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オーストラリア奪還計画

第二十一話「私も連れて行って!」

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 オーストラリア奪還計画その本部に一報か流れ込んだ。

 「おい!綾瀬!また神崎の奴が大変な事をやらかしそうだ。急いで他のメンバーに至急連絡してくれ!あいつの事だから心配は要らないと思うが一応追いかけて欲しい」

 徒木章は神崎定進が一人で謎の光の方角へ調査しに出たという報告を受けてから即座に隣の部屋に居た上浦綾瀬を起こしたのだ。

 「わっなんですか?あ、いえ報告ですね。あの人はやっぱりこういう事になりましたか。隣の部屋で寝ていて正解です。それで、連絡は隊長であるソフィアさんとアリシアさんと多田くんだけ大丈夫ですか?」

 上浦綾瀬の質問に徒木章は無言で頷き返す。それを受けて上浦綾瀬は自身と徒木章、ソフィア、アリシア、多田充、一応神崎定進にも繋げてみるが繋がらない。

 「扱いにくい人たち…あ、いえ各班の班長の皆さん。何をされているか分かりませんが突然すみません。神崎くんがこんな夜中に単騎で作戦に出たようなので追いかけられる人はすぐに追いかけてください。皆さんにパスは繋げてありますので、向かう向かわないの返答はお願いします」

 その能力による呼び掛けに三名は即座に返答を返す。

 「相変わらずびっくりするなぁ。そして俺は無理だ。糸じゃどうやってもアイツには追いつけないし、今はちょっと他の奴らと大事な用事をしてる。どうせ日本の希望神崎定進さんはいい成果を持って来るのかオチだしな」

 多田充は誰よりも早く拒否

 「へぇ、すごいね。エミリーには届いてないみたい。それで、本題だね。ボクとエミリーは今すぐにでも向かうよ!」

 「こちらはアリシアです。私達も直ぐに向かえます」

 ソフィアとアリシアの二名は多田充に対して即座に急行すると返事を返す。

 「じゃあ。二班ともあいつの事は頼んだ」

 徒木章のその言葉を最後にパスは切れる。

 「さてと、エミリー行こうか。穂月ちゃんは待ってた方が良いかもしれないね」

 神崎定進が津田穂月を連れて行かなかったという事は連れて行くべきでは無いと判断したのか、行こうと思った時に居なかったから一人で行ってしまったのか。

 もし危険が及ぶのなら付与の思考加速は必ず役に立つ。それに役立たずと思われているならちょっと癪。

 「いえ、私も連れて行って!ください」

 津田穂月は、まっすぐにソフィアの目を見てそう言う。

 「なんだかわからないけど、穂月ちゃんの意思?みたいなのはよく伝わったよ!ボク達と一緒に行こう!まぁウチの秘密になっちゃうけどきっと大丈夫」

 ソフィアは津田穂月に手をさし伸ばして基地内の秘密の場所へと連れていく。

 「ここは秘密の場所。と言っても別に大したことも無いんだけどね」

 案内された先にはアリシア班の面々も揃っていた。

 「お!君達もやっぱりいたね。高速移動と言えばここだからね」

 津田穂月はここに居る人達、その中で一人帽子を深く被った男から警戒をより深く感じた。機密事項に関係の無い津田穂月が抵触している訳で普通な当然の反応であり、彼はすかさず手を翳して棒状の光線を飛ばしてそれで津田穂月を捕縛する。

 「いやぁ、ソフィアちんさぁ、その娘連れてくるのはまずいんじゃない?まぁソフィアちんはそういう娘だとしても、エミリーちんは何故止めなかったのかなぁ?」

 低い声でそう問い詰める。

 「ソフィアを止めようと思うなら、説得ではなく力ずくになります。それが時間の無駄と思ったまでです」

 顔色一つ変えずにエミリーはそう返す。

 そんな少しの緊張状態を打破する為に動いたのはアリシアだった。

 「でも、穂月さんは定進さんと同じ班のメンバーなのでしょう?助けに行こうと思うのは当然ではありませんか?それにソフィアさんの行動の自由は認められています」

 アリシア班の面々も班長がそう言えば何も言い返せない。

 それに津田穂月にも言いたいことはあった。

 「もちろん私も一緒に行く以上お荷物にはなりません。私の付与の能力で皆さんをサポートできます!」

 津田穂月は能力を発動する。仄かな光がここに居る全員を包む。身体強化、能力強化、思考加速その三つを発動してみせる。

 「おぉすごいねこれは、まさか関係ない私にまで能力をかけてくれるとは。発射の準備が早く出来そう」

 眼鏡をかけた小柄な少女、彼女もアリシア班のメンバーかと思っていたが違っていた。少女は更に続ける。

 「自己紹介と思ったけど、今は急いでいるんでしょう?二回に分ける必要があるけど、どう分ける?」

 「うぅんそうだね、戦力的に言えばアリシア班とボクが行くのがベストなのかも知らないけど、ここは先に穂月ちゃんに行かせてあげて!一番心配してるのは彼女だろうしね」

 ソフィアはグッドサインを掲げながら促す。

 「分かりました。津田穂月さん貴方の安全はこのアリシアとその班員が保証致します。安心して着いてきてください」

 その後アリシアに手を引かれ津田穂月は六人乗りのポットへと案内される。

 「これはいったい何ですか?」

 乗り物だろうとは察しが着いていたが、どんな乗り物かまでは想像がつかなかった。円形に配置された椅子。全員が座ると緩めのシートベルトをつけるよう促される。

 「さてと、私の能力で中に水を充満させるけど心配しないで。水中呼吸が可能な水を出すからこの水の中でも呼吸可能!それにこれで加速度を抑えられるってわけさ」

 それだけ言って躊躇なく眼鏡の少女は能力を発動して水を流していく。強化された能力はみるみるうちにポット内を水で満たしていく。呼吸を出来ると聞いたが恐怖がある。それでも意を決して水を吸い込む。

 それは不思議な感覚で、気管を水が埋めつくしていく感覚はあるが、苦しいや痛いと言った感覚はない。

 そんな水中呼吸状態となったのも束の間、ポットは激しい轟音を立てている。伝わってくる揺れからそれが発進したものだと気づく。これで終わりではなく、津田穂月はこの後にこそ一番の驚きを味わう。

 突如朝より少し暗い位の空が広がっている。そして、水と津田穂月とアリシア班のメンバー諸共落ちている。咄嗟に上げた悲鳴は水の中では声にならない。すぐ後にさっきまであった水は消えていた。それによって落下していることを確信させる。

 高所は神崎定進との飛行で慣れているが今はそれとはまた違う。飛行ではなく落下している。

 「まぁまぁ、穂月ちん安心しな。光線レイを使えば浮遊できるからこれを使えば落ちないさ」

 津田穂月を包んだ光の輪は地上近くで減速していく。津田穂月は大きな竜と戦っているとにかく早く能力で援護しなければと言うことでいっぱいで、無意識に表情は暗くなっていた。

 「先輩!大丈夫ですか?」

 付与の能力は津田穂月の存在の認知が果たされることで能力の適応対象となる。もちろん津田穂月を見るだけ、声を聞くだけでも能力は発動するがより深く意思疎通を果たす事でより強い効果となる。呼びかけて返事が返って来れば一段階強力な効果を発揮する。

 津田穂月の呼びかけに気づいた神崎定進は余裕のない表情で振り返る。

 「余計なリスクが増えたな」

 神崎定進がそう返事をした一瞬。素早い竜の攻撃が神崎定進を補足していた。この一瞬では能力を発動しての援護は間に合わない。

 「危ない!」

 近くにいたアリシアが叫んでいた。そして、その声をかき消すように神崎定進は竜の長い首に打たれて吹き飛ぶ。まだ神崎定進に意識があれば能力が繋がったはずであり、落ちながらも回復ができるはず。

 「先輩!」

 およそ助からないであろう高速で近くの地面に激突した神崎定進を追うように全員が走り出した。
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