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6話
しおりを挟む「こりゃすごいな……」
部屋を一歩出てビックリした。
俺の部屋は6階建てマンションの3階にあるんだけど、ここ以外はどこも滅茶苦茶だ。
ドアが開けっぱなしの部屋や、中には扉が壊れて外れてしまっている部屋もある。
廊下の柵も所々壊れて、コンクリートの壁もボロボロだ。
扉が開いている部屋をいくつかのぞいて見たけど、どこも足の踏み場も無いほどの荒れよう。
中には壁にデッカイ穴が開いている部屋まであった。
これじゃ廃墟だ、とても人が住める状態じゃない。
むしろ俺の部屋だけ元のままなのが異常で、訳が分からない。
「……やっぱりか」
エレベーターは予想通り使えなかった。
停電のせいというより、元から壊れているという雰囲気だ。
仕方ないから階段で降りるけど、ここも相当ひどい。
手すりは折れているわ階段も所々崩れているわで、爆弾でも直撃したかのような惨状だ。
でっかい穴から落ちないように気を付けながら、なんとか恐々一階までたどり着いた。
「うわあ、凄いな」
そこにはとても現代日本とは思えない、まるで戦場のように荒廃した街並みが広がっていた。
遠い国で起こった内戦の後の様子を撮った動画で見たような光景。
歩いている人もいない、走っている車もない。
道路の上にがれきが散乱しているから、普通の車は到底走れないっていうのもあるかもしれない。
「さっきのって……やっぱり銃声だよなあ」
部屋の中で音が聞こえた方向を思い出す。
よく分からないけど、あれはやっぱり銃声だったんだと思う。
だとすれば少なくともそこには人がいるはずだ……恐らく、銃を持った。
「行ってみる、か」
他にアテもないし、むやみに歩くよりいいだろう。
正直怖いけど、それしか今のところ他に手掛かりがない。
「クソ、勇者のスキルが使えたらなあ」
俺が呟くのが聞こえたのだろう、リュックの中からバルサが声を出した。
「スキル、使えないの?」
「ああ、残念だけどな。この世界では誰も魔法やスキルを使えないんだ」
俺が転移したファンタジー世界で、スキルや魔法を使う為の源となっていたもの。
それがエーテルと呼ばれる、こっちの世界には存在しない特別な物質だ。
勇者としての俺のチート能力もそのエーテルに依存していた。
向こうの世界は空気中にエーテルが充分にあり、それを利用して魔法やスキルを使っていた。
英雄や勇者とはエーテルをスキルや魔法として効率的に使う事に長けた人のことだ。
これは強力な魔物にしても同じこと。
エーテルを使うことが出来ない人は魔法もスキルも使えず、こっちの世界の一般人となんら変わらない。
銃などの現代兵器に比べて、向こうの世界の魔法やスキルがどれほど役に立つかは分からない。
それでも丸腰で行くのに比べたら、使えるだけでどれほど心強いことか。
だがこの世界にエーテルが存在しない以上、ここでそんな愚痴をこぼしていても仕方ない。
まずはとにかく人を探さないとね。
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