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文芸部での一学期

部長とのデートその伍

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俺と部長はその後昼食を食べて、残りの二湯に入り後はもう後は帰るだけとなった。

「部長、今日は楽しかったですね。」

二人で今まで上がってきた山道を下りながら俺は部長にそう言った。

「うん、そうだな。そしてまたみんなで来る時にもスムーズに動けそうだし本当に良かったよ。」

さて、俺は最後にしないといけない事がある。

初めの温泉に入る前に買っておいたヘアピンを部長に渡さないとならない。

ここに連れてきてくれた部長に、何もできないのは申し訳ないから。それに、普段から部長には良くしてもらっているし。

「部長部長、最後に少しいいですか。」

まずは部長に話しかけてみる。改めてみると渡すのが結構恥ずかしいんだよな。

「ん?どうしたんだ飛岳君。」

もちろん部長は呼びかけに応じてこちらを向いた。

「え、えっとですね。少し目を瞑ってもらっていいですか。」

少し固まった後に返事が帰ってきた。

「わ、わかった。」

そして、部長は目を瞑る。すると辺りが静かになった気がする。

「それで何をするのかな飛岳君。」

部長をあまりそのままにするわけにもいかないし、もうパッと渡すしかない。

俺は右手で買っておいたヘアピンを取り出して、部長の右手を左手に取った。

「わ、え。」

と、驚きの声を漏らした部長を無視して、俺はヘアピンを部長の右手の平に乗せる。

「もう、開いてもらっていいですよ。」

目を開いた部長は右手に乗っているヘアピンを見ながら訊ねた。

「こっこれは、どうしたの。」

恥ずかしかったので俺はよそを見ながらその問いかけに答える。

「なんか、いつも部長には良くしてもらっているので、何かプレゼントしようかななんて思いました。」

渡したヘアピン喜んでくれてるかな。あまり嬉しくなかったらどうしよう。

「あ…。」少しの間部長が固まった。

「ほっ本当にありがとう飛岳君。早速これは付けさせてもらうよ。」

そして、部長は俺が渡したヘアピンを使い髪を留める。
そして、部長の髪で隠れていた左耳が見えた。

なんだか、ヘアピンを付けた部長は俺の感性でいつもよりも可愛いかった。



「俺は部長がそのヘアピンでそういう風に留めている方が好きですよ。」

「じゃあこれからはこうすることにするよ。」

そんなやり取りなんかをしながら俺と部長は帰路につき、そして帰宅した。
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