22 / 28
魔王死空は血に染まる。残る刃は天地を穿つ
ルヒィアの想い
しおりを挟む
ルヒィアは知っていた。エルドラの命を使わずとも、神アスティルの力を借りれば魔王ガヴァを倒せた事を。誰も死なぬままに事を済ませられた事を。
しかしながら、ルヒィアはあえてそれをしなかった。
女神ルヒィアの知る所、神アスティルの力は絶大な物に至る。
それは人には大き過ぎる力だと判断するだろう。アスティルがセンに力を授ける代わりに要求するのはその自我。その自我の代わりにセンの肉体は力を得ることになる。
それではセンが神の力を得た事にはならない。そうなればセンと言う人格は死んでしまう事になる。
女神ルヒィアはセンを喪いたくなかった。その為にセンに神の力の事を教えなかった。
そして、きっとセンならば魔界の主ティルムと契約を果たし、その力を手に入れる事が出来たが、命を引き換えにする契約をさせたくはなく、エルドラを魔界へと行かせた。恐らくもうそこ事について薄々センも感づいているだろうと思っていた。
「ルヒィア、降りてきてほしい」
「言いたい事は分かっています」
「思っている通りだろう…」
「ですが、私はそれを認める訳にはいきません!」
センはきっと神界へと連れて行って欲しい筈、そこで神を殺す。確かに神をも殺せる程の力をセンから感じる。
しかし、同様に神も今のセンを殺す事が出来る。
このままではいけない。
「お願いだ!行かせてくれ」
それはできない。今のセンには勝てる確証がない。
「今のままでは、勝てる確証がありません!殺せないのに神の元に連れて行く事はできません!」
「でも、俺は神を殺すんだ…」
センは力なくそう囁くように言葉を落とした。
神に勝つ方法を知っている。その方法ならば、確実に神に勝つ事ができる。
しかし、センの背負う重荷をもう、ルヒィアには背負えなくなる。
ここでお別れとなる。
「少し…目を瞑っていてください」
センはその言葉を素直に受ける。
それはルヒィアとセンの信頼から、センはルヒィアがしようとしている事を察し、信じていた。
そしてセンは、何も見ぬままに空気が変わったのを感じる。
「私はこの世界で貴方だけが大切です…」
センの唇に、ルヒィアの唇が合わせられる。
唐突な出来事に、センは動けなかった。
しばらくして、その唇同士は離れていく。
「私の力を全て貴方に授けました。これで貴方は神に支配されない存在でありながら、神の力を無効化できます…これならば貴方は神に勝てます」
ルヒィアは力をさずける時にキスをしたが、その必要はなく、ただ触れ合うだけで良かったが、ルヒィアは一度だけでもキスをしてみたかった。
ルヒィアはそうする事で女神ではなくなるのだった。
「もう目を開けても良いですよ」
センが目を開いた時、目の前のルヒィアは既に亡骸となっていた。
ルヒィアの持つ力は、ルヒィアの命その物であったのだ。
しかしながら、ルヒィアはあえてそれをしなかった。
女神ルヒィアの知る所、神アスティルの力は絶大な物に至る。
それは人には大き過ぎる力だと判断するだろう。アスティルがセンに力を授ける代わりに要求するのはその自我。その自我の代わりにセンの肉体は力を得ることになる。
それではセンが神の力を得た事にはならない。そうなればセンと言う人格は死んでしまう事になる。
女神ルヒィアはセンを喪いたくなかった。その為にセンに神の力の事を教えなかった。
そして、きっとセンならば魔界の主ティルムと契約を果たし、その力を手に入れる事が出来たが、命を引き換えにする契約をさせたくはなく、エルドラを魔界へと行かせた。恐らくもうそこ事について薄々センも感づいているだろうと思っていた。
「ルヒィア、降りてきてほしい」
「言いたい事は分かっています」
「思っている通りだろう…」
「ですが、私はそれを認める訳にはいきません!」
センはきっと神界へと連れて行って欲しい筈、そこで神を殺す。確かに神をも殺せる程の力をセンから感じる。
しかし、同様に神も今のセンを殺す事が出来る。
このままではいけない。
「お願いだ!行かせてくれ」
それはできない。今のセンには勝てる確証がない。
「今のままでは、勝てる確証がありません!殺せないのに神の元に連れて行く事はできません!」
「でも、俺は神を殺すんだ…」
センは力なくそう囁くように言葉を落とした。
神に勝つ方法を知っている。その方法ならば、確実に神に勝つ事ができる。
しかし、センの背負う重荷をもう、ルヒィアには背負えなくなる。
ここでお別れとなる。
「少し…目を瞑っていてください」
センはその言葉を素直に受ける。
それはルヒィアとセンの信頼から、センはルヒィアがしようとしている事を察し、信じていた。
そしてセンは、何も見ぬままに空気が変わったのを感じる。
「私はこの世界で貴方だけが大切です…」
センの唇に、ルヒィアの唇が合わせられる。
唐突な出来事に、センは動けなかった。
しばらくして、その唇同士は離れていく。
「私の力を全て貴方に授けました。これで貴方は神に支配されない存在でありながら、神の力を無効化できます…これならば貴方は神に勝てます」
ルヒィアは力をさずける時にキスをしたが、その必要はなく、ただ触れ合うだけで良かったが、ルヒィアは一度だけでもキスをしてみたかった。
ルヒィアはそうする事で女神ではなくなるのだった。
「もう目を開けても良いですよ」
センが目を開いた時、目の前のルヒィアは既に亡骸となっていた。
ルヒィアの持つ力は、ルヒィアの命その物であったのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる