魔王死天は血に染まる。

伝説殺しの元勇者

伝説の勇者御一行は元々十五人いる。

一人は事故にあってリタイアした。

そんな元勇者の名前はエルドラ。

彼こそが、伝説の元勇者を殺そうと企んでいる元勇者達を結束させた者だった。

そんなエルドラもついに倒されてしまうかもしれないのだった。

＊＊＊

ある朝の事。エルドラの耳にある知らせが届いた。

「エルドラ様。我らの拠点内に侵入した者が、勢いよくこちらへ向かってきています。」

エルドラはもちろん誰が来たかわかった。

単身で敵がたくさんいる拠点に乗り込んでくる奴など、一人しかいなかった。

「センか、奴が来たんだな。リューヴァよ、戦闘の準備だ。」

そう司令を出して、装備を取る。

準備を終えて建物の中から出た頃にはもう、センは拠点内のエルドラがいる建物の庭までたどり着いていた。

「エルドラ。俺はお前を殺してやる。お前が指揮官となった事で飛星達が困ったんだぞ。それにどちら側にも犠牲が生まれた。責任は血で償う。それが運命だ。」

「ガキ。お前そろそろ黙れよボケ。」

エルドラの側近であるリューヴァが、エルドラとセンの間に割って入る。

「エルドラ様に物を言いたいなら俺に勝ってからにしろ。」

リューヴァはそう言った。

もちろんセンは伝説の元勇者御一行の中で一番強い。そう言われていた。事実確認をとるためには彼等で殺し合いでもしないといけないので不可能に近かったが、一番強いと言われているのはセンであった。

センにはリューヴァ等見えていなかった。

センは勢いよくを超えたスピードで走り出すと、リューヴァを押し飛ばし、そのままエルドラの所まで跳び、エルドラの首に短剣を突き付ける。

「なぁ、エルドラ。お前を殺す前に一つ聞きたいことがある。何故お前は仲間を殺そうと思ったんだ。お前が栄光に縋る様なやつとも思えないし、事故にあった時もサバサバしていた。俺は、お前が仲間を殺そうとしている理由がわからない。俺も魔王には会っていない。魔王に怖じ気立ち、魔獣を相手にしていた臆病者と罵られたほどだが、仲間に怨みを覚えた事はないぞ。」

目を逸らしながら、エルドラは口を開く。

「何度やっても勝てないんだな。そこは変わっていないな。俺は考えた結果。みんなを殺さなければならないと思ったんだ。俺にはそれしか手が浮かばなかった。」

センはエルドラの態度から、彼の悲しみを読み取った。