イクメンパパの異世界冒険譚〜異世界で育児は無理がある

或真

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第一章

増えた仲間

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 親にとって、子供は全てだ。俺だってれいちゃんが生まれる前は「子供なんてしょうもない」なんて思っていた。だけど今は違う。

 れいちゃんは俺の生きがいだ。れいちゃんには幸福になってほしい。そんな思いを胸に俺は毎日を生きている。

 そんな生きがいを失うなんて。しかも目の前で殺されたなんて。

 俺なら絶対に耐えられない。

「辛いことを聞いて悪かった……」

「お前が謝る必要なんてない……あいつらが悪いんだ。だからこそ……私は復讐する。子を殺した奴らを皆殺しにするまで私は死ねない。」

 彼女の目は本気だった。彼女の今の生きがいは復讐心。復讐心を原動力に彼女は今日も生きていた。そんな強固な決意を壊すことは俺にはできないし、しない。むしろ、俺は協力する。

「ねぇ店員さん、やっぱりこの奴隷買います。」

 そう店員さんに話しかけると、顔を引き攣らせながら値段の精算を行ってくれた。

「こんなイカれ女を買うなんて、お客さんすごいですね。」

「いえいえ、この人そんなにイカれてませんよ。」

 なぜだろうか、俺はこの女に深く共感していた。別に子を亡くした訳でもないのに、なぜか彼女と同様の深い怒りを感じていた。一人の親として俺に出来ることは、彼女の意志を尊重することだ。

 彼女の怒りを冷ましてはならない。

「ハハッ、そうですか。言っときますけど、返品は受けつけてないですからね。」

「ハハッ、返品する気なんかないですから。」

「じゃあ代金はー金貨10枚ですね。」

 おっと、金貨10枚は中々に高いな。払えない金額ではないけど、ちょっと懐が狭くなっちゃうな。こりゃ王都に戻ったらギルドからの依頼を増やさないと。

 金貨10枚ちょうどを店員に支払うと、彼は独房の鍵を開けて女を外に出した。

「奴隷印を書き替えるのでちょっと待っててくださいね。」

 店員はそう言うと、女の手の甲に描かれていた印を消し、新たに印を描いていく。複雑な円形の模様を描き終えると、店員は、

「あとは主人の血印をここに押せば完成です。」

 奴隷印とは、奴隷契約の証明のようなもので、主人となる者の血印を押すと完成する。奴隷印が完成すると、奴隷は主人の命令に背けなくなり、命令違反時には容赦なく死が訪れるらしい。そしてもちろんこの印を取り消せるのは、主人のみ。

 奴隷たちが脱獄しようとしないのは、この奴隷印があるからだったのか。脱獄しようとしたら即死亡。きっと『脱獄するな』とか言う命令をされていたのだろう。

 俺は店員に渡された針で親指を挿し、女の手の甲に描かれた奴隷印に血印を押す。

 すると奴隷印が突然発光し、どんどん赤黒い色に染まっていく。どうやら契約成立ってことみたいだな。

「これで契約完了ですね。」

 クルシュ族の女はもっと奴隷契約を嫌がりそうだったけど、意外なことに従順だった。暴れたりしそうで心配だったけど、どうやら杞憂で終わったみたいだ。

 それにしてもれいちゃんは良く気づいたな。

『れいちゃんの方がお前よりよっぽど周りを見てるな。』

 うるさいな!てかお前は刀なんだから目ないだろ!神威だけには言われたくねぇよ。

 まあそれはさておき、用も済んだし、ここはれいちゃんの教育に悪いからさっさと退散しますか。

「じゃあいくか。」

 そう言って奴隷市の出口に向かおうとしたその時。

「……アグラだ。」

「え?」

「名前……アグラだ。」

 クルシュ族の女は顔を赤らめてモジモジしながら、小声でそう呟いた。

「……ツンデレ?」

「ッー!だまれ!」

「あ、ごめん。」

 晴れてツンデレ(?)のアグラさんが俺のパーティに参加することになったのだった。
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