17 / 28
序章
記憶喪失、迷宮攻略へ。 その1
しおりを挟む
「アーサーさん!ここです!」
タスクが元気に手を振っている。
ちなみにまだ朝の8時くらいなのだが、なんでこんなに元気なのか、よく分からない。
昨日は夜、ギルドで飯を食った後、一部屋借りて速攻で寝てしまった。
それでさっき起きて、部屋の外に出てみると、タスクが既に掲示板前に立っていた。
本当に一時間前から待っていたらしい。
こいつクソ真面目だな。
ちょっとまだ寝ぼけ気味な声で、
「ちょっと用意するから待っててくれ。」
と言っといた。
アドを起こして、準備を急がせる。
俺たちがなぜか急かされる側になっているのだが、気のせいだろう。
黒剣を忘れずに手に持ち、さっさと用意をしていく。
数分以内に用意を終わらせ、タスクと合流する。
「おはようございます!」
「おう、おはよう。お前何時からここにいるんだ?」
「えっと、5時くらいからですね。」
「お前相当やばいな…」
「あんた誰ぇ?」
アドは寝ぼけた様子でそう言った。
「おいアド、起きろ!」
アドの頭を強く叩くと、
「プワァッ!」と奇声をあげた。
どうにか目を覚ましたようだ。
「あ、タスク!おはよう!」
「お、おはようございます…」
ちょっと引いてる。
タスクは大きな盾にポーションを各種など、なかなかの重装備で挑む中、俺とアドはほとんど身軽状態である。俺は黒剣だけだし、アドに限っては何も持っていない。
この人たち迷宮攻略の意味わかってるのかな?って言いたげな目で見られているのだが、そんなことお構いなしである。ぶっちゃけ言ってアドさんさえいればどうとでもなるのだから。
「挨拶は済んだことだし、出発するか!」
「え、は、はい。」
タスクはうろたえながら返事をした。
茶番はこれくらいにしといて、迷宮に向かうとしよう。
北に歩いて数時間の王国領土内のところにあるのが今回攻略することになったダスク迷宮である。
最近出現した金、銀冒険者向けの迷宮であると言われている。塔のような構造になっていて、確認できるだけで10階層ある。確認できたモンスターも低級から中級の弱小モンスターが多く、難易度は低めの迷宮である。有料だが、ダスク迷宮への転移陣も設置されている。どうやら迷宮への移動手段に限ってギルドが用意してくれるようだな。
一刻も早く金貨を稼ぎたいので、一人当たり交通費の銅貨2枚を支払って、転移を行う。
光が俺たち3人を包み込み、光が収束すると、ダスト迷宮の目の前へと到着していた。
いや、転移陣は素晴らしいな。なんでも、あれ一つの設置に金貨50枚かかるらしいもんな。
「いざ目の前に立つとすごい威圧感ですね。」
ダスク迷宮は高さで数十メートルあり、塔の周りを守るように鳥の魔物が群れで周回している。
物騒な雰囲気を醸し出す塔は、まさに迷宮であった。でも、フォルフェウスと対峙した後だからか、特に俺とアドは威圧感を感じなかった。
「まあ高いだけだな。」
「ええ、そうね。あそこの魔物も大したことないわね。」
と二人揃って余裕の表情。
フォルフェウスの襲撃に耐えたんだから、絶対に大丈夫だろう、と二人共考えていたのだ。
そしてそれは正しい認識であった。
ダスク迷宮第一階層へと入ると、早速数匹のゴブリンに襲われた。
ゴブリン達は各々武器を構え、襲い掛かるタイミングを探している。
アドによると、臆病な生き物であるゴブリンは、どうしても先制攻撃ができないため、こういう相手には、先手必勝であるらしい。
という訳で黒剣を鞘から抜き、魔力を込める。
「斬撃魔法、三重段斬ッ!」
そう唱え、剣で宙を切ると、見えない三連斬撃がゴブリンたちを切り裂いた。
なるほど。魔法武器に付与された魔法は、魔力を込めることで発動するようだ。単純に説明すると、魔法武器は弓である。矢がなければ攻撃できない。そしてこの矢の役割を果たすのが、魔力なのである。すなわち、魔法を覚えていなくても、魔力武器に付与された魔法なら魔力を込められる以上、発動できるということらしい。
「へぇーすごいな、この剣。」
「そうね。あの骸骨は本当に元王都一位の鍛治師だったのね。」
そんなことを思いながら、次の階層へと進むための階段を探す。
次の階層へと進むには、階段を登ればいいらしい。階層ごとに階段が隠されていて、そこを登ることで次の階層に進める仕組みだそうだ。
「おっ!あった、あそこだ。」
「本当だわ!」
「じゃああそこ目がけていきますか。」
右端に見つけた階段を目がけて進んでいく。
ダスク迷宮は迷宮って言っても迷路みたいではない。どちらかというと広場みたいなものだ。
階段に向かうと様々な魔物に妨害され、そいつ達を倒していくという形式らしい。
歩いていると、オーガが現れた。
オーガは耐久力と攻撃力が高い魔物で、中級魔物という分類に入るのだが、アドに魔法や武装無しで初見殺しされてしまった。
「え、嘘だぁ。」
タスクは次々へと倒れていく魔物達に驚きながら言葉を失っている。
結局この階層で出てくるのはゴブリンとオーガだけだったのだが、階段の数メートル手前まで辿り着いたら、数メートルの大きなゴブリンが現れた。
フロアボス。すなわち各階層の守護者である。
たかが大きいゴブリンがアドさんを倒せる訳もなく、為す術なく殺されていってしまった。
アドは先手必殺をかけたが、ギリギリで避けられてしまった。その後はその失敗を反省して、全ての攻撃を正確に急所に当てていく。数十秒後、デカゴブリンの意識は墜ちてしまい、抵抗できずに殺されてしまった。
「よし!第一層はこんなもんよ!」
と血がついたドヤ顔で言い放った。
「まあ当たり前だよな、龍種なんだし。」
そんな余裕の表情を見せるアドとアーサーをタスクは恐ろしく思った。
(え?あんな巨大なゴブリンを1分以内に…化け物すぎるだろ!)
アドが味方でよかったと思いながらタスクはダスク迷宮攻略を続けるのだった。
アーサー一行は次の層へと階段を登って行ったのだった。
タスクが元気に手を振っている。
ちなみにまだ朝の8時くらいなのだが、なんでこんなに元気なのか、よく分からない。
昨日は夜、ギルドで飯を食った後、一部屋借りて速攻で寝てしまった。
それでさっき起きて、部屋の外に出てみると、タスクが既に掲示板前に立っていた。
本当に一時間前から待っていたらしい。
こいつクソ真面目だな。
ちょっとまだ寝ぼけ気味な声で、
「ちょっと用意するから待っててくれ。」
と言っといた。
アドを起こして、準備を急がせる。
俺たちがなぜか急かされる側になっているのだが、気のせいだろう。
黒剣を忘れずに手に持ち、さっさと用意をしていく。
数分以内に用意を終わらせ、タスクと合流する。
「おはようございます!」
「おう、おはよう。お前何時からここにいるんだ?」
「えっと、5時くらいからですね。」
「お前相当やばいな…」
「あんた誰ぇ?」
アドは寝ぼけた様子でそう言った。
「おいアド、起きろ!」
アドの頭を強く叩くと、
「プワァッ!」と奇声をあげた。
どうにか目を覚ましたようだ。
「あ、タスク!おはよう!」
「お、おはようございます…」
ちょっと引いてる。
タスクは大きな盾にポーションを各種など、なかなかの重装備で挑む中、俺とアドはほとんど身軽状態である。俺は黒剣だけだし、アドに限っては何も持っていない。
この人たち迷宮攻略の意味わかってるのかな?って言いたげな目で見られているのだが、そんなことお構いなしである。ぶっちゃけ言ってアドさんさえいればどうとでもなるのだから。
「挨拶は済んだことだし、出発するか!」
「え、は、はい。」
タスクはうろたえながら返事をした。
茶番はこれくらいにしといて、迷宮に向かうとしよう。
北に歩いて数時間の王国領土内のところにあるのが今回攻略することになったダスク迷宮である。
最近出現した金、銀冒険者向けの迷宮であると言われている。塔のような構造になっていて、確認できるだけで10階層ある。確認できたモンスターも低級から中級の弱小モンスターが多く、難易度は低めの迷宮である。有料だが、ダスク迷宮への転移陣も設置されている。どうやら迷宮への移動手段に限ってギルドが用意してくれるようだな。
一刻も早く金貨を稼ぎたいので、一人当たり交通費の銅貨2枚を支払って、転移を行う。
光が俺たち3人を包み込み、光が収束すると、ダスト迷宮の目の前へと到着していた。
いや、転移陣は素晴らしいな。なんでも、あれ一つの設置に金貨50枚かかるらしいもんな。
「いざ目の前に立つとすごい威圧感ですね。」
ダスク迷宮は高さで数十メートルあり、塔の周りを守るように鳥の魔物が群れで周回している。
物騒な雰囲気を醸し出す塔は、まさに迷宮であった。でも、フォルフェウスと対峙した後だからか、特に俺とアドは威圧感を感じなかった。
「まあ高いだけだな。」
「ええ、そうね。あそこの魔物も大したことないわね。」
と二人揃って余裕の表情。
フォルフェウスの襲撃に耐えたんだから、絶対に大丈夫だろう、と二人共考えていたのだ。
そしてそれは正しい認識であった。
ダスク迷宮第一階層へと入ると、早速数匹のゴブリンに襲われた。
ゴブリン達は各々武器を構え、襲い掛かるタイミングを探している。
アドによると、臆病な生き物であるゴブリンは、どうしても先制攻撃ができないため、こういう相手には、先手必勝であるらしい。
という訳で黒剣を鞘から抜き、魔力を込める。
「斬撃魔法、三重段斬ッ!」
そう唱え、剣で宙を切ると、見えない三連斬撃がゴブリンたちを切り裂いた。
なるほど。魔法武器に付与された魔法は、魔力を込めることで発動するようだ。単純に説明すると、魔法武器は弓である。矢がなければ攻撃できない。そしてこの矢の役割を果たすのが、魔力なのである。すなわち、魔法を覚えていなくても、魔力武器に付与された魔法なら魔力を込められる以上、発動できるということらしい。
「へぇーすごいな、この剣。」
「そうね。あの骸骨は本当に元王都一位の鍛治師だったのね。」
そんなことを思いながら、次の階層へと進むための階段を探す。
次の階層へと進むには、階段を登ればいいらしい。階層ごとに階段が隠されていて、そこを登ることで次の階層に進める仕組みだそうだ。
「おっ!あった、あそこだ。」
「本当だわ!」
「じゃああそこ目がけていきますか。」
右端に見つけた階段を目がけて進んでいく。
ダスク迷宮は迷宮って言っても迷路みたいではない。どちらかというと広場みたいなものだ。
階段に向かうと様々な魔物に妨害され、そいつ達を倒していくという形式らしい。
歩いていると、オーガが現れた。
オーガは耐久力と攻撃力が高い魔物で、中級魔物という分類に入るのだが、アドに魔法や武装無しで初見殺しされてしまった。
「え、嘘だぁ。」
タスクは次々へと倒れていく魔物達に驚きながら言葉を失っている。
結局この階層で出てくるのはゴブリンとオーガだけだったのだが、階段の数メートル手前まで辿り着いたら、数メートルの大きなゴブリンが現れた。
フロアボス。すなわち各階層の守護者である。
たかが大きいゴブリンがアドさんを倒せる訳もなく、為す術なく殺されていってしまった。
アドは先手必殺をかけたが、ギリギリで避けられてしまった。その後はその失敗を反省して、全ての攻撃を正確に急所に当てていく。数十秒後、デカゴブリンの意識は墜ちてしまい、抵抗できずに殺されてしまった。
「よし!第一層はこんなもんよ!」
と血がついたドヤ顔で言い放った。
「まあ当たり前だよな、龍種なんだし。」
そんな余裕の表情を見せるアドとアーサーをタスクは恐ろしく思った。
(え?あんな巨大なゴブリンを1分以内に…化け物すぎるだろ!)
アドが味方でよかったと思いながらタスクはダスク迷宮攻略を続けるのだった。
アーサー一行は次の層へと階段を登って行ったのだった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
虐げられ令嬢の最後のチャンス〜今度こそ幸せになりたい
みおな
恋愛
何度生まれ変わっても、私の未来には死しかない。
死んで異世界転生したら、旦那に虐げられる侯爵夫人だった。
死んだ後、再び転生を果たしたら、今度は親に虐げられる伯爵令嬢だった。
三度目は、婚約者に婚約破棄された挙句に国外追放され夜盗に殺される公爵令嬢。
四度目は、聖女だと偽ったと冤罪をかけられ処刑される平民。
さすがにもう許せないと神様に猛抗議しました。
こんな結末しかない転生なら、もう転生しなくていいとまで言いました。
こんな転生なら、いっそ亀の方が何倍もいいくらいです。
私の怒りに、神様は言いました。
次こそは誰にも虐げられない未来を、とー
異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる