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第一章
帰還
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ダンジョンから無事地上へと帰還した俺たちは、盛大な拍手で迎えられると思いきや。
シィーン。
みんな俺たちのこと見向きすらしない。おかしいだろ!20年以上突破されなかったダンジョンを1日で攻略したんだぞ!もうちょっと騒いでもいいだろ。
しかもだ、俺の左手ないんだぜ!普通片手のない、血だらけの人を見たら声くらいかけるだろ!
「あぅあぅ……」
ん?しょうがないって?そんなこと言われてもなぁ。まあ、とりあえずギルドに一度戻って腕やらを治してもらうとするか。ドロップ品の買取もしてもらわなきゃいけないし、まずはギルドだな。
という訳で、俺たちはギルドに向かうことにした。
***
「えっと、ユウマ様どうなされたのですか、その腕?」
俺の姿を見た受付のお姉さんが、ドン引きしながら話しかけてくる。いや、そんな引いた顔しなくたっていいだろ!俺だって好きで片腕ない訳じゃねーんだよ!
「ああ、ちょっと切り刻まれちゃって。これって治りますかね?」
「うーん。多分上級ポーションなら治りますけど、少々値が張るんですよね。」
「具体的にはどれくらいですかね?」
「うーん、金貨五枚ですかね。」
金貨五枚か、確かに高いな。でもダンジョンからの収入も見込めるし、そんなに金に困ってる訳でもないからな。
「じゃあお願いします。」
金貨五枚を払うと、受付のお姉さんが赤色のポーションを俺に渡した。
「ユウマ様のおかげで、ザクシュ草の在庫が潤ってますからね。上級ポーションも最近はかなり出回るようになったんですよ。」
どうやら上級ポーションは相当貴重なものらしく、この代物を使うのはせいぜい王族か上級貴族だという。
ポーションを腕にかけると、俺の無くなったはずの左腕がみるみるうちに生えてくる。おー、流石上級ポーションだな。
『くっ、我がつけた傷が治っていく……』
神威がうるさいな。性能は申し分ないし、妖刀神威まで売るつもりはなかったんだけど、こんなごちゃごちゃ喋るなら売ってしまった方がいいかもなー
『嘘!嘘だって!我が悪かった。』
いや、分かればいいんだよ、分かれば。さて、腕も完治したことだし、ドロップ品を買い取ってもらうとするか。
「あ、そういえば、ダンジョンを制覇したのでその時のドロップ品を買い取ってもらえませんかね?」
「え?今なんと?」
「えっと、ダンジョンを制覇したのでー」
「う、嘘でしょ!」
「い、いや嘘じゃないですけど!」
「しょ、証拠品はありますか?」
「あぅ!」
れいちゃんは微笑みながら妖刀神威を指差す。かわいいな。
「あ、あぁ!ぎ、ギルドマスターを呼んできますので、少しお待ちください!」
そう言って受付のお姉さんは奥の方に引っ込んでしまった。これだよ。こういう反応を見たかったんだよ!
「ユウマ様ですね!どうぞこちらへ!」
ギルドマスターらしき人物が慌てて手を招いている。ギルドマスターは、筋骨隆々の獣人族のおじ様だった。
応接室に案内された俺たちはギルドマスターと向かい合うように座る。
「私が冒険者ギルドのギルドマスターをしております、ガーレンと申します!」
「あ!俺はユウマです。」
「あぅあぅあ!」
「はっはっは!かわいいお子さんですな!」
「そうですね、本当にかわいいです。」
マフィアみたいな見た目とは裏腹に、ガーレンさんは悪い人ではなさそうだ。逆になかなか温厚で好感の持てる人だ。
あとなぜかバンさんと同じ属性を感じる。
「で、ユウマ殿。ダンジョンを制覇したと聞いたのですが、本当なんですか?」
「一応そうなりますね。この刀がボスのドロップ品です。」
「それが、ですか。確かに只ならぬ刀だということは伝わってきますな。見た所何か特殊な効果が付与されてるみたいですな。」
「もしかしてガーレンさんって鑑定スキルをお持ちで?」
「はっはっ、そんな訳ありませんよ。鑑定スキルなんて過去の英雄や勇者くらいじゃないと持ってませんもの!ただ我ら獣人族は観察眼が優れていまして、武器を見ればそれがどんな性能をしているかある程度分かるのですよ。」
なるほど、獣人族ならではって感じだな。
「それにしてもあの難関ダンジョンを1日で制覇してしまうとは……」
「いえいえ、たまたまですよ。」
「たまたまと言われましてもな、キマイラの討伐やザクシュ草の採取。そして終いにはダンジョンの制覇。これらを数日間の内に行われてしまうと、流石のギルドでも少し思うところがありまして……」
「思うところ?」
「あぅ?」
「はい。これほどの実力を見せつけられた以上、ユウマ様一行を金ランクへと昇格したいと思っていまして。」
よっしゃ!こりゃ願ったり叶ったりだ。白銀冒険者とは行かなくても、金冒険者になれば元の世界に戻る方法についての情報が少なからず入ってくるはずだ。
「ただ、歴が浅い冒険者をいきなり昇格させると他の冒険者からの風当たりが強くて……そこでですね、今週開催される武闘会に参戦して欲しいんです。」
「……え?」
ガーレンさんの話によると、今週末、アストレア王国最強の戦士を決める武闘会が開催されるらしい。その武闘会で三位以内に入れば昇格を行うそうだ。
「あぅあぅ!!」
れいちゃんはどうやら乗り気みたいだ。この異世界に来てからか分からないけどれいちゃんってなかなか好戦的だよな。
正直言って戦いたくないんだけど、れいちゃんがやりたいならしょうがない。まあ週末まであるし、休む時間もたっぷりあるから別にいいか。
「わかりました。その武闘会に参戦します。」
「おぉ!ありがとうございます!」
という訳で、俺たちは武闘会に参戦することになった。
「あ、そういえば魔法や魔剣の使用は禁止ですからね。」
……え?つまり魔剣ディアボロスは使えないと。武闘会で三位以内になれるか、いきなり不安になってきた。
まあ、やるだけやってみるか……
シィーン。
みんな俺たちのこと見向きすらしない。おかしいだろ!20年以上突破されなかったダンジョンを1日で攻略したんだぞ!もうちょっと騒いでもいいだろ。
しかもだ、俺の左手ないんだぜ!普通片手のない、血だらけの人を見たら声くらいかけるだろ!
「あぅあぅ……」
ん?しょうがないって?そんなこと言われてもなぁ。まあ、とりあえずギルドに一度戻って腕やらを治してもらうとするか。ドロップ品の買取もしてもらわなきゃいけないし、まずはギルドだな。
という訳で、俺たちはギルドに向かうことにした。
***
「えっと、ユウマ様どうなされたのですか、その腕?」
俺の姿を見た受付のお姉さんが、ドン引きしながら話しかけてくる。いや、そんな引いた顔しなくたっていいだろ!俺だって好きで片腕ない訳じゃねーんだよ!
「ああ、ちょっと切り刻まれちゃって。これって治りますかね?」
「うーん。多分上級ポーションなら治りますけど、少々値が張るんですよね。」
「具体的にはどれくらいですかね?」
「うーん、金貨五枚ですかね。」
金貨五枚か、確かに高いな。でもダンジョンからの収入も見込めるし、そんなに金に困ってる訳でもないからな。
「じゃあお願いします。」
金貨五枚を払うと、受付のお姉さんが赤色のポーションを俺に渡した。
「ユウマ様のおかげで、ザクシュ草の在庫が潤ってますからね。上級ポーションも最近はかなり出回るようになったんですよ。」
どうやら上級ポーションは相当貴重なものらしく、この代物を使うのはせいぜい王族か上級貴族だという。
ポーションを腕にかけると、俺の無くなったはずの左腕がみるみるうちに生えてくる。おー、流石上級ポーションだな。
『くっ、我がつけた傷が治っていく……』
神威がうるさいな。性能は申し分ないし、妖刀神威まで売るつもりはなかったんだけど、こんなごちゃごちゃ喋るなら売ってしまった方がいいかもなー
『嘘!嘘だって!我が悪かった。』
いや、分かればいいんだよ、分かれば。さて、腕も完治したことだし、ドロップ品を買い取ってもらうとするか。
「あ、そういえば、ダンジョンを制覇したのでその時のドロップ品を買い取ってもらえませんかね?」
「え?今なんと?」
「えっと、ダンジョンを制覇したのでー」
「う、嘘でしょ!」
「い、いや嘘じゃないですけど!」
「しょ、証拠品はありますか?」
「あぅ!」
れいちゃんは微笑みながら妖刀神威を指差す。かわいいな。
「あ、あぁ!ぎ、ギルドマスターを呼んできますので、少しお待ちください!」
そう言って受付のお姉さんは奥の方に引っ込んでしまった。これだよ。こういう反応を見たかったんだよ!
「ユウマ様ですね!どうぞこちらへ!」
ギルドマスターらしき人物が慌てて手を招いている。ギルドマスターは、筋骨隆々の獣人族のおじ様だった。
応接室に案内された俺たちはギルドマスターと向かい合うように座る。
「私が冒険者ギルドのギルドマスターをしております、ガーレンと申します!」
「あ!俺はユウマです。」
「あぅあぅあ!」
「はっはっは!かわいいお子さんですな!」
「そうですね、本当にかわいいです。」
マフィアみたいな見た目とは裏腹に、ガーレンさんは悪い人ではなさそうだ。逆になかなか温厚で好感の持てる人だ。
あとなぜかバンさんと同じ属性を感じる。
「で、ユウマ殿。ダンジョンを制覇したと聞いたのですが、本当なんですか?」
「一応そうなりますね。この刀がボスのドロップ品です。」
「それが、ですか。確かに只ならぬ刀だということは伝わってきますな。見た所何か特殊な効果が付与されてるみたいですな。」
「もしかしてガーレンさんって鑑定スキルをお持ちで?」
「はっはっ、そんな訳ありませんよ。鑑定スキルなんて過去の英雄や勇者くらいじゃないと持ってませんもの!ただ我ら獣人族は観察眼が優れていまして、武器を見ればそれがどんな性能をしているかある程度分かるのですよ。」
なるほど、獣人族ならではって感じだな。
「それにしてもあの難関ダンジョンを1日で制覇してしまうとは……」
「いえいえ、たまたまですよ。」
「たまたまと言われましてもな、キマイラの討伐やザクシュ草の採取。そして終いにはダンジョンの制覇。これらを数日間の内に行われてしまうと、流石のギルドでも少し思うところがありまして……」
「思うところ?」
「あぅ?」
「はい。これほどの実力を見せつけられた以上、ユウマ様一行を金ランクへと昇格したいと思っていまして。」
よっしゃ!こりゃ願ったり叶ったりだ。白銀冒険者とは行かなくても、金冒険者になれば元の世界に戻る方法についての情報が少なからず入ってくるはずだ。
「ただ、歴が浅い冒険者をいきなり昇格させると他の冒険者からの風当たりが強くて……そこでですね、今週開催される武闘会に参戦して欲しいんです。」
「……え?」
ガーレンさんの話によると、今週末、アストレア王国最強の戦士を決める武闘会が開催されるらしい。その武闘会で三位以内に入れば昇格を行うそうだ。
「あぅあぅ!!」
れいちゃんはどうやら乗り気みたいだ。この異世界に来てからか分からないけどれいちゃんってなかなか好戦的だよな。
正直言って戦いたくないんだけど、れいちゃんがやりたいならしょうがない。まあ週末まであるし、休む時間もたっぷりあるから別にいいか。
「わかりました。その武闘会に参戦します。」
「おぉ!ありがとうございます!」
という訳で、俺たちは武闘会に参戦することになった。
「あ、そういえば魔法や魔剣の使用は禁止ですからね。」
……え?つまり魔剣ディアボロスは使えないと。武闘会で三位以内になれるか、いきなり不安になってきた。
まあ、やるだけやってみるか……
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