気づいたら記憶喪失だった

或真

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序章

記憶喪失、迷宮攻略へ。 その1

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「アーサーさん!ここです!」
タスクが元気に手を振っている。

ちなみにまだ朝の8時くらいなのだが、なんでこんなに元気なのか、よく分からない。
昨日は夜、ギルドで飯を食った後、一部屋借りて速攻で寝てしまった。
それでさっき起きて、部屋の外に出てみると、タスクが既に掲示板前に立っていた。

本当に一時間前から待っていたらしい。
こいつクソ真面目だな。
ちょっとまだ寝ぼけ気味な声で、
「ちょっと用意するから待っててくれ。」
と言っといた。

アドを起こして、準備を急がせる。
俺たちがなぜか急かされる側になっているのだが、気のせいだろう。
黒剣を忘れずに手に持ち、さっさと用意をしていく。

数分以内に用意を終わらせ、タスクと合流する。

「おはようございます!」

「おう、おはよう。お前何時からここにいるんだ?」

「えっと、5時くらいからですね。」

「お前相当やばいな…」
「あんた誰ぇ?」
アドは寝ぼけた様子でそう言った。

「おいアド、起きろ!」
アドの頭を強く叩くと、

「プワァッ!」と奇声をあげた。
どうにか目を覚ましたようだ。

「あ、タスク!おはよう!」

「お、おはようございます…」
ちょっと引いてる。

タスクは大きな盾にポーションを各種など、なかなかの重装備で挑む中、俺とアドはほとんど身軽状態である。俺は黒剣だけだし、アドに限っては何も持っていない。

この人たち迷宮攻略の意味わかってるのかな?って言いたげな目で見られているのだが、そんなことお構いなしである。ぶっちゃけ言ってアドさんさえいればどうとでもなるのだから。

「挨拶は済んだことだし、出発するか!」

「え、は、はい。」
タスクはうろたえながら返事をした。

茶番はこれくらいにしといて、迷宮に向かうとしよう。
北に歩いて数時間の王国領土内のところにあるのが今回攻略することになったダスク迷宮である。
最近出現した金、銀冒険者向けの迷宮であると言われている。塔のような構造になっていて、確認できるだけで10階層ある。確認できたモンスターも低級から中級の弱小モンスターが多く、難易度は低めの迷宮である。有料だが、ダスク迷宮への転移陣も設置されている。どうやら迷宮への移動手段に限ってギルドが用意してくれるようだな。

一刻も早く金貨を稼ぎたいので、一人当たり交通費の銅貨2枚を支払って、転移を行う。
光が俺たち3人を包み込み、光が収束すると、ダスト迷宮の目の前へと到着していた。
いや、転移陣は素晴らしいな。なんでも、あれ一つの設置に金貨50枚かかるらしいもんな。

「いざ目の前に立つとすごい威圧感ですね。」

ダスク迷宮は高さで数十メートルあり、塔の周りを守るように鳥の魔物が群れで周回している。
物騒な雰囲気を醸し出す塔は、まさに迷宮であった。でも、フォルフェウスと対峙した後だからか、特に俺とアドは威圧感を感じなかった。

「まあ高いだけだな。」

「ええ、そうね。あそこの魔物も大したことないわね。」

と二人揃って余裕の表情。
フォルフェウスの襲撃に耐えたんだから、絶対に大丈夫だろう、と二人共考えていたのだ。
そしてそれは正しい認識であった。

ダスク迷宮第一階層へと入ると、早速数匹のゴブリンに襲われた。
ゴブリン達は各々武器を構え、襲い掛かるタイミングを探している。
アドによると、臆病な生き物であるゴブリンは、どうしても先制攻撃ができないため、こういう相手には、先手必勝であるらしい。

という訳で黒剣を鞘から抜き、魔力を込める。
「斬撃魔法、三重段斬ッ!」
そう唱え、剣で宙を切ると、見えない三連斬撃がゴブリンたちを切り裂いた。

なるほど。魔法武器に付与された魔法は、魔力を込めることで発動するようだ。単純に説明すると、魔法武器は弓である。矢がなければ攻撃できない。そしてこの矢の役割を果たすのが、魔力なのである。すなわち、魔法を覚えていなくても、魔力武器に付与された魔法なら魔力を込められる以上、発動できるということらしい。

「へぇーすごいな、この剣。」

「そうね。あの骸骨は本当に元王都一位の鍛治師だったのね。」

そんなことを思いながら、次の階層へと進むための階段を探す。
次の階層へと進むには、階段を登ればいいらしい。階層ごとに階段が隠されていて、そこを登ることで次の階層に進める仕組みだそうだ。

「おっ!あった、あそこだ。」

「本当だわ!」

「じゃああそこ目がけていきますか。」

右端に見つけた階段を目がけて進んでいく。
ダスク迷宮は迷宮って言っても迷路みたいではない。どちらかというと広場みたいなものだ。
階段に向かうと様々な魔物に妨害され、そいつ達を倒していくという形式らしい。

歩いていると、オーガが現れた。
オーガは耐久力と攻撃力が高い魔物で、中級魔物という分類に入るのだが、アドに魔法や武装無しで初見殺しされてしまった。

「え、嘘だぁ。」
タスクは次々へと倒れていく魔物達に驚きながら言葉を失っている。

結局この階層で出てくるのはゴブリンとオーガだけだったのだが、階段の数メートル手前まで辿り着いたら、数メートルの大きなゴブリンが現れた。

フロアボス。すなわち各階層の守護者である。
たかが大きいゴブリンがアドさんを倒せる訳もなく、為す術なく殺されていってしまった。

アドは先手必殺をかけたが、ギリギリで避けられてしまった。その後はその失敗を反省して、全ての攻撃を正確に急所に当てていく。数十秒後、デカゴブリンの意識は墜ちてしまい、抵抗できずに殺されてしまった。

「よし!第一層はこんなもんよ!」
と血がついたドヤ顔で言い放った。

「まあ当たり前だよな、龍種なんだし。」
そんな余裕の表情を見せるアドとアーサーをタスクは恐ろしく思った。

(え?あんな巨大なゴブリンを1分以内に…化け物すぎるだろ!)
アドが味方でよかったと思いながらタスクはダスク迷宮攻略を続けるのだった。

アーサー一行は次の層へと階段を登って行ったのだった。
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