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第一章

仲間探し

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 翌日。武闘会で疲れていただけに、随分ぐっすりと眠れた。れいちゃんも同様に疲れていたみたいで、朝目覚めたら大きないびきをかいて寝ていた。

 さて、俺はれいちゃんが起きるまでに朝ご飯の用意でもするか。まあ用意と言ってもスキル『心情創造者』でご飯を具現化するだけなんだけどな。

 スキルがレベルアップしたおかげで上限二千円までの物が作れるし、予算の繰り越しも可能。随分スキルらしくなってきたじゃないか。

 そして何より、二千円あればアレが食える。別に異世界の飯が不味い訳ではないんだけど、やっぱり慣れ親しんだ故郷の味は忘れられない。アレに加えて切れ気味のプレミアム離乳食を作っても予算内に収まりそうだな。

 じゃあ早速生成しますか!心中に慣れ親しんだアレとプレミアム離乳食を思い浮かべると、目の前に想像通りの品が現れた。

 まずプレミアム離乳食はおいといて、ついにアレが久しぶりに食える。アレとはもちろん、世界的ハンバーガーチェーンハクドナルドの定番セット、ビッグハックバーガーセットである。

 もちろんサイドはポテト。ドリンクは懐かしのコーラである。焼きたてポテトの香ばしい香りが部屋中に充満し、食欲を掻き立てる。そしてその香りに触発されたのか、れいちゃんはいつの間にか眠りから覚めていた。

「あぅ!」

 それ欲しいと言わんばかりの眼差しとポテトへと向けているれいちゃんはポテトを一つ手に取る。

「れいちゃんそれ食べちゃいけないよ。」

 れいちゃんにも是非ポテトを食べさせてあげたいんだけれども、なんと言っても歯が生えてないからね。残念ながら固形食を食べさせられないのが現状だ。そう諦めていたら突然神威から念話が入る。

『待てユウマよ。』

 ん?どうしたんだ?

『れいちゃんのステータスは成人男性の数十倍だぞ?ポテト一本ごときで身体に影響がある訳なかろう。』

 むっ、確かにそう言われると大丈夫な気がするな。まあポテト一本くらいならいっか。俺はポテトを一本手に取り、恐る恐るれいちゃんの口にポテトを近づける。

 喉が詰まったりしたらどうしようと心配したが時既に遅し、ポテトはれいちゃんの口内へと吸い込まれていた。

「れ、れいちゃん……」

 俺の心配を他所に、れいちゃんは存在しない歯でポテトを美味しそうにはむはむしている。どうやら大丈夫みたいだけどーそれでも怖いから当分は離乳食のままだな。

「あぅー」

 れいちゃんはどうやらもう一本欲しそうにしてるけど、リスクは取りたくない。子供のリスクマネジメントも親としての義務なのだから!

 さて、俺も食うとするか。まずは念願のビッグハックをガブリと一口。

「う、うんまぁ」

 余りの美味しさに思わず声が出てしまったよ。肉汁溢れるパティに絡まるとろけるチーズ。新鮮な野菜のシャキシャキとした歯切れのよさ。パティの埋もれるような弾力。

 ああ、最高。これが食べたかったんだよな。

 そして一口一口の合間に挟むポテト。これがたまらない。そして念願の炭酸飲料!コーラよ。幸せだなぁ。

「あぅ。」

 れいちゃんも美味しそうにプレミアム離乳食を食べてるし、一家全員満足だな。朝ご飯を食べ終わると、俺たちは部屋を片付けて、早速出発することにした。

『しかし我も口があれば寿司なる物を食べてみたいものよ。』

 外に出た矢先、神威が突然すごいことを言い出す。寿司?なんでお前が「寿司」を知ってるんだよ。

『ああ、それか。お前の記憶を読ませてもらってな、「日本」とかいう異国の食事に随分と惹かれたよ。寿司とラーメンが我のお気に入りだな。』

 おい!勝手に記憶を覗くなよ!プライバシーの侵害だろ!

『うるさい!そんな細かいこと言ってると恵に言いつけるぞ!』

 神威テメェ俺の女房を呼び捨てにしやがったな。恵「さん」だよ!「さん」をつけろ!

『はいはい、わかったわかった。』神威がぶっきらぼうに答える。

 クッソ、絶対今日この刀へし折ってやる。常時神威に思考、並びに記憶まで筒抜けとは、気が狂いそうだぜ。

『それより、なぜギルドに向かってるんだ?』

 まあ昨日の今日でまだ疲労が溜まってるから流石に依頼を受けるのは少し辛い。だったら一体何をしに来たのかーその答えはズバリ、

「仲間探しさ!」

「あぅ?」

 おっと、思いっきり声に出てしまっていたようだな。そうだ、今日の目的は仲間探しだ。つい最近気づいたんだが、俺が戦闘時、れいちゃんを守ってあげられる人がいない。

 特に武闘大会のように、俺一人だけが戦闘中の時はれいちゃんを守ってやれない。あの時はバンさんがいたから良かったものの、もしいなかったらどうなっていたことか。

 という訳で、ギルドに併設している酒場で強そうなソロ冒険者を見つけようとしてるんだけど……

 全く見当たらない。そもそもソロ冒険者が見当たらない。これじゃあ八方塞がりだ。こうなったら、ギルドのお姉さんに強靭なソロ冒険者を紹介してもらおう!

 という訳で暇そうに居座っていた受付嬢にこの旨を説明したのだが、

「ユウマさん、そんなこと不可能に決まってるじゃないですか。」

 受付嬢は呆れた表情を見せて言い放った。は?不可能?一体どういうこと?

「はぁ、その様子だと分かってないんですね。」

 俺の引き攣った表情を見た受付嬢は更に丁寧に説明してくれる。

「いいですか、そもそも冒険者は基本的にパーティ運営です。ソロパーティなんて命知らずの馬鹿か、本当の強者くらいですかね。つまり、ここで仲間を探すのはほぼ不可能です。」

「しかも厄介なことにそういうソロパーティの強者は皆クセが強くて、群れることは絶対あり得ないんですよね。おかげでこっちも大変で……」

 ギルドまでもがそのソロパーティとの付き合いで苦労しているとなると、引き入れられそうにないな。さてどうしたことか。

「れいちゃん、どうしようかな。」

 腕の中でぐっすりと眠るれいちゃんのほっぺをツンツンしながら考える。

「ユウマさん、そこで提案なんですけど奴隷市に行ってみてはどうでしょう?」

「奴隷市ですか。」

「アストレア王国の奴隷市は結構大きくてですね、多種多様な奴隷がいますので、お望みの奴隷がいるかと思いまして。」

 奴隷市か。まぁギルドで仲間を探そうとしても埒が明かないし、一度受付嬢の助言を聞いてみるのもアリかもしれないな。

「なるほど、じゃあ一度出向いてみることにします。」

「じゃあ地図と紹介状をお渡ししておきますね。」

 受付嬢は慣れた手つきで紹介状を書き終え、地図と一緒に渡してくれた。

「これで大丈夫ですか?」

「はい、ありがとうございました!」

「あぅ!」

 れいちゃんと共にギルドを出ると、早速地図を見ながら奴隷市へと出発した。
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