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成長と魔法と
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目が覚めた、枕元に置かれた目覚まし時計の時間を見ると12時半といった所か。部屋を見渡すと、等身大ドールのエリスが椅子に座り、その隣でルイーゼがエリスに話しかけている。
『あの……もし? あの……』
「あー、おはようルイーゼ。その子は人形だから喋らないよ」
『機械人形ではないのですか? あ、起こしてしまって申し訳ありません、トウヤさん』
「それは良いんだけど……」
と、俺はルイーゼが内股でプルプルしてるのに気がついた……。あー、ごめん。それも教えてなかったね。異世界の人を泊める機会なんて考えた事もないから、なんでもかんでも想定外だらけだ。
「あ、ごめん。ルイーゼ、今起きて案内す……いてぇええええええ」
跳ね起きようとしたところ、体中に激痛が走った……マジでなんだこれ……。俺もキツいけどルイーゼはヤバそうな気がする、俺はベットから這いずるように、ルイーゼを案内する。ピシピシと痛む身体ではいつくばりながらルイーゼをトイレに押し込んだ。
トイレはなんとなく使い方が判ったらしいので、俺は胸を激しく撫で下ろしつつ、自分の痛みに関して考える。なんだこりゃ、息するだけでも痛いんだけど……あっちの世界でヤバい病気でも貰ってきたんだろうか……。
俺は息苦しくなり仰向けに床にひっくり返った。あーしばらく動きたくねえ。
『トウヤさん、もしかしてお加減が悪いのですか?』
余裕が戻ってきたらしいルイーゼが俺を気遣ってくれる。
「あー、なんか起きたら体中が痛い。息するのもキツいくらいだ」
『もしかして、トウヤさん。それ成長痛ではないですか?』
ルイーゼが言うには、強敵を倒した後に眠ることで体が急速に成長する痛みがあるそうだ。そういって彼女は俺に手をかざして念じる……、が少しして首をかしげる。
『やっぱり、トウヤさんには私のコモンマジックが通らないみたいです……えっと……すいません』
止める間もなく、ルイーゼが覆いかぶさってきて、俺に口付ける、そして舌が触れたかと思うと身体にぶわっと何かが身体を広がっていき、次第に消えていった。
『お加減はどうですか?』
ん? あ、体が動くし痛くないな。俺は心配させないように、軽く起き上がった、つもりだったのだが、危うく目の前で心配そうに見下ろしているルイーゼにぶつかる勢いだった。
「……なんだこれ、体のコントロールが効かない。今なんか強化する魔法とか使った?」
『今、トウヤさんに掛けたのはコモンマジックのライトヒールです、そこまで劇的な回復力はもちませんが、痛みを消すくらいでしたらこれで十分かと』
「つまり、痛みを消しただけで、……これは俺の力なのか」
『あのエルダーレイスを倒される程の方が、成長は何度もされているのではないのですか?』
「あー、残念ながらこの世界にはモンスターが居ないから、ああいうのを倒すのは初めてなんだよ」
というと目を見開いて驚く。まあ驚くよなあ、俺もあんなのが倒せてびっくりだったし。
『私のコモンマジックを完全に抵抗されてしまうので、かなり高位の魔法使いの方だとばかり思っておりました』
ああ、なんでキスされるんだろうと思ったら、俺が魔法弾くからやむなくだったのか。そんな事意識的にしてるつもりは無いんだけど。
『どんなに魔法の抵抗が高い人でも、体の中までは防げないんです。ですから……あの粘膜接触が有効だとおばあ様が……』
相手に魔法が効かない最悪の状態になったら、襲われるフリをして相手の口腔から精神支配を仕掛けろとか教わったらしい。ばあさん孫に何教えてるんだよ、鬼かよ。……って吸血鬼か。
『私は普段、このコモンマジックくらいしか使えない出来損ないですから』
と、少し寂しげに笑った。
「でも、血を吸えば使えるんだろ? あのグリモアを燃やしたような力が」
『はい、でも私は理性を失ってしまいますし、あの様に精霊魔術を使うとすぐに力を出し尽くしてしまうんです』
あの目力で燃やしたのが彼女の持つ闇の精霊魔法なのか。俺もあんな風にカッコよく敵を倒せたらいいんだけどな。俺は壁を見ながら、水よ!! とか念じてみる。この世界に精霊がいるわけないしね。
ってルイーゼが立っている横の壁に水玉がぶつかって弾けた。昨日の水玉とはサイズが違ったね……水の量が段違いだった。昨日のが500mlのペットボトルだとしたら、今のはペットボトル1ダース分くらいの量があった。
「あー、えっとルイーゼ、ごめん。まさかここで使えると思ってなかったんだ……これ片付けたら着替えてご飯にしよう……本当にごめん」
ずぶぬれになったルイーゼは何が面白いのかくすくすと笑い出した。
『こんな水かけられたの初めてです。戯曲の中の事みたいで楽しいです』
こんな事が楽しいとか、こんな子を閉じ込めて捨てたという彼女の父に怒りが沸いた。しかし、俺魔法使いになっちゃったよ。あのイヤみったらしい経理のおばさんを心で中で報復するストレス解消はもう出来なくなってしまったようだ……。
『あの……もし? あの……』
「あー、おはようルイーゼ。その子は人形だから喋らないよ」
『機械人形ではないのですか? あ、起こしてしまって申し訳ありません、トウヤさん』
「それは良いんだけど……」
と、俺はルイーゼが内股でプルプルしてるのに気がついた……。あー、ごめん。それも教えてなかったね。異世界の人を泊める機会なんて考えた事もないから、なんでもかんでも想定外だらけだ。
「あ、ごめん。ルイーゼ、今起きて案内す……いてぇええええええ」
跳ね起きようとしたところ、体中に激痛が走った……マジでなんだこれ……。俺もキツいけどルイーゼはヤバそうな気がする、俺はベットから這いずるように、ルイーゼを案内する。ピシピシと痛む身体ではいつくばりながらルイーゼをトイレに押し込んだ。
トイレはなんとなく使い方が判ったらしいので、俺は胸を激しく撫で下ろしつつ、自分の痛みに関して考える。なんだこりゃ、息するだけでも痛いんだけど……あっちの世界でヤバい病気でも貰ってきたんだろうか……。
俺は息苦しくなり仰向けに床にひっくり返った。あーしばらく動きたくねえ。
『トウヤさん、もしかしてお加減が悪いのですか?』
余裕が戻ってきたらしいルイーゼが俺を気遣ってくれる。
「あー、なんか起きたら体中が痛い。息するのもキツいくらいだ」
『もしかして、トウヤさん。それ成長痛ではないですか?』
ルイーゼが言うには、強敵を倒した後に眠ることで体が急速に成長する痛みがあるそうだ。そういって彼女は俺に手をかざして念じる……、が少しして首をかしげる。
『やっぱり、トウヤさんには私のコモンマジックが通らないみたいです……えっと……すいません』
止める間もなく、ルイーゼが覆いかぶさってきて、俺に口付ける、そして舌が触れたかと思うと身体にぶわっと何かが身体を広がっていき、次第に消えていった。
『お加減はどうですか?』
ん? あ、体が動くし痛くないな。俺は心配させないように、軽く起き上がった、つもりだったのだが、危うく目の前で心配そうに見下ろしているルイーゼにぶつかる勢いだった。
「……なんだこれ、体のコントロールが効かない。今なんか強化する魔法とか使った?」
『今、トウヤさんに掛けたのはコモンマジックのライトヒールです、そこまで劇的な回復力はもちませんが、痛みを消すくらいでしたらこれで十分かと』
「つまり、痛みを消しただけで、……これは俺の力なのか」
『あのエルダーレイスを倒される程の方が、成長は何度もされているのではないのですか?』
「あー、残念ながらこの世界にはモンスターが居ないから、ああいうのを倒すのは初めてなんだよ」
というと目を見開いて驚く。まあ驚くよなあ、俺もあんなのが倒せてびっくりだったし。
『私のコモンマジックを完全に抵抗されてしまうので、かなり高位の魔法使いの方だとばかり思っておりました』
ああ、なんでキスされるんだろうと思ったら、俺が魔法弾くからやむなくだったのか。そんな事意識的にしてるつもりは無いんだけど。
『どんなに魔法の抵抗が高い人でも、体の中までは防げないんです。ですから……あの粘膜接触が有効だとおばあ様が……』
相手に魔法が効かない最悪の状態になったら、襲われるフリをして相手の口腔から精神支配を仕掛けろとか教わったらしい。ばあさん孫に何教えてるんだよ、鬼かよ。……って吸血鬼か。
『私は普段、このコモンマジックくらいしか使えない出来損ないですから』
と、少し寂しげに笑った。
「でも、血を吸えば使えるんだろ? あのグリモアを燃やしたような力が」
『はい、でも私は理性を失ってしまいますし、あの様に精霊魔術を使うとすぐに力を出し尽くしてしまうんです』
あの目力で燃やしたのが彼女の持つ闇の精霊魔法なのか。俺もあんな風にカッコよく敵を倒せたらいいんだけどな。俺は壁を見ながら、水よ!! とか念じてみる。この世界に精霊がいるわけないしね。
ってルイーゼが立っている横の壁に水玉がぶつかって弾けた。昨日の水玉とはサイズが違ったね……水の量が段違いだった。昨日のが500mlのペットボトルだとしたら、今のはペットボトル1ダース分くらいの量があった。
「あー、えっとルイーゼ、ごめん。まさかここで使えると思ってなかったんだ……これ片付けたら着替えてご飯にしよう……本当にごめん」
ずぶぬれになったルイーゼは何が面白いのかくすくすと笑い出した。
『こんな水かけられたの初めてです。戯曲の中の事みたいで楽しいです』
こんな事が楽しいとか、こんな子を閉じ込めて捨てたという彼女の父に怒りが沸いた。しかし、俺魔法使いになっちゃったよ。あのイヤみったらしい経理のおばさんを心で中で報復するストレス解消はもう出来なくなってしまったようだ……。
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