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17話
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――なるほど、そりゃ魔物を倒してエーテルを吸収したお陰でスキルに目覚めたに違いないな。
神崎奈保子の話を聞いて、俺は胸の中で密かに納得した。
召喚された異世界でも生まれつきスキルを持っている人は一部で、多くの一般人はスキルとは無縁だった。
きっとこの世界でもスキルの素質がある人とない人がいるのだろう。
だがスキルを使うにはエーテルが必要なので、素質のある人でも魔物を倒してエーテルを吸収しないとスキルが発現しなかったと考えれば納得できる。
――でもスキルを自分の為じゃなく魔物退治に使う人が多いなんて、やっぱり人間捨てたもんじゃないな。
向こうの世界でもスキルを悪用して犯罪に走る人間はそう多くはなく、ほとんどの人は冒険者や軍人としてスキルを有用に使っていた。
これだけ荒れ果てたこの世界でもそれは変わらないのだ、と考えて少し胸が熱くなった。
場合によっては俺も「異能者」として、その人たちと一緒に戦うのもいいかもしれない。
「――でもね、異能者の人の中には力を笠に着て偉そうにしはる人もいてはるねん。みんながそうやっていう訳やないんやけど、あの人らに睨まれたらこういう所じゃやって行かれへんから気をつけた方がええよ」
急に奈保子が声を潜めて囁くように言った。
向こうの世界でも力に驕って偉そうな奴はいくらでもいた。
結局そういう所はどこでも変わらないらしい。
まあそう言うタイプの対処は慣れている。
「分かった、気をつけるよ」
「ちょっとぐらい嫌な事されても気にしたらアカンよ。後で会う事になるやろうから」
なるほど、高木さん達が会わせたい人がいると言ってたのはこの事か。
「教えてもらったおかげで助かったよ、ありがとう」
「ええって、気にしんといて。また分からん事があったら遠慮せんと聞いてな。じゃあまた後で迎えに来るから、それまでゆっくりしとき」
そう言って奈保子は部屋を出て行った。
「バルサ、もう出て来てもいいぞ」
辺りに人の気配がないことを確認すると、リュックに声を掛けた。
するとリュックがモゾモゾ動き出す。
「さっきの話、おもしろいね?」
小さなドラゴンのバルサが出てきてそんなことを言う。
奈保子の話をバルサも聞いていたらしい。
「お前、この世界の言葉が分かるのか」
「ボクはドラゴンだからね?」
バルサが理由になっていないようなことを言う。
どうやらドラゴンのスキルで言語理解があるから分かるのだ、という事が言いたいらしい。
「なるほど、便利なもんだな」
俺も勇者として向こうの世界では言語理解のスキルが使えた。
でもこっちで使えるかどうかは今のところ分からない。
外国人の可愛い女の子でもいたらすぐわかるんだけど。
神崎奈保子の話を聞いて、俺は胸の中で密かに納得した。
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――でもスキルを自分の為じゃなく魔物退治に使う人が多いなんて、やっぱり人間捨てたもんじゃないな。
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急に奈保子が声を潜めて囁くように言った。
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結局そういう所はどこでも変わらないらしい。
まあそう言うタイプの対処は慣れている。
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「教えてもらったおかげで助かったよ、ありがとう」
「ええって、気にしんといて。また分からん事があったら遠慮せんと聞いてな。じゃあまた後で迎えに来るから、それまでゆっくりしとき」
そう言って奈保子は部屋を出て行った。
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辺りに人の気配がないことを確認すると、リュックに声を掛けた。
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