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オーストラリア奪還計画
第十二話「新たな住人」
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神崎邸に新しい同居人が現れました。その娘は少し小柄で細身、少しウチに巻いたミディアムヘアの髪の色と同じ青色の大きな眼鏡をかけた、見た目もその雰囲気もいわゆる文芸少女の様。
彼女も津田穂月もそうなのだが、屋敷の事をよく手伝って下さる。別にそんな事は私達の仕事なのでしなくて良いと誰が言おうと二人共頑固に手伝いを辞めないため、いつも私達が折れている。
「優香さん、おはようございます」
朝は屋敷の廊下を掃除していた所にいつも彼女は声を掛けてくる。本田綾乃がここに住まう事になって今日で五日目の朝だが、毎日同じ時間に起きてくるとても健康的な生活をしている娘だ。
「おはようございます綾乃さん」
私は一度その手を止めて、彼女の方を振り返り軽く会釈をしながら挨拶を返す。もうこのやり取りも五回目で慣れてしまった。
「綾乃さん、本日のご予定は何か?」
そして私が予定の確認を行う。ここまでは、少し言い回しが違うかも知れないが毎日同じ様なやり取りをしている気がする。しかし今日は土曜日なので彼女に学校は無いのでここからの返答はいつもとは違うだろう。
「今日は学校がお休みなので、これから街の方まで行こうと思っているんです」
嬉しそうに彼女は私にそう告げてくれた。そう言えば今日の彼女の服装は既に寝間着から着替えている。日本の国土人口減少により街と道以外はその殆どが山や森になっており、他県に比べればまだ東京は自然化は薄いが学校や家の周りは自然に囲まれている。
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
そして私は彼女をお見送りした。
その時はまだ単なるメイドの優香には何故本田綾乃がこの屋敷に住むことになったかまでは知らされていなかった。もし知らされていたのならここで本田綾乃を引き止めていただろう。
嬉しそうに屋敷を出た本田綾乃を、凝視する男。その後腕に巻いた通信機器を口元まで持ってくる。
「あの屋敷の人間に他に青髪はいない、という事は…。ターゲットが屋敷の外へ出た。これより尾行を開始する位置情報を確認して交代地点を確定してくれ」
男は仲間と共に本田綾乃の誘拐を企てていた。少し経つと同じ通信機器を腕に巻いた仲間と交代して怪しまれないように尾行する。屋敷の人間が見回っている範囲を抜けた所で捕らえ、山奥にある拠点まで運ぶ。
「ターゲットも神崎定進と同じ学校の生徒である以上何らかの異能があると予想される。警戒して確保するんだ」
誘拐を実行する道路に待つ車両。その中で待機する男三人の持つ通信機器から聞こえて来るのは集団の指揮者の声だ。
「了解。ターゲットに接近する」
尾行をしていた男はそう言って本田綾乃との距離を縮め、それは車の中からでてきた二人から逃げられない様に逆側から挟む為にだった。
それを見て車を本田綾乃の横につける。
「よし、準備完了」
車に乗っていた二人の男は勢いよく飛び出して、尾行していた男と共に本田綾乃を確保に動いた。本田綾乃の能力は思考加速であり、即座に状況は理解出来た。逆に自分が絶望的な状況に置かれている事も分かってしまった。力ない彼女に為す術もなかった。
車に乗せられ人一人いない道を更に奥へ抜けて森の奥深くを目指して走っていく車。携帯電話は取り上げられてしまった。身体は束縛具で拘束されて身動きは取れない上に目も塞がれた。状況を打開する為には怖がっている暇があるなら逃げ出す為に情報を得なければならない。
「にしても簡単に誘拐出来て良かった。戦闘系の能力なら勝てなかったかも知れないしな」
その発言から分かるのは誘拐をした者達に秀でた戦闘能力は無いと言う事。でもこれはか弱い本田綾乃が抜け出すためには役立たない。
「この前別の仲間が津田穂月を誘拐しようとした時は直ぐに撃退されてしまったみたいだが、今回奴はいない。十分時間はあるから遠くまで運べるな」
神崎定進と何かしらの関係を持てば危険が及ぶとは聞いていたが、まさか五日目で誘拐に遭うとは予想していなかった。しかし、目的はやはり神崎定進と戦う為の人質だろう。
「でもこの女結構可愛いよな?ちょっとくらいイタズラしてもいいかな?」
それは本田綾乃が一番聞きたくない発言だった。
「まだ辞めておけ。確かに生きてさえいれば神崎定進に有効に使える。それに酷い目にあった事を知れば尚のこと奴は言うことを聞くだろうけど、とりあえずアジトに着いてからにしろ」
どれくらいの時間車で移動しているかは分からないが、その移動が終わって誘拐犯のアジトにつけはめちゃくちゃにされてしまうのだろう。その話を聞いてからはもうどれだけ考えても恐怖で頭が埋まってしまう。そんな事想像もしたくない。
恐怖に支配た本田綾乃はあれからもうどれほど経ったかも分からないし、まだ東京に居るのかも分からない。視覚情報がない為時間の検討もつかないまま車は停止した。
「ほら、大人しく降りろ」
どこかで抜け出さなければならない。建物の中に入る前に抜け出した方が良い。使ってしまえば神崎定進の身動きが取れなくなってしまう。強姦されてしまうだろうし、生きて捕まっているよりも死んでしまった方がまだ良い。
何も見えない中本田綾乃は勇気をだして走り出した。見えない恐怖と戦いながら。
「おい!捕まえて麻酔を投与しろ!」
手を縛られて目隠しで走る本田綾乃はフラフラで、男達は直ぐに追いつき、抵抗する本田綾乃に無理矢理麻酔薬を投与した。
彼女の意識は薄れて、消える。
彼女も津田穂月もそうなのだが、屋敷の事をよく手伝って下さる。別にそんな事は私達の仕事なのでしなくて良いと誰が言おうと二人共頑固に手伝いを辞めないため、いつも私達が折れている。
「優香さん、おはようございます」
朝は屋敷の廊下を掃除していた所にいつも彼女は声を掛けてくる。本田綾乃がここに住まう事になって今日で五日目の朝だが、毎日同じ時間に起きてくるとても健康的な生活をしている娘だ。
「おはようございます綾乃さん」
私は一度その手を止めて、彼女の方を振り返り軽く会釈をしながら挨拶を返す。もうこのやり取りも五回目で慣れてしまった。
「綾乃さん、本日のご予定は何か?」
そして私が予定の確認を行う。ここまでは、少し言い回しが違うかも知れないが毎日同じ様なやり取りをしている気がする。しかし今日は土曜日なので彼女に学校は無いのでここからの返答はいつもとは違うだろう。
「今日は学校がお休みなので、これから街の方まで行こうと思っているんです」
嬉しそうに彼女は私にそう告げてくれた。そう言えば今日の彼女の服装は既に寝間着から着替えている。日本の国土人口減少により街と道以外はその殆どが山や森になっており、他県に比べればまだ東京は自然化は薄いが学校や家の周りは自然に囲まれている。
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
そして私は彼女をお見送りした。
その時はまだ単なるメイドの優香には何故本田綾乃がこの屋敷に住むことになったかまでは知らされていなかった。もし知らされていたのならここで本田綾乃を引き止めていただろう。
嬉しそうに屋敷を出た本田綾乃を、凝視する男。その後腕に巻いた通信機器を口元まで持ってくる。
「あの屋敷の人間に他に青髪はいない、という事は…。ターゲットが屋敷の外へ出た。これより尾行を開始する位置情報を確認して交代地点を確定してくれ」
男は仲間と共に本田綾乃の誘拐を企てていた。少し経つと同じ通信機器を腕に巻いた仲間と交代して怪しまれないように尾行する。屋敷の人間が見回っている範囲を抜けた所で捕らえ、山奥にある拠点まで運ぶ。
「ターゲットも神崎定進と同じ学校の生徒である以上何らかの異能があると予想される。警戒して確保するんだ」
誘拐を実行する道路に待つ車両。その中で待機する男三人の持つ通信機器から聞こえて来るのは集団の指揮者の声だ。
「了解。ターゲットに接近する」
尾行をしていた男はそう言って本田綾乃との距離を縮め、それは車の中からでてきた二人から逃げられない様に逆側から挟む為にだった。
それを見て車を本田綾乃の横につける。
「よし、準備完了」
車に乗っていた二人の男は勢いよく飛び出して、尾行していた男と共に本田綾乃を確保に動いた。本田綾乃の能力は思考加速であり、即座に状況は理解出来た。逆に自分が絶望的な状況に置かれている事も分かってしまった。力ない彼女に為す術もなかった。
車に乗せられ人一人いない道を更に奥へ抜けて森の奥深くを目指して走っていく車。携帯電話は取り上げられてしまった。身体は束縛具で拘束されて身動きは取れない上に目も塞がれた。状況を打開する為には怖がっている暇があるなら逃げ出す為に情報を得なければならない。
「にしても簡単に誘拐出来て良かった。戦闘系の能力なら勝てなかったかも知れないしな」
その発言から分かるのは誘拐をした者達に秀でた戦闘能力は無いと言う事。でもこれはか弱い本田綾乃が抜け出すためには役立たない。
「この前別の仲間が津田穂月を誘拐しようとした時は直ぐに撃退されてしまったみたいだが、今回奴はいない。十分時間はあるから遠くまで運べるな」
神崎定進と何かしらの関係を持てば危険が及ぶとは聞いていたが、まさか五日目で誘拐に遭うとは予想していなかった。しかし、目的はやはり神崎定進と戦う為の人質だろう。
「でもこの女結構可愛いよな?ちょっとくらいイタズラしてもいいかな?」
それは本田綾乃が一番聞きたくない発言だった。
「まだ辞めておけ。確かに生きてさえいれば神崎定進に有効に使える。それに酷い目にあった事を知れば尚のこと奴は言うことを聞くだろうけど、とりあえずアジトに着いてからにしろ」
どれくらいの時間車で移動しているかは分からないが、その移動が終わって誘拐犯のアジトにつけはめちゃくちゃにされてしまうのだろう。その話を聞いてからはもうどれだけ考えても恐怖で頭が埋まってしまう。そんな事想像もしたくない。
恐怖に支配た本田綾乃はあれからもうどれほど経ったかも分からないし、まだ東京に居るのかも分からない。視覚情報がない為時間の検討もつかないまま車は停止した。
「ほら、大人しく降りろ」
どこかで抜け出さなければならない。建物の中に入る前に抜け出した方が良い。使ってしまえば神崎定進の身動きが取れなくなってしまう。強姦されてしまうだろうし、生きて捕まっているよりも死んでしまった方がまだ良い。
何も見えない中本田綾乃は勇気をだして走り出した。見えない恐怖と戦いながら。
「おい!捕まえて麻酔を投与しろ!」
手を縛られて目隠しで走る本田綾乃はフラフラで、男達は直ぐに追いつき、抵抗する本田綾乃に無理矢理麻酔薬を投与した。
彼女の意識は薄れて、消える。
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