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18話
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「ここの人はスキルとか魔法が使えないんだよね?」
バルサが目をクリクリさせて言う。
「ああ、こっちにはそもそもスキルという概念自体が無い。魔法なんて言うのは空想の世界の話だな。俺もこっちにいた時は使えなかったし」
「でも異能者って人たち、スキルが使えるっぽいよね?」
そう言うとバルサは面白そうな表情を見せた。
爬虫類っぽいドラゴンの表情を読み取るのはなかなか難しい。
でも長い間一緒にいると分かるようになってくるから不思議だ。
「ああ、たぶんそうだと思う。きっとモンスターを倒した時に出るエーテルのせいだろうな」
エーテルさえあればこっちの世界の人の中にもスキルが使える人がいる、それは恐らく間違いないだろう。
「だったらさ、魔法だって使えるかもしれないよね?」
それを聞いて衝撃を受けた。
この世界の人たちでも魔法が使えるかもしれない、その発想はなかったからだ。
もしそれが事実だったら、とんでもない事になる。
スキルを使えるだけでもすでに大変なことなのに。
さらに魔法となると、こっちの世界の今までの常識とか物理法則がまとめてひっくり返る事になるだろう。
「でも確かに……その可能性はあるな」
スキルと魔法はどちらもエーテルをその源としている点は共通している。
違いはスキルが使用する人の天賦の才能であるのに対し、魔法はある一定の術式によってコントロールされる一種の学問的な方程式である点だ。
もちろんスキル同様、魔法を使うにも基本的な才能は必要で誰でも使えるわけではない。
だがスキルと違って魔法は学び、探究する事でその力を効率的に使うようにすることが出来る。
その点で一種の学問と言っていい。
向こうの世界ではスキルを持たない一般人でも『灯り』や『点火』などの初歩的な呪文程度は多くの人が使っていた。
もしこっちの世界の人々も呪文を使えるとしたら。
少しは怪物たちとの戦いの役に立つだろうか。
それともいたずらに社会的混乱を呼ぶだけだろうか。
いずれにせよ魔法を使うにはエーテルが必要だ。
エーテルを得るためにはモンスターを倒さなきゃいけない訳だから、ニワトリと卵のような話になってしまうけど。
「魔法が使えたら面白いよね?」
バルサは完全に面白がってるな。
でも俺は大きな問題がある事に気が付いた。
「うーん、でも俺もほとんど魔法は使えないしなあ。お前も魔法は全然ダメだろ」
勇者だった俺はスキルこそ豊富に使えたが、魔法はあまり使えない。
正直に言えば向こうで魔法の練習はサボってたからね。
昔から勉強はあまり好きじゃないんだ。
「ボクは魔法なんか使わなくても強いよ?」
バルサは自慢げに言う。
確かに子供ながらドラゴンであるバルサのブレスを始めとするスキルは強力だ。
でも今はそういう事を言ってるんじゃない。
この世界の人も魔法を使えるとしても、それは誰かが教えなきゃいけない。
で、恐らくこの世界で魔法を使える人間は俺一人。
という事は先生は俺しかいない訳だ。
その先生である俺が大した魔法は使えないってことは。
結局魔法はこの世界を変えるほどの大きな力にはなれないってことだ。
ここでは火をつけるならライターがあればいいし、灯りが欲しけりゃ電灯がある。
そんな世界では魔法がなくても困らないもんな。
バルサが目をクリクリさせて言う。
「ああ、こっちにはそもそもスキルという概念自体が無い。魔法なんて言うのは空想の世界の話だな。俺もこっちにいた時は使えなかったし」
「でも異能者って人たち、スキルが使えるっぽいよね?」
そう言うとバルサは面白そうな表情を見せた。
爬虫類っぽいドラゴンの表情を読み取るのはなかなか難しい。
でも長い間一緒にいると分かるようになってくるから不思議だ。
「ああ、たぶんそうだと思う。きっとモンスターを倒した時に出るエーテルのせいだろうな」
エーテルさえあればこっちの世界の人の中にもスキルが使える人がいる、それは恐らく間違いないだろう。
「だったらさ、魔法だって使えるかもしれないよね?」
それを聞いて衝撃を受けた。
この世界の人たちでも魔法が使えるかもしれない、その発想はなかったからだ。
もしそれが事実だったら、とんでもない事になる。
スキルを使えるだけでもすでに大変なことなのに。
さらに魔法となると、こっちの世界の今までの常識とか物理法則がまとめてひっくり返る事になるだろう。
「でも確かに……その可能性はあるな」
スキルと魔法はどちらもエーテルをその源としている点は共通している。
違いはスキルが使用する人の天賦の才能であるのに対し、魔法はある一定の術式によってコントロールされる一種の学問的な方程式である点だ。
もちろんスキル同様、魔法を使うにも基本的な才能は必要で誰でも使えるわけではない。
だがスキルと違って魔法は学び、探究する事でその力を効率的に使うようにすることが出来る。
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少しは怪物たちとの戦いの役に立つだろうか。
それともいたずらに社会的混乱を呼ぶだけだろうか。
いずれにせよ魔法を使うにはエーテルが必要だ。
エーテルを得るためにはモンスターを倒さなきゃいけない訳だから、ニワトリと卵のような話になってしまうけど。
「魔法が使えたら面白いよね?」
バルサは完全に面白がってるな。
でも俺は大きな問題がある事に気が付いた。
「うーん、でも俺もほとんど魔法は使えないしなあ。お前も魔法は全然ダメだろ」
勇者だった俺はスキルこそ豊富に使えたが、魔法はあまり使えない。
正直に言えば向こうで魔法の練習はサボってたからね。
昔から勉強はあまり好きじゃないんだ。
「ボクは魔法なんか使わなくても強いよ?」
バルサは自慢げに言う。
確かに子供ながらドラゴンであるバルサのブレスを始めとするスキルは強力だ。
でも今はそういう事を言ってるんじゃない。
この世界の人も魔法を使えるとしても、それは誰かが教えなきゃいけない。
で、恐らくこの世界で魔法を使える人間は俺一人。
という事は先生は俺しかいない訳だ。
その先生である俺が大した魔法は使えないってことは。
結局魔法はこの世界を変えるほどの大きな力にはなれないってことだ。
ここでは火をつけるならライターがあればいいし、灯りが欲しけりゃ電灯がある。
そんな世界では魔法がなくても困らないもんな。
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