染みついたクソ生意気な男になってたら、きっとお兄ちゃんはがっかりするだろうな……。
私たち兄妹が通う『私立紅葉学園』は、金持ち家庭の生徒が七割、一般家庭の生徒が二割の、地元では有名な中高一貫校だ。
残りの一割は海外のボンボンが気まぐれに留学してくる。
二割の生徒は学業が優秀な特待生。姉妹校の『青葉学園』の生徒と共に『青葉大学』へエスカレーター式に進学する生徒が多く、卒業後は県内の経済を支えている実家の企業へ入社する。要するに、ボンボンネットワークがここで培われる訳だ。
既に見合いをして婚約しているカップルもいて、私が一番仲のいい幼なじみも一年後に結婚式が予定されている。私はブライズメイド、お兄ちゃんはアッシャーを頼まれている。安心して。新郎は海人兄ちゃんと違う、クールガイタイプなのよ。
「星夜、こっち、こっち!」
弾んだ兄の声に、女子生徒達が反応した。
「わあ、萩野くん。今日もイケメン~」
「顔の造作が神レベルだよね」
「あの泣きぼくろがいいの!」
いいの=エロいって事ですよね。海人兄ちゃんは坂道を駆けだした。珍しい。
「海人、久しぶり!」
クラス分けの掲示板の前でウロチョロしているイケメンは、なんと星夜君だった。私と同じ身長だったのに、三年間で三十センチ以上伸びていた。やや前髪は長めだけど、都会の洒落た美容院でカットしたと見える。
おぬし、モテ男を目指しているのか?
でもあら、おでこにニキビ発見。それに目の下に隈まであるわ。肌のメンテナンスはイマイチね。
挨拶を交わしたら、昔と変わらない星夜君だった。発音も仙台なまりのままだ。
「そうだ、三人でLIN○グループ作ろうぜ!」
「俺、学校にはスマホ持って来てないんだ」
「ブハッ。何でだよ。中学生じゃないんだから、休み時間にゲームとかできるじゃん」
「俺は、卒業まで持ってこない。だから帰ってから連絡するよ」
「星夜……お前、転校先で何かあったのか?」
星夜君は転校してからも、ずっとスマホを持っていなかった。お兄ちゃんが星夜君の自宅へ数回電話をした際、私にこぼしていた。
『あいつ、学校の勉強についていくのが大変で、親にスマホを禁止されてるんだって。高校になるまで買ってもらえないって愚痴ってたな……』
私は海人兄ちゃんと視線を交わした。ここで離す内容じゃない。
11
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる